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『FIFA』とリアルサッカーの比較と考察――今後の両競技の発展に向けて Part2

こんにちは。

今回は、新たに創設された世界トップクラスのシェアを誇る人気サッカーゲーム『FIFA』シリーズの国内大会である『FIFAコミュニティシリーズ』のオープニングイベントで行われた試合を、戦術的な観点から分析するというテーマの記事を執筆させていただきました。


本稿はいつものような宣伝だけでなく、誠に勝手ながらPart2と称し、実際に筆者が『FIFA23』をプレーした動画に大まかなコメントを付けて元記事の主旨を補足するという記事になっております。普段はレアル・マドリーやラ・リーガのクラブを中心にリアルのサッカーの分析記事を執筆しておりますが、今回のような一風変わった記事もこの機会に。ぜひ上に貼った元記事を読んだ上で、本稿を最後まで読んでいただけると嬉しいです。もちろん、Youtubeの動画の方も長くないのでご視聴いただければと思っています。


元記事の概要

まず元記事はタイトルの通り「ゲームのサッカーとリアルのサッカーの違いは何か」という着眼点から入ります。その後の論理展開は以下の通りです。

「ゲームには自チームの"プレイヤー"(すなわち"意思決定者"=生身の人間)が1人しかいない」
→「ほとんどのピッチ上の選手は同時には直接操作できない」
→「その操作はAI(人工知能)に委ねられる」
→「AIの特徴を理解することが必要」
→「AIの守備はゾーンディフェンスでありその完成度は高いとは言えない」
→「"ライン間"にボールを簡単に刺されやすい」
→「ミドルサードでの攻防が省略される傾向がある」
→「5バックによるブロック守備が主流となる」
→「対する攻撃側の解決策はカウンターやセットプレー、そして"スキルムーブ"を駆使したドリブルとなっている」
→「リアルのサッカーでも守備時5バックが増加しているのは興味深いが、この理由は攻撃側の"ポジショナルプレー"への対抗である」
→「ゲームのサッカーはAIのゾーンディフェンスが整備されていないことが理由であり、共通のトレンドと言えどこの部分が実は異なっている」
→「"スキルムーブ"の技術は重要だが、一方でゲームの"ポジショナルプレー"には大きな向上の余地がありそうだ」
→「これらはリアルのサッカーの性質を元にした考察だが、同時にゲームのサッカーで得た知見がリアルに逆輸入される可能性も今後はあるのではないか」

より説得力を持たせたいのは終盤の、「"スキルムーブ"の技術は重要だが、一方でゲームの"ポジショナルプレー"には大きな向上の余地がありそうだ」という箇所になります。本文では"スペース"と"選択肢"という単語をキーワードとして用いていましたが、これらを支配して試合を優位に進めたいというわけです。なお、"スペース"と"選択肢"の話を含む"ポジショナルプレー"について掘り下げている記事を合わせて紹介しておきます。


参考動画に関する説明

筆者はただの一般『FIFA』プレイヤー(それもPS4版)であり、大会に出場していたプロの方々のような確固たる実績はもちろんないのですが、世界中のプレイヤーとオンラインで対戦しランキングされる「シーズン」というコンテンツを年間を通してプレーしています。現在は最高位のディビジョン1(1〜10中)、約50位(約60万人中)付近を推移しているため、それなりに参考になる試合ができそうだと考えた次第であります。

この「シーズン」というコンテンツは実在するチームを使用します。筆者はレアル・マドリーを用いており、配置などはリアルのレアル・マドリーを可能な限り再現することを試みています。

攻撃時の配置はウィングがハーフレーンに立ち、SBが大外レーンで幅と深みを取り、両CBと中盤が後方で組み立てる[2-3-5]です。実際は左インサイドハーフのトニ・クロースが左CBのダビド・アラバの脇に落ちるようなポジションに設定しているので左右非対称で、右ウィングのフェデリコ・バルベルデは裏抜けを狙う左ウィングのヴィニシウス・ジュニオールと比べて中盤に落ちてくる指示なども与えています。

