見出し画像

『個展』というもの

さっきまで自分が身を置いていた世界とはまるで違う、遮断された空間。
そこに漂う静謐な空気と程よい圧、緊張を味わいながら、作品と一対一で対峙する。
間に介入できるものは何もない。
瞬きも忘れるほどの時間が流れる。

そんな個展を目指したいといつも思っている。

個展は、作家としての力量の全てが試される場だ。
会場、装飾、配置、照明、音楽
告知、映像、写真、発信媒体。物珍しいことをやれば良いということでもないし、ターゲット層や目的によってそのやり方は様々である。

正解のないプレッシャーを抱える中、その時出した答えで作り上げていく。

過去の個展は思い返すと未熟さも目立つけれど、その時々の精一杯でやり切ってきた。
黒歴史なんてものは一つもないし、全てが大切な積み重ねとなって今がある。

進むべき道は日々の積み重ねが自然と決めてしまうのだ、というような文を、とある小説で読んだ。
何を食べるか、どんな言葉を使うか、どの道で帰るか、そんな些細な事が案外重要であるように思う。

私は、全てを個展に賭けているところがある。
自分の目指す個展というものを作り上げるために、種となるものを撒き続け、そのひとつひとつをまた回収していく。

そうして積み重なった「今」の上に立ち、その時の自分ができることの全てを空間ごと、空気ごと作る。

大層なことのようで結局は手段に過ぎない。
個展という手段を介して私は次に進むことができる。そして、あなたに何かが届くといいなと思う。

そんなことを思いながら、今日も種を撒く。

#個展 #作品 #エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?