組織変革~組織健全度指数と業績の相関関係

いくら良い戦略があっても最終的にそれが実行されなければ戦略も絵に描いた餅である。戦略そのものは戦略コンサルティングファームにお手伝いいただければそれなりの精度の戦略ができあがるかもしれない。ただし、やはり課題は実行である。

私は過去外資系企業の企画部門で働いたことがあるが、日本とグローバルでは変革するときのスピード感が全然違う。海外ではスピーディに変革している一方で、日本だけスロースタートで一向にスピードアップの兆しが見えないのがよくある傾向である。

それがなぜなのかは残念ながらわからない。もしかすると日本人の保守的な国民性が出てしまっているのか、あるいは教育が暗記教育中心で創造力が他国よりも劣るのか、あるいはリーダーシップが弱いのか、実際の原因は特定できない。

日本の変革が遅い原因調査は今後したいと思うが、今回は組織の健全度と業績の相関関係を見たい。組織を変革するといっても、ただ漠然と変革させるのはナンセンスである。科学的にどのようなことを改善すれば企業の業績につながるのかを明らかにしたい

マッキンゼーが考案した「Organizational Health Index」は聞いたことがあるだろうか。組織の健全度を図る指標のことであるが、具体的には以下の9つの要素と37つの管理項目を指標にして組織の健全度を算出される(1)。

そして、マッキンゼーのレポートによると(2)、この指数は、マッキンゼーが2003年から2011年間の間に世界で800以上の調査をした結果、健全指数が高い企業は、そうでもない企業より3倍の業績を上げていることがわかった。

またそのレポートには、これら37項目のうち、企業のarchetype(原型)によって、よりFocusすべき項目が変わってくるということである。

企業のarchetype(原型)とは以下4タイプある。
Leadership driven :
高い期待値を設定し、その達成に向けて組織をサポートする文化

Execution edge :
規律、着実な実行、そして継続的な改善がパフォーマンスの基盤

Market focus :
マーケットトレンドを形成し、強力で革新的なブランドにより企業を常に一歩先に行くような組織

Knowledge core :
人材と知識のプールをもっとも重要な資産として認識し、効率的に開発し配置するような組織

また各archetype(原型)によって特に重視する項目が以下である。
これらの項目を特に満たしている企業はそうでない企業より5倍高いパフォーマンスを出しているようだ

Leadership driven :
キャリア機会の提供、インスピレーショナル・リーダー、オープンで信頼する、金銭的インセンティブ、リスク管理

Execution edge :
知識の共有、社員の参加、創造的・起業的、ボトムアップイノベーション、才能ある人物のスキル開発

Market focus :
顧客に焦点を当てる、競合に対する洞察、事業パートナー、財務管理、政府およびコミュニティ関係

Knowledge core :
報酬と報償、才能ある人物の採用、金銭的インセンティブ、キャリア機会の提供、個人の業績

この理論の実践方法としては、
①37項目を図るためのアンケートを従業員に答えてもらう。
②自社がどのarchetypeなのかを当てはめる。具体的には、Leadership drivenはベンチャー、Execution edgeは継続的に無駄を省き、継続的に品質と生産性を高めていくような企業、Market focusは革新的なプロダクトを作りマーケットそのものを作り出していくような企業、Knowledge coreはコンサルティングファームや弁護士などのプロフェッショナルファームである。
③各項目の改善施策を検討する。自社のarchetypeに応じて注力する項目を把握し、改善施策を検討する。一方でそれ以外の項目も低いのは低パフォーマンスにつながるため、一定の継続的な改善は必要である。

さて一方で、これら各archetype(原型)によって特に重視する項目を見渡してみると、キャリア機会の提供、金銭的インセンティブ、知識の共有、社員の参加、創造的・起業的、ボトムアップイノベーション、スキル開発、報酬と報償、採用、個人の業績など、戦略や組織設計などよりも、個々人のキャリアやインセンティブ、コミュニケーションがより共通していることが個人的には特に興味深いポイントである

どのような企業であってもやはり個々の従業員、チームワークといったところを重視することが何よりも普遍的な施策なのかもしれない。

(1)「マッキンゼーが教える科学的リーダーシップ:リーダーのもっとも重要な道具とは何か」
(2)A.D Smet, B Schaninger and M Smith (2014), “The hidden value of organizational health – and how to capture it”, Article McKinsey Quarterly

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