見出し画像

読書感想文〜川田将雅騎手「頂への挑戦〜負け続けた末につかんだ『勝者』の思考法〜

今回も読書感想文

 今回もやってまいりました、読書感想文のコーナー。今回はこの作品です。

前2作と角度を変えてみた。川田騎手光っちゃった・・・。

JRAで騎手大賞(最多勝、最高勝率、最高賞金)に輝いた川田将雅騎手の著書「頂への挑戦」です。
 元々、両親が競馬が好きな影響で子どもの頃から僕自身が競馬を見る機会は非常に多く、競馬の騎手の本は色々読んできたのですが、それらとは全く毛色の違う(馬のじゃないよ?)本になっております。
 ちょっと競馬を知ってる人なら川田将雅騎手には「怖い」とか「愛想がない」って印象が非常に強いと思いますが、僕も同じ九州人かつ非常に世代が近いので分かります、アレは真面目な九州人にありがちな現象なんです。そもそも、親なり学校なりがめちゃくちゃ厳しいので、バランスがただでさえ厳しい寄りになりがちな30代昭和、現に僕自身も関東で仕事して九州に戻ってきた時は「厳しすぎる」と言われていた時期がありました。自分が自分、他人は他人でバランスが取れてくると言われなくなってくるんですが、僕が言われなくなったのは32〜33くらいの時でした。川田騎手もきっと似たところがあると思うんです、僕は仕事以外は超がつくほど不真面目なので生活面でもしっかりしている川田騎手は似てると言われたら苦言だと思いますが、そこは九州のよしみで許してください。

読書感想文

 よーし、今作は550文字でここに入ったぞ、日向さんのは1500、伊達さんは750、川田騎手は550文字くらい、成長が見られますね。1時間番組で前置きが45分あるプログラムからは脱しました
 正直なところ、川田将雅騎手の幼少期を想像することは難しいです。帰ったら家に馬がいるって環境の人はそう多くはないでしょう?うちには猫が居ましたが、それとは全く異なる環境な上に、代々競馬に携わる一家。
 自分も医療系の人が親類に多いとは言え、先祖代々なんて言えるほどではありません。さらに自分が九州人で長崎生まれなのでよく分かる佐賀の昭和の方の気質。大変なことも多かったろうなと思いますし、実際書かれている内容は僕の想定してたキツさの数十倍は上を行ってました。
 僕の場合は両親よりも教師や学校に向けて抱いていた恐怖心や憎悪が負けん気や負けず嫌いを作ってくれましたが、喧嘩などでは負けたまんまで帰ってくるなという文言はウチも一言一句一緒でしたね。あの時代に生まれた九州男児はそう叩き込まれる家も少なくないんだなと感じました。
 あの頃があるから今、世の中で起こる理不尽にも耐えれているのは間違いない事実です。理不尽は大人の世界では当たり前のように起こるので、今の時代の学生はそのギャップに苦労するんじゃないの?という想いは正直あります、社会はそこまで優しいだけではありませんからね。
 競馬騎手の場合は競馬学校というこれまた特殊な学校に入るわけです、卒業生は全員同じ仕事に就くわけですし、そんな学校はそうそうあるものではありません。学校の厳しさで言えば僕の母校もどっこいどっこいまではいかなくとも勝負になると思いますが、同期に対してのライバル心や想いの強さは絶対に敵いませんね、僕らは卒業を満期出所と表現するいわば囚人仲間の感覚ですから笑。切磋琢磨とは真反対の立ち位置にいると思いますので、その感覚は羨ましくもあります。
 川田騎手は「考える」ことが全ての源になっている方です、僕も考えるのは好きです。これは学業の成績での優秀とは関係ない、極めて大切な部分だと思います。評価して分析して行動する。その行動の結果から反省し、また分析して考察して行動を変えてみる。これを繰り返していくことが大人になったら大切なことだと思います。地頭では僕よりはるかに賢い医者も居ますが、数学と物理ができても人を救えるわけではありません。僕が新人や学生によく言うことで、「賢いバカ」になるなと言います。頭が良いから理論っぽくまとめることは出来れどもそれに行動が伴わない。知識だけを循環して使うから考えていないのです。こういう人は応用力があまりいらないジャンルが向くと思いますね。

