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『島守の塔(2022)』を観ました。

だったら、沖縄県警警察部長の荒井退造(村上淳)と知事の島田叡(萩原聖人)のエピソードを中心に、バディ(相棒)ものとしてお話を組み立てたらよかったのではなかろうか。
架空のキャラクターである比嘉凛(吉岡里帆)では「日本のために犠牲になると教え込まれたこと」を描き、その妹の比嘉由紀(池間夏海)では「沖縄戦の壮絶さ」を描いているようでした。

しかし、なんだか内容がダイジェストを繋いだようで、ドラマが組み立てられている感じがしない。こうも内容が薄いのに、なんで作品が長い(130分)のかが不思議だった。何を一番に伝えたくて今作は作られたのだろうか。

気になって他の作品で知事の島田叡(しまだあきら)を検索してみたら、TBS制作のドラマ&ドキュメンタリーを見つけて、この作品がよくできていた。これをそのまま映画にしたらよかったのに、ドラマもしっかり組み立てられている。
知事の島田叡のメッセージは現代にこそ伝えたいと思う。どんな状況下であれ「自分が生き残ることを一番に考えてくれ」というのは普遍的なメッセージだと思う。

映画が進めば進むほど「知事の島田叡はどういう生い立ちだったのだろう」とか気になってしまった。そういうエピソードがTBS制作の方にはちゃんと描かれていた。どうしてこの人を描くには大事なエピソードが入ってないんだろう。
台湾まで食料を調達に行くというエピソードもセリフで出てくるだけだったけど、これは予算がなくてこうなったのだろうか。観たい映像がないまま話が進んでいくが、沖縄戦を知らない人には何がなんだかわからなくなってはいないかが少し心配だ。
(以下のような状況であったようではありますが)

2019年9月25日に島田叡の出身地である兵庫県の神戸新聞社や荒井退造の出身地である栃木県の下野新聞社、さらに沖縄県の琉球新報社や沖縄タイムス社などによって製作委員会が結成され、映画製作の発表が行われた
(中略)
2020年3月25日に沖縄県うるま市の伊計島でクランクイン、4月下旬に兵庫県神戸市や三田市などの兵庫ロケでクランクアップの予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、撮影休止。2021年11月に撮影を再開、12月にクランクアップした。

https://ja.wikipedia.org/wiki/島守の塔

それに、沖縄県警警察部長の荒井退造の追い詰められた南部の洞窟での行動は「これこそお話のクライマックスに持ってくるべきだろう」とか思った。詳しくはTBS制作の『生きろ』を見てもらったらわかると思います。
なんだか頭の中で、この映画に欲しかった映像が埋まっていくような気がしました。

せっかく島田叡さんと荒井退造さんのことを映画にする機会だったのに、なんでこうなってしまったのか残念。
吉岡里帆さんの存在は本当に素晴らしかった。萩原聖人さんと村上淳さんの二人の空気感に息を呑みました。どちらも相手のことを尊敬して尊重している関係というのは、かけがえのない瞬間だと思います。

載せようか載せまいか迷いましたが、載せてしまいました(あくまで個人の感想ですよ)。
それはほとんどTBS制作の『生きろ』を紹介したかったからかもしれません。
本当に楽しみにしてたのですが、私が観る前に期待しすぎたのかもしれません。

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