使用するのはレアル・マドリー

守備持は5バックが主流と述べておきながらヴィニシウスを前残りさせてバルベルデが中盤ラインに入る[4-4-2]を採用していますが、これはリアルの再現という目的と個人の嗜好によるものです。

主旨により「相手ゴール前"スキルムーブ"禁止縛り」でプレーしました。よってプレーの方向やテンポ、運ぶドリブルなどを含むボールの動かし方のみによっていかにゴール前の相手を動かすか、というところに最大限注力しています。"トリガーラン"は苦手なのでほぼ使っていませんが練習したいところです。ちなみにポゼッション率は2試合とも約70%を記録しています。

以下は2試合分の動画とざっくりとしたコメント・解説になります。Youtubeの各動画の概要欄にも記載しており、かつ該当シーンにもタップで飛べるようになっているので、概要欄を開きながらぜひYoutube上でご覧ください。


Youtube参考動画と解説

参考動画①はパリ・サンジェルマン戦です。守備持の配置は[5-2-3]で、リオネル・メッシら強力な前線を前残りさせてロングカウンターを狙うというありきたりかつ強力な相手となっています。基本的にディビジョン1所属の相手とマッチングするため簡単な試合になることはあまりありません。ですが前線が戻って守備をしないので中盤ラインの手前、およびその脇でボールを動かすのは非常に容易です。多用するサイドチェンジはクロースやアンカーのオーレリアン・チュアメニを経由することが多いため、似たような戦術にしてもアンカーの位置に噛み合う相手がいる[5-2-1-2]の守備の方が個人的にはやりにくいです。

1:44(ゲーム内時間8分43秒)〜先制ゴールのシーン。右ハーフスペースの相手中盤脇にポジションを取ったバルベルデから"ライン間"のカリム・ベンゼマへ。この際ゴール方向へランニングするヴィニシウスに相手DF(セルヒオ・ラモス)がつられて動くのは『FIFA』のAI守備あるあるとなっています。相手はこのタイミングでの操作切り替えが難しいため、ヴィニシウスがランニングすることによって空けたスペースに迷わずドリブルし、そのままシュートを打ちました。

その後は相手が非常に高いラインを敷きかつオフサイドトラップを頻繁に仕掛けてきたため、ダイレクトでの背後へのパスや意表を突いた直線的なドリブルを狙っていましたがタイミングが合わず。ただこの間もクローズドにボールを保持し続けています。カウンターは恐ろしいですが、保持し続けて機会自体を削ぐことができればその心配も無用です。

5:24(ゲーム内時間33分36秒)〜2ゴール目のシーン。背後を取りに行くことによって最終ラインを押し下げ、バックパスでラインのズレを引き起こして再び背後を狙う、というのが有効打になったシーンです。スルーパスを受けたヴィニシウスがワンテンポ我慢し、もう1つ奥のスペースに侵入してからクロスを上げてスライディングを外したのも、ライン際の駆け引きの選択肢として持っておくと良いと思います。

ハーフタイムを待たず戦意喪失した相手が接続を切ったため、自動的に3-0というスコアでの没収試合となり勝利しました。


参考動画②はチェルシー戦です。守備持の配置は[4-3-3]、見方によっては[4-1-4-1]。ですが、4バックで守りたいとしてもこの配置はあまりオススメはしません。よって筆者は敢えてヴィニシウスを前残りにする[4-4-2]を採用している(リアルでもヴィニシウスはその傾向がある)わけですが、その理由は後述します

2:05(ゲーム内時間11分50秒)〜先制ゴールのシーン。この試合でもアンカーのチュアメニは相手の中盤と噛み合わない立ち位置をとることができるため、その中盤ライン手前でボールを動かし、ハーフスペースの"ライン間"への縦パスを刺し続けることで相手アンカーのエンゴロ・カンテを動かしつつ最終ライン背後のスペースへの侵入機会を伺います。素早いネガティブトランジションでベンゼマがボールを奪い返したところから、チュアメニ、クロースを経由して再びボールはベンゼマへ。バルベルデとのダイレクトのワンツーで完全に崩し切り、ゴールネットを揺らすことに成功しました。この時点までに、相手に与えたボール保持の機会は1度のみでした。

