廃校活用で、修理して使い続けるのが「かっこいい」文化の発信拠点づくり
サーキュラーエコノミーの基本は、ものを大切に使い続けること。
ひと昔前まで、家で家電が壊れた時は、まずは自分で直そうとしてみるのは、各家庭で見られる当たり前の光景でしたが、機械の中身が精密になっていくにつれ、自分で直すのはお手上げ、結局、新しいものを買い換えざるを得ないことが増えました。
世界中で、電気機器・電子機器の廃棄物「E-waste(イーウエイスト)」は増加し続けています。
温室効果ガスの排出に直結する化石燃料の影に隠れがちですが、イーウエイストに多く含まれる金・銀・銅・白金などのレアメタルは、資源の枯渇が危惧され、高値で取引されることからも、紛争の火種にもなっています。
そのような背景もあり、そもそも壊れたものをゴミにしない、修理して使い続ける「リペア」の市場が成長。
技術を持った地域住民がほかの地域住民の持ち込んだものを無償で修理する「リペアカフェ」が世界35か国の2,000箇所以上に広まるなど、新たな文化も生み出し始めています。
1.増え続ける「イーウェイスト」
国連の調査によると、イーウエイストの発生量は、2019年は全世界で5,360万tで、5年間で21%増加。
今後さらに増加し続け、2030年には7,400万t、2014年からの16年間で倍増すると予測されています。
品目の割合は、小さな家電が37%でトップ。
国連発表、電子ごみ「e-waste」発生量が過去最多 もっとも多いのはアジア地域
2019年のe-waste(バッテリーまたはプラグを搭載した廃棄物)発生量の内訳で、もっとも多かった地域がアジアで約2,490万t、次にアメリカ大陸で1,310万t、欧州で1,200万tと続き、アフリカとオセアニアがそれぞれ290万tと70万tだった。
2019年に発生したe-wasteのうち、回収とリサイクルの対象となったのはわずか17.4%だ。
e-wasteには金や銀、銅、白金などが含まれており、控えめに見積もっても570億ドルに相当する貴金属が回収可能。
これはほとんどの国の国内総生産を上回る額だ。
しかし、処理や再利用目的で回収されることなく、廃棄・焼却処分されている。(記事本文より引用)
総量で見ると、アジアが最も多いのですが、1人あたりの量で見ると、ヨーロッパ諸国が上位にランクイン。
ヨーロッパでも関心の高いテーマに。
2.リペア・リユース市場が着実に成長
全世界で、廃棄物処理・資源有効利用分野は、2050年には総額1,400兆円規模の市場に成長と予測。
建築リフォームと合わせて、リペアも着実に成長が予測されています。
出典:平成29年度3月環境産業市場規模検討会報告書(環境省)
修理だけでなく、中古で使い続けるリユース市場も成長を続けており、2025年には国内でも3兆円を上回る規模となる予測。
リペア市場とリユース市場には、リユース品として出品するために修理する、リユース市場の成長で、リペア市場も成長する相乗効果があります。
内訳を見ると、ネットの割合が5割を超えています。
メルカリをはじめ、フリマアプリが急成長をしているので、納得の数字です。
品目別には、携帯・スマホをはじめ、イーウエイストを多く含む製品でも市場規模が拡大していることに注目。
本国内のリユース市場の成長は、サーキュラーエコノミーというよりは、長く続いた不況感、その影響を受けた若者の節約志向に後押しされたものと言えそうですが、今後、世界的にサーキュラーエコノミーの流れが強まるなかで、文脈をこちらに置き換えて、引き続き成長を続けて行くでしょう。
3.修理して使い続けることが「かっこいい」
サーキュラーエコノミーの先進国、オランダでは、持ち込んだものを無料で直してくれる「リペアカフェ」が誕生。
オランダ国内だけで470箇所以上、世界35カ国以上2,000箇所以上に広がっています。
リペアカフェは、地域の公共スペースや空き店舗などを活用して、「捨てるの? とんでもない!」をモットーに、物の修理のために地域住民らを結ぶリアルなコミュニティである。
「作る・使う・捨てる」という常識に疑問をもったオランダ在住の環境ジャーナリスト、マーティン・ポストマ氏が、製品を廃棄しない文化をつくるために始めた。
2009年にアムステルダムで世界で初めてのリペアカフェをオープンしてから、現在はオランダ国内では476軒、世界でみれば35の国と地域で2000以上のコミュニティにまで広がっている。
リペアカフェは月一回開催され、電化製品、衣類、家具、おもちゃ、自転車など修理したい製品を持ち込むと、直す知識や技術、道具を持った地域住民が無償で修理を施してくれる。
それだけではなく、修理に関する勉強会なども行う。地域のなかでリペアカフェを始めたいと思った人たちが自発的に始める仕組みも特徴だ。
リペアカフェで壊れた物をどうやって直せるか考えることで、メンタリティが変わる。
さらに、修理を起点に住民たちの間にコミュニケーションが生まれ、「共に使い続ける」コミュニティが形成される。
加えて、これまで社会であまり注目されてこなかった、修理のノウハウを持つ高齢者や技術をもつ人たちが貢献できる場が生まれる。
(記事本文より引用)
機械に強い近所のおじさん、お兄さんが、近所のヒーローになる、その感じでしょうか。
リペアカフェは、日本でも普及中。
4.高校跡地でリペア文化の発信拠点をつくろう
映像に登場するリペアカフェの舞台は、廃校になった中学校校舎を再生した「世田谷ものづくり学校」の中にある”Fablab Setagaya”。
リペアカフェを行う上でも、機材・素材などの環境は必須。常設の拠点をつくれるのが理想で、一過性のイベントで終わらせないためには、拠点の整備は不可欠でしょう。
拠点を整備する上で、重要なのは、機材もさることながら、やはり教えてくれる人。
大学や企業の研究所があれば、集めやすいものですが、都農町の場合は工夫が必要です。
子どもの創造の場としては、「VIVISTOP」も世界6箇所に広がるネットワークをつくっているほか、前出の「世田谷ものづくり学校」の”Fablab Setagaya”の「Fablab」は市民開かれた市民工房のネットワークで、世界415箇所(2021年11月現在)に広がっています。
築131年の蔵で、最先端のものづくり。「ファブラボ鎌倉」
地域に根ざした活動を行いながら、世界規模のネットワークに参加し、世界文脈でものづくりに参加できる環境をつくり、実際に場を運営する人を呼び込み、まちに文化を浸透させていきたいです。
いま僕らが基本計画を策定中の、都農高校跡地。その一角で、9月13日にゼロカーボンタウン宣言をした町として、「サーキュラーエコノミー」がなんなのか、腹落ちする拠点をつくりたいと企画中。
先週、京都から日吉ヶ丘高校の2年生78名が修学旅行で都農町に来た際、都農高校跡地の活用×ゼロカーボンでワークショップを実施。
高校生たちも「サーキュラーエコノミー」って言われるとなんのことか良くわからずでしたが、「修理」と聞けばすぐにイメージがわいていました。
流行り言葉に流されることなく、その本質にある「もったいない精神」は、都農町のような小さな地方の町では昔から当たり前だったこと。
これからの拠点をつくるには、これまでの強みを活かしていくのが理想であり、引き続き高校生や地元の小中学生と一緒に、「リペア」拠点の企画を進めていきます。
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