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あたらしい憲法のはなし~六 戰爭の放棄

新憲法ができたばかりの頃、政府は新憲法をどう思っていたのでしょうか。

当時の文部省が、中学校1年生用の社会科の教科書として発行した『あたらしい憲法のはなし』を少しずつ、じっくり読んでいきたいと思います。
太平洋戦争終結後の1947年8月2日に発行されたものの、1950年に副読本に格下げされ、1951年から使われなくなったそうです。

全部で十五章ありますので、一章ずつ青空文庫から転載していきます。
今回は第六章『戰爭の放棄』です。


六 戰爭の放棄

みなさんの中には、こんどの戰爭に、おとうさんやにいさんを送りだされた人も多いでしょう。ごぶじにおかえりになったでしょうか。それともとう/\おかえりにならなかったでしょうか。また、くうしゅうで、家やうちの人を、なくされた人も多いでしょう。いまやっと戰爭はおわりました。二度とこんなおそろしい、かなしい思いをしたくないと思いませんか。こんな戰爭をして、日本の國はどんな利益があったでしょうか。何もありません。たゞ、おそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。戰爭は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。だから、こんどの戰爭をしかけた國には、大きな責任があるといわなければなりません。このまえの世界戰爭のあとでも、もう戰爭は二度とやるまいと、多くの國々ではいろ/\考えましたが、またこんな大戰爭をおこしてしまったのは、まことに残念なことではありませんか。

 そこでこんどの憲法では、日本の國が、けっして二度と戰爭をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戰爭をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戰力の放棄といいます。「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの國よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。
 もう一つは、よその國と爭いごとがおこったとき、けっして戰爭によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。おだやかにそうだんをして、きまりをつけようというのです。なぜならば、いくさをしかけることは、けっきょく、じぶんの國をほろぼすようなはめになるからです。また、戰爭とまでゆかずとも、國の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしないことにきめたのです。これを戰爭の放棄というのです。そうしてよその國となかよくして、世界中の國が、よい友だちになってくれるようにすれば、日本の國は、さかえてゆけるのです。
 みなさん、あのおそろしい戰爭が、二度とおこらないように、また戰爭を二度とおこさないようにいたしましょう。


あなたは、これを読んで何を感じましたか?
そして、何を思うでしょうか。

戦力放棄は国連任せなのか?

自民党が出しているマンガでよく分かる~憲法のおはなし~自衛隊明記ってなぁに?では、現行憲法で戦力放棄をうたった理由を「国連が世界の平和を維持してあげるから(p.7)」と説明しています。
私も日米安保が不要だと言うつもりはありませんが、これではあまりに人任せではありませんか。これが独立国の態度と言えるでしょうか。そして、上記『あたらしい憲法のはなし』にはそんなことは一言も書いてありません。
戰爭を二度とおこさない」ため、「よその國となかよくして、世界中の國が、よい友だちになってくれるように」あらゆる努力を日本がしなければならないのです。

他国は、日本を必要としているでしょうか。友好関係を結べているでしょうか。(日本人の中には移民を嫌い、外国人が入ってくることを嫌う人がいるようですが、外国人技能実習生への日本人の態度は各国でも拡散されており、いまや出稼ぎ先としての日本は、中国よりも人気が低いそうですね。それは、いざという時に日本の味方をしてくれる国を増やしているのでしょうか。全世界を相手にしても勝てるだけの軍事費をつぎ込むつもりなら、2%ではあまりにも心もとないことでしょう)
食料自給率やエネルギー自給率の低い日本は、無くてはならないものを他国に依存しています。この状態のままに憲法9条を変更するのが賢い選択とは思えません。

また、戦争の火種になりそうなものに先手を打って消火活動を行っているでしょうか。
ムール・ガイさんが以前書いていらっしゃいましたが、領土内の無人島が放置されていないでしょうか。北方領土や尖閣諸島だけでなく、沖ノ鳥島のような小さな島も守らなければなりません。

日本は子を産みたい国になっているでしょうか。戦争もないのに、どんどん人口が減少して国力が弱っていくということにはならないでしょうか。

軍事費を増やしてアメリカを喜ばせるための武器を買うよりも前にやることはたくさんあると思います。

自民党草案では

なぜかここだけが注目されている憲法9条ですが、自民党草案でも平和主義と呼ばれる第九条の冒頭部分はほぼ変わりません。ただし、以下が追記されています。

2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

さらに(国防軍)が規定されたあと、以下も新設されています。

第九条の三 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。

既にご案内したマンガでよく分かる~憲法のおはなし~自衛隊明記ってなぁに?では、優しそうなおばあさんが「私たちの生活は特に変わらないよ(p.25)」とお茶を飲みながら言っています。

ならば協力する「国民」とは誰でしょうか。主権と独立を守るために求められる「協力」とはなんでしょうか。

憲法改正を望む人、望まない人、両方いると思います。こんなことになるとは思わなかったとはならないように、選挙に行って投票しましょう。

世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。