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ゼロカーボンまちづくり政策は、2050年の最大当事者、小・中学生がつくる!

10月20日、都農町の小中学生が町に「ゼロカーボンタウン」実現のための政策提案を行う「選抜チーム」の議論がスタートしました。

都農中学校でのキャリア教育「つの未来学」と、町内の小学校3校での気候変動についての授業をきっかけに、都農町は2021年9月13日、「ゼロカーボンタウン宣言」を表明。

この宣言を受けて、具体的なアクションプランとなる政策を町に提案する各校の代表者2-3名からなる「選抜チーム」が結成、12月末までに1回2時間の議論を計6回開催します。

小・中学生の議論と並行して、提案の受け皿となる議会が「子ども議会」的な「おままごと」「お勉強」ではなく、本格的に議論できる場をつくれるよう、条例を含めて新しい町のしくみづくりも進めていく必要があります。

人口減少・少子高齢化の進む町では課題山積ですが、若者たちの声を取り入れる仕組みは、町の存続のため、個人的には最優先だと考えています。

特にゼロカーボンを目指す2050年に、日本の平均年齢である40代半ばになるのがいまの小・中学生たち。いまから、質量ともに優れた情報・データをもとに、フラットな議論をして的確な判断をしていけることが理想です。

1.世界で行動する若者たち

気候変動対策では、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが有名。
彼女が活動を始めたのは15歳、高校1年生に進学したばかりの時でした。

スウェーデンの国会議員総選挙を前に、国会議事堂の外で「気候変動のための学校のストライキ」を開始。

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・大人が私の未来を台無しにしようとしているので私はこれをしている
・あたかも家が燃えているかのように振舞ってほしい—実際そうだからだ
・科学に基づいて団結する

彼女の呼びかけは、世界中の若者の共感を集め、世界中で若者によるデモやストライキ、気候変動への取り組みを求める機運が高まりました。

「バリ島でレジ袋を撤廃させた」

メラティ・ワイゼン、イザベル・ワイゼン(インドネシア・バリ島)

2013年、当時12歳と10歳だったワイゼン姉妹は、「Bye Bye Plastic Bags(バイバイ、レジ袋)」というNPOを立ち上げ。
プラスチックごみだらけになっているバリ島の美しさを取り戻すため、プラスチックごみの回収、エコバックの配布、州政府に行動を求める署名活動など、草の根運動を展開。

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2年後の2015年には州知事が、2018年までにレジ袋を全廃することを公約し、実際に実行されました。

若者が草の根運動通じ、州政府を動かしたことは、インドネシア国内はもちろん、世界から注目を集めました。

「海洋プラスチックごみを回収するプロジェクトで44億円を調達、実証実験を成功させて挑み続ける若き起業家」

ボイヤン・スラット(オランダ・アムステルダム)

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18歳で海洋プラスチックごみの回収を行うNPO「オーシャン・クリーンアップ」を創業。
TEDトークをきっかけに、44億円もの資金を世界中から集め、2018年、太平洋で、全長600メートルの装置でごみを集める実証実験に成功。

現在は、河川のプラスチックごみを回収するプロジェクトを立ち上げ、海洋プラスチックごみの発生源に近い、世界中の1,000の河川で、ごみが海に流れ出る前に回収することを目指し、回収をスタート。

このほかにも、デモや気候変動、環境問題の解決のための技術開発で多くの若者が活躍し、注目を集めています。

2.29年前のスピーチ

若者から、気候変動への取り組みを求める運動は今に始まったことではありません。
今から約29年前、1992年にすでに若者による世界に対する訴えはなされていました。

リオデジャネイロで開催された地球サミットに、自分たちで旅費を集めて、参加した当時12歳の日系カナダ人のセヴァン・カリス=スズキさんによるスピーチは、「世界を5分間沈黙させた」スピーチとして、当時注目を集めました。

「国連環境開発会議」(地球サミット)におけるセヴァーン・スズキさん(カナダ)によるスピーチ(1992年6月、ブラジル、リオデジャネイロ)

・学校で、さらには幼稚園でも、あなたがた大人は私たちにどのように行動すべきかを教えます。喧嘩をしないこと、他人を尊重すること、散らかしたものを片付けること、生き物を傷つけないこと、物惜しみせず分かち合うことなどと。ならば、あなたがたはどうして、『するな』と私たちに言ったことをしているのでしょう?」
・言葉だけでなく、実際に行動を起こしてくださるようお願いします

カリス=スズキさんのスピーチの内容は、25年後のグレタさんのスピーチの内容と似ていると言われることもあるようです。

3.気候変動の取り組みと若者の政治参加

SDGsへの取り組みが盛んな国ほど、若者の投票率が高いという相関が見られるようです。

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45歳以下の国会議員の割合を比較すると、こちらも相関があると言えそう。

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さらに国のリーダーの平均年齢を重ねると、

・リーダーが若い
・国会議員の平均年齢が若い

ほど、SGDs、すなわち、未来への取り組みに熱心である、と言えそうです。

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ゼロカーボン戦略の一環で取り組む、サーキュラーエコノミーに関する取り組みは、新たしい経済をつくる活動であり、今後の経済成長には不可欠

この波に乗れるかは、国や地域が生き残れるかどうかを左右する死活問題のはずです。

その時流をいち早くつかみ、世界の標準をつくりつつある国ほど、若者が活躍している。若者が活躍できる環境があるからこそ、未来への危機感を持って、時流をつかみ、つくることができているのではないでしょうか。

4.若者の意見を取り入れるしくみ

では、若者が活躍できる環境は、どうすればつくれるのか。

グレタさんの出身であり、SDGsへの取り組みランク1位のスウェーデンでは、自治体ごとに「若者協議会」が設置され、年5回の大会議と、会合を毎週開催しています。

政党青年部、全国生徒会、文化団体、環境団体など、その他の若者組織と合わせ、国として若者の声を政策に取り入れる仕組みが制度として整えられています。

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若者に影響を及ぼす政策を実施する際は、若者の声を聞くことを義務づけた「若者政策法」が国の法律としても定められ、若者の声を聞くことを、単なるイベントで終わらせない仕組みが築かれています。

日本では「子ども議会」などの名称で、小中学生や高校生が、首長や議会に対して質問・提案をする場を設けることは広く行われていますが、「模擬議会」としての実施で、実施の趣旨・目的は、議会制民主主義や地方自治の仕組みを学ぶ「勉強」として行われることがほとんどのようです。

冒頭の「選抜チーム」による政策提案の場として、18歳以下の若者による議会、「U-18議会」の新設を町に提案しています。

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人口1万人を切り、ますます少子高齢化の進行する都農町において、未来の当事者である若者の意見を取り入れるしくみをつくることは、未来思考で政策を実行していくには不可欠のもの。

そのしくみをつくれなければ、若者の流出に歯止めはかけられず、町の存続はますます危機的なものになるはずです。

「選抜チーム」の子どもたちの議論は真剣そのもの。議論の内容も大人顔負けの議論をしています。

子どもの提案を真摯に受け止め、政策として実行する責任が大人たちにはある。そのしくみをつくれるかが、自治体としての生き残りを左右するのではないでしょうか。

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