見つけたらラッキー!?3.11で、さらに貴重になった原木しいたけ
決して主役ではないけど、そこにいないとなんか寂しい存在、みなさんは「しいたけ」のことについてはどれだけ考えたことがあるでしょうか?
今日であの日から11年。あの日がしいたけに与えた影響について今日は紹介します。
しいたけの作り方
まず、基本的な部分からお話をすると、しいたけの栽培方法には大きく2つあります。
ひとつは木の枝(幹)をそのまま利用する原木栽培、もうひとつは、木をチップ状に砕いたものをビンに詰めた菌床栽培です。
伝統的に原木栽培がきのこ栽培の基本型でしたが、原木栽培は大変な労力がかかるため、現在では菌床栽培が主流になってきています。
原木栽培が減少してきた理由にはこのほかに、日本の里山が手入れされにくくなり、原木栽培に適する若い雑木林が減ってきていることも関係しています。
戦後の拡大造林でかつての雑木林は、カブトムシの産地から花粉の産地と変貌して私たちの鼻をむずむずさせています。
たとえ、雑木林が残っていたとしても、きのこの原木に使えるようにするためには20年くらいのサイクルで木を切らなくては行けないが、林業従事者の減少など、山が放置されるときのこの原木として使うことのできるサイズを超えてしまう。
なので、しいたけを作るためには山をしっかりと面倒を見てやらなくてはいけないのです。
恵まれた里山があったフクシマ
実は、3.11前までは福島県が隠れたしいたけの原木産地となっていました。
2010年の時点で、遠くは北海道から四国や九州まで、全国30都道府県で福島県産の原木が利用されてきていました。(下図)
ところが、あの巨大地震による大津波で発生した原発事故によって、福島県の農林産物が出荷できなくなってしまいました。
それによって、福島県産の原木はほとんど流通しなくなっています。(2014年)
下図は、東日本各都道県での原木の調達量を円グラフにしたものです。
詳しく見てみると、東北地方のなかでは、とくに岩手県や福島県、関東地方のなかでは、とくに群馬県、栃木県、茨城県の3県が一大産地となっていることが読み取れます。
ところが、震災後は福島県をはじめとして太平洋側に近い関東地方では大打撃を受け、自県産の原木が使えなくなってしまった。野球選手からバットを取り上げてしまうような一大事で、しいたけ農家にとっては死活問題です。
なんとか他県からの原木確保によって仕事を続けられた人は幸いです。それでも、この被災を機に農家を辞めてしまった方も大勢いらっしゃったのではないかと推察します。
農家を追い込む原木高騰
ただでさえ少な少なくなっていた原木によるしいたけ栽培、そこに追い打ちをかけていたのが原発事故による原木不足でした。
原木の価格は2010年以降の10年間で約1.5倍へと値上がりしていて、農家の経営に悪影響を与えています。
そんな状況によって、2020年の段階で全国の生しいたけ生産量に占める原木しいたけの割合は8%にとどまっています。
見つけたあなたはラッキーかも
もし、これを読んでくれたあなたが、しいたけが並ぶ棚で「原木」の文字を見かけたら、いったん目を取り出してきれいに洗浄して、見間違いでないかを再度確認してもなお「原木」の文字がそこに鎮座していれば、ぜひガッツポーズをしてカゴへとシュートしてあげてください。
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