3:15(ゲーム内時間19分51秒)〜約50秒間に渡ってボールを保持し、最終的にバルベルデの決定機に繋がったシーン。ボールと相手を動かし続けることで、焦れて危険なスペースを空けてしまいながらボールを奪いに来てくれることが多いです。そのスペースを我慢強く狙います。

4:16(ゲーム内時間27分31秒)〜失点シーン。何もないところから失点しました。酷すぎる守備対応なので参考にしないでください。時折操作切り替え直後に減速したりスティックを倒していない方向にスプリントしてしまうことがあるのですがなぜでしょうか。どなたか教えてください。"マニュアルキーパー"発動の絶好の機会でしたが逃しました。

5:33(ゲーム内時間35分04秒)〜大外レーンでサイドチェンジを受けた左SBフェルラン・メンディがクロースとのワンツーで抜け出すシンプルかつ効果的な崩しのシーン。抉ってからマイナス、はリアル同様かなりの確率でゴールを奪うことができますが相手GKの好セーブにあいます。

前半終了時点でのスタッツ

7:13。前半終了時点でのスタッツはポゼッション率が73%対27%、予想ゴール数が1.5対0.1という数値。0.1にも関わらず1失点しており、失点シーンの杜撰さが浮き彫りとなっています。負けるわけにはいきません。

8:23(ゲーム内時間52分27秒)〜痛恨の逆転ゴールシーン。CKからよくわからないまま失点しています。元記事でも述べた通り、攻守においてセットプレーの重要性が再確認できるシーンです。現在のレアル・マドリーは意外にも高身長の選手が少ないです。

8:51(ゲーム内時間54分33秒)〜ルカ・モドリッチのネガティブトランジションにおける素早いボール奪取を挟みベンゼマの決定機に繋がったシーン。勝ち越された焦りからか、縛りを無視し思い切り"スキルムーブ"の"ルーレット"を使用しているので参考外となります。

10:32(ゲーム内時間67分20秒)〜同点ゴールのシーン。ややカウンターのような攻撃でしたが、右SBダニエル・カルバハルから中央のバルベルデへとボールが渡った後、相手操作選手がチアゴ・シウバ→カリドゥ・クリバリと切り替わることを予測したスペースへのドリブルのコース取りがゴールの決め手だったと思います。"スキルムーブ"は使用していません。

11:57(ゲーム内時間73分17秒)〜決勝ゴールのシーン。GKティボ・クルトワから始まった攻撃で、2試合を通して最もポジショナルな攻撃だったと言えるかもしれません。『FIFA』の[4-3-3]守備におけるAIは、両インサイドハーフにプレスバックさせることが非常に難しく、かつ[4-4-2]と比べてウィング(あるいはSH)の守備貢献度が低いという明確な特徴があります。よって"ライン間"にボールを入れ5レーンによる崩しを仕掛けることにより、最終的に逆サイドの大外選手が必ず空くようにできています。これは完全にリアルのサッカーと同じ現象と言えるでしょう。クロースに食いついた相手ウィングの背後のスペースを使って左の大外から前進し、そこから逆サイドのハーフスペースへ。再び左サイドでフリーになったメンディがゴールを沈め、スコアを3-2とひっくり返すことに成功しています。

このゴールにより相手が接続を切り、3-0での勝利となりました。


おわりに

もちろん『FIFA』はリアルのサッカー同様無数の戦術があり、絶対に勝てるというその正解はありません。ただ、このPart2の記事はある程度リアルのサッカーに精通し、かつゲームのAIを理解することでゲームのサッカーを優位に進められるという1つの例としてご理解いただければ幸いです。また、実際にはeスポーツのプロで活躍されている方々の多くがYoutubeやSNSを通じて様々なスキルの解説動画などを発信しているかと思われます。ぜひ『FIFA』プレイヤーの方々は本稿と合わせてそちらもチェックしていただき、一緒にこの業界を盛り上げていきましょう。


最後までお読みいただきありがとうございました!

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