僕の大学の教授が実習での心得を書いてくれたものです。大人になって分かる、これ大事。

 川田騎手も松田厩舎という今は定年で解散になった厩舎の調教師さんから「あるオーナーはお前を指名してるから乗せるけど、それ以外の馬はお前は壊すから乗せん。」と言われたことがあるそうです、そこで川田騎手はまた考えました。当時の主戦騎手の乗り方と自分の乗り方を見比べて考えてまた考えて少しずつ変わっていきます。その結果、いつぞやからは完全に主戦騎手の座を射止めるのです。
 これも自分で考えて考えて引き出しを作ってストックしておくことで自分の血となり肉となり騎手という特殊専門職として確固たる地位と存在に至るわけです。こういう人って純粋にカッコいい。元から外見もかっこいいけど。
 ただ、こういうストイックな人というのは往々にして自分以外や周囲にもその血気や熱量を求めたりという節がどうしてもあります、だってストイックではなくても専門職ってプライドは持ってるオレも多少あるし。自分だけで収めておければいいのですが、周りに時として温度差が強すぎて対応出来ない事や拒絶されることもあります。ここのバランスについては元々器用では無い九州男児、川田騎手も行きすぎていた節はあるのかなと感じます。特に25年前や30年前は昭和がめちゃくちゃ色濃かったですから、両親や親類に不器用な人が多かった名残かもしれませんが。
 そういう努力が実っての2022年のリーディングジョッキー、最多勝、最高勝率、最多獲得賞金の3つも制覇しての騎手大賞、2023年にはリバティアイランドとのコンビで牝馬3冠レース制覇を川田騎手は達成するわけです。努力は必ずしも実るわけでは無いが、成功した人で努力していない人はいないという言葉がとてもしっくりきます。川田騎手は最初から勝ち組エリートを歩んできたわけではありません。不器用に周囲に敵を作ったり、強烈な叱咤激励であったり、不器用ながらも川田将雅を応援する両親や関係者、切磋琢磨した同期などの支えもあって日本一の騎手の称号を手にしたわけです。
 大企業に社長の息子に生まれボンボンに育ってそのまま世襲とは一味も二味も違う世襲だけど、反エリート、反骨精神の塊で負けながらも考えていって最終的に勝利する。極めて人間らしくて面白い本だったと思います。所々には荒々しい棘がまだ残っているように感じられる場面もあり、自信を付けて確固たるものを自負している部分もありと川田将雅という人間がよく分かる一冊になっていると思いました。
 今度小倉に来る時は川田祭りに期待しよう⇦

終わりに

 川田騎手と同じ佐賀にルーツのあるし鮫島騎手の親類の方とは面識があって、コロナ前は僕が競馬好きなこともあって年に数回お会いする時は競馬の話をしていたのですが、川田将雅騎手のことは佐賀の関係者も誇りに思っているそうで、九州にとっても佐賀にとっても川田騎手の貢献は大きいなと感じます。
 正直なところ、ハープスターやトゥザグローリーなどに乗っていた2013年前後の川田騎手は画面越しに見ていても好感の持てる感じはなく、むしろ「九州人が全部こんなんだと思われるだろうが。イキるほど上手くもないだろ。」という馬券外したこと以上に個人的な印象も良くなかったです。あの頃のままの川田将雅騎手の印象のままならきっとこの本も買ってなかった。リアアメリアくらいまでは。目の前でアルバートドッグで勝った小倉大賞典もメジロマイヤーで勝った時も観ていたし、下手な騎手ではないのは分かっていたけど、どうにもだった。
 ただ、ネットで川田騎手のサイトが出来ていろんなコラムを読んで、メディアに出てくる機会が増えて、感極まる場面を何度か観て。徐々に「この人はヤバい人なんじゃなくて九州人あるあるの不器用なだけじゃないか?」と感じ始めてからは一気に雪解けしていくような感じでした。
川田騎手は僕を知らないのに、勝手に僕が嫌いになってから好きになるという1人メンヘラが炸裂しているだけなのですが、今となってはすっかりお気に入りの騎手の1人です。
 伊達さんの時も少し書きましたが、メディアのインタビューでいわば全方位に対応している様だけを観ていて出来てくる人間像と、その人がしっかりと書いた自叙伝では内容も印象も大きく変わります。だからこそ、こういう本は面白い。自分の考えているその人に近いのか、はたまた大きく離れているのか。
 勝手にその人にラベリングしてはいけないと言いつつも、メディアに出ている人間を我々が判断するのはその瞬間しかないというジレンマはありますし、そこでこういう人なのかなという推測をすることは僕は悪いことではないと思います。それが答え合わせの時に違ったら自分が修正できるのであれば。その答え合わせになるのがこのような本だと思いますし、川田将雅騎手に関しては僕の中では西が東に南が北に変わるようなくらい印象と評価が変化した人間です。
 きっと、他にもこういう印象と実際が違う人というのは数多くいるでしょう、有名な人に限らずです、自分の初期の印象と評価をうまく変化させることが出来るか。コレが自叙伝で学べるスキルの一つだとも自分は思う次第です。
 次は何を書こうかな、また次回作で!

この記事が参加している募集

読書感想文

サポートいただける方は是非お願いします‼️ それに見合う記事を書けるように努力します‼️