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裏社長大河の悪魔版就職斡旋社 第25話 対外国資本編9


はじめに

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 この小説には暴力的表現、性的な表現が含まれています。
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裏社長大河の悪魔版就職斡旋社25話

 「Echo!」
 オレたちが大きな掛け声と共にレンガをシャッターに投げつけ、自動ドアのガラスごと粉砕する。
 バッシャーーーーン!!
 ガラスの割れる音が店内にこだまし、オレと中山がエミレートファイナンス入り口のドアとシャッターを破壊して侵入した。幸いな事に行員も店内の客も関係者しかいねぇようだ、好都合、好都合。
 無用の殺しをするつもりはさらさらない、だから、オレの炸裂させている音の大半は爆竹や空気砲の類だ、中山の方は自由にやってるがな、無意味に殺すなよとしか伝えていない。意味をなす時には必要な手段だからな、策を摘む必要まではない。オレたちに注意が一斉に向いた隙に梅野と畠山がそれぞれ1人ずつ締め上げて情報を吐かせる。その陽動には充分になっただろう。オレの視界の端に情報を持ってそうなやつを締める畠山の姿も映った。
 しばらく音で陽動しオレたちは身の安全を確保するために撤退を決断する。
 「Echo!」
 残念ながら煙幕玉なんて粋なものは準備できないので、純粋な小麦粉をふんだんに詰めたお手製の白幕玉を使い、そこにちょっとしたアクセントを加えてやりゃ充分に目眩し兼耳塞ぎの道具となる。オレと中山は速やかにその現場から去った。警察からも逃げなