【ラクスル】3分で読む企業分析 〜継続成長を支える定石とは〜
リクルートと同じビジネスモデル?ラクスルの事業戦略の定石とは? 印刷業を軸に成長を続けるラクスルの決算やビジネスモデルについてまとめた。
【売上】前年比50%成長。新規事業ハコベルが底上げ
売上は前年同期比で50%成長し、四半期売上53億円。新規事業であるハコベルや、TVCM事業の売上構成比が増している。印刷業に留まらない伸び代を示しているといえる。
主要事業である印刷業ラクスルの主要KPIは以下のようになっており、全てのKPIにおいて、1年前に比べて高い成長をしている。
顧客数 ✖️ 購入回数 ✖️ 単価
但し、これらはあくまでも年間を通じた数値である。ここ半年の売上高の成長は鈍化しているため、直近のKPIの伸びには疑問がある。
【ラクスルの定石①】レガシー産業のマッチング効率化
ラクスルは、印刷業で安定したキャッシュフローを実現し、新規事業であるTVCM、物流でも売上を確立しつつある。これら三つのビジネスモデルには共通した部分がある。
それは、「テクノロジー活用によるレガシー産業のマッチング効率化」である。
印刷業では、印刷をしたいユーザーと、印刷機械が遊休している業者をマッチングして印刷のコストカットを図っている。
配送業でも、荷物を運びたいユーザーと、稼働していない配送業者をマッチングして輸送費のコストカットを図っている。
TVCMでは、中小企業に小口でCM枠を用意し、制作業者・媒体社とのマッチングをしている。
インターネット以前は、これらのマッチングは人づてで行われていたため、仲介業者が複数入ったり、サービス提供者の稼働が余ったりしていた。これらの領域でラクスルはテクノロジーでプラットフォーム化してマッチングを効率化、コストカットや稼働率の向上を実現しているのだ。
小売や人材紹介など、toCの領域では早期からインターネットによる効率化が行われていたが、toBの領域では(対象が企業のため)インターネットの活用が遅れており、そこにラクスルは入り込んでいるのだ。
これらの定石を活用できる複数領域にラクスルは着実に足を伸ばしている。「印刷業」で成功したノウハウを他業界で活用できるという強みが生かしているといえる。この拡大手法は、「本」から拡大したAmazonを想起させるものがある。
【ラクスルの定石②】BtoBのリクルート
また、ラクスルは、リボン型モデルのBtoBバージョン(もしくはレガシー産業バージョン)であるといえるのではないか。
リクルートのビジネスモデルとして、リボンモデルがよく知られている。リクルートと異なり、ラクスルが集めているサービス提供者は、小規模で稼働率の低い業者が中心である。とはいえ、インターネットを利用してマッチングの効率化を図っているという点では共通している。
厳密には異なるが、ラクスルはBtoBやレガシー産業におけるリクルートと同じポジションにいるといえる。ラクスルがユーザー基盤を大きく拡大するにつれ、サービス提供者がラクスルからの仕事の受注に頼らざるを得ないという状況も起こりうる。
<リボンモデルとは>消費者であるユーザーとサービス提供者であるクライアントをリクルートのプラットフォーム上に集め、手数料や広告掲載料をもらうビジネスモデル。ホットペッパー、じゃらん、SUUMOなどのサービスが実際にこの形態。
【主要印刷業の成長性①】日本の印刷業の未来とは
【主要印刷業の成長性②】競合シェアを奪うには
これまで印刷業以外への拡大可能性について述べてきたが、主要事業である印刷業における戦略は無論重要である。長くなったため、市場と競合の分析についてはまた改めてまとめることにする。重要な点だけ簡潔に述べると、以下のようになる。
市場:他国や他業種でのネット化比率との比較からどのように予測できるか。
競合:大日本印刷などオフライン印刷大手とネットプリントなどオンライン印刷に対しどのような戦略を取れるか。
【まとめ】
・売上50%増で四半期で50億円達成
・ハコベルなど新規事業の売上が拡大
・レガシー産業のマッチング効率化という定石で多様な業界へ進出可能
・リボンモデルでtoBのリクルートになり得る可能性
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