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3000mの菊花賞、1mの攻防

コントレイルが無敗で三冠を達成した。道中ハミを噛んでいたし、そもそもこんな重たい京都芝3000mに適性などないわけで、それでも勝ち切ったあたりは実力。力が抜け過ぎていた。

しかしディープインパクトのジョッキーが武さんだったように、ジョッキーの技術が伴っていなければ三冠など不可能。菊花賞だってただコントレイルが勝ったわけではない。

よくパトロールビデオを見ると、かなりハイレベルな攻防が行われているんだよ。刺激的で面白い。

新宿租界(shinjuku-sokai.com)にはすでに記載したが、普段の租界のレベルを知ってもらうためにも、こちらのほうにも載せさせてもらう。

租界は勝った負けた、強い弱い、当たった外れたなんていう話では終わらせない。レースを細かく見直す。

黒矢印→コントレイル
赤矢印→ヴェルトライゼンデ
黄矢印→アリストテレス(4枚目のみサトノフラッグ)
白矢印→ガロアクリーク(2枚目以降)
緑矢印→サトノインプレッサ
青矢印→ディープボンド

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一周目3コーナー。まだスタートして4、500mというところだろう。コントレイルはいいスタートを切ってすでに7番手くらいにいるのだが、見てほしいのはその後ろ。すでにコントレイルの後ろに緑サトノインプレッサと赤ヴェルトライゼンデがいる。所属騎手としてコントレイルを間近で見てきた瑠星、そして三冠阻止一番手の池添。この2人はコントレイルに勝つために、すでにマークしていた。

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1周目直線。黒棒の先にコントレイルがいるのだが、そのコントレイルの前にいるのは青ディープボンド。そう、同馬主。この時点で福永のポジショニングは完璧だった。たぶんレース前の作戦会議で、ディープボンドがある程度前で、その後ろにコントレイルという役割は決まっていたのだろう。

ここで注目したいのは、その黒コントレイルを1周目3コーナーから、ずっと外でブロックしている黄アリストテレス・ルメールだ。

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上が2周目向正面入り口。下が2周目3コーナー手前。下の写真をよく見てほしい。白ガロアクリークの通ったラインだ。この下に灰色の線を引かせてもらったが、この線の左側と右側で色が違うのが分かるだろうか。このガロアクリーク川田が通ったラインが、『県境』となっている。

改めて上の写真を見てほしい。川田はどこを通っているか。ずっと、色の変わっている境目の線の真上を走っているんだ。内枠スタートなのに自分からこのラインを取りに行って、馬場がぎりぎり持っているところを、ロスなく走らせ続けている。完璧な進路取りだ。

そして下の写真、見にくいかもしれないが、ガロアクリークの後ろに黒矢印コントレイルがいるのだ。福永と川田がいかに馬場を考えているかがよく分かる例だよ。事実、このラインより内に9頭いるが、この9頭は全て掲示板外。

そしてこの地点でコントレイルの真後ろには緑サトノインプレッサがいる。たぶんヴェルトライゼンデ池添はサトノインプレッサのポジション、つまりコントレイルの真後ろが欲しかったんだと思うよ。一番ロスなく運べる『絶好位』だからね。それをサトノが一切譲ってくれなかった。

GIで完璧な騎乗をやってくる池添を絶好位に入れなかったサトノインプレッサが、実はコントレイルのアシスト役になっている。ここが面白い。『チーム・ノースヒルズ』だけでなく、『チーム・矢作』の勝利とも言えるね。

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勝負を分けたもう一つのポイント。2周目4コーナー手前だ。コントレイルの目の前、緑バビットと白ガロアクリークの間に赤い丸で印をつけたスペースが生まれている。普通だったらここに入る。

しかし福永は入らなかった。ガロアクリーク川田はずっと馬場のいいところ、悪いところを分けるラインの真上を走っているから、『ガロアクリークの内の悪い部分を走る』。福永はそれを避けたかったんだと思う。

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4コーナーだ。福永はガロアクリークの外に切り返した。黄アリストテレスがかなりしっかり締めているのだが、これで弾き飛ばせるコントレイルのパワーも凄い。前を走っている同馬主のディープボンドがガロアクリークをブロックしているから、この時点で進路が開くことはほぼ確定した。

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直線に入ったところだ。この時点で黒コントレイルはまだ追われていない。

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追い出されたのは4コーナー、内回りとの合流点付近だった。福永は直線に入っても追い出さず、一旦アリストテレスを更に外に弾き、馬場のいいところに完全に出てから追い出した。

下の写真を見てほしい。馬場の色が変わっているラインはこの黒い線。この線より左が悪い。右はまだマシ。コントレイルがこの線の沿いではなく、少し右側を走っているのが分かる。

コントレイルは裏情報にも書いたが、以前から右回りで内にササる。つまりラインの上を走ると、内にササって馬場の悪いところに入ってしまう可能性があるわけ。隣の黄アリストテレスルメールは外側にピタリとくっついているから、仮にコントレイルがこのラインの上を走って、更に内にササってしまった場合、馬場の悪い部分を走ることになってしまうんだ。

福永はその可能性を考えて、たぶん余分に外に進路を取ったんだと思う。実際ゴール前ではもっと内に寄っているから、最初からこのラインの上を走っていた場合、馬場の悪い部分を走らせられてしまい、アリストテレスに先着を許したかもしれない。

福永のこの直線の進路取りは最初から予定していたのか、一瞬で判断したのかは分からないが、間違いなくプラスに働いた進路取りだった。あまり語られない部分ではあるものの、上手い。実際ゴール前、コントレイルは馬場の悪いライン割っている。

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コントレイルの耳が少し動いていたように、たぶんまだ余裕があったんだと思う。以前から先頭に立つと遊ぶ馬だ。直線がもっと長かろうがコントレイルは勝っていたと思う。

ただ、そこまでに至る過程をこうやって見ていくと、いかに福永の策が練り込まれているかがよく分かるんだ。よく叩かれているが、このレベルの騎乗ができるジョッキーが下手なわけがないし、詰まったシーンなどもほとんど5年以上前のもの。情報のアップデートができていない。

そういう人間相手に金を奪い合うのが競馬なわけで、どれだけ進路など細かい部分を見れるか、競馬を面白く見ることかできるかで成績は変わってくると思う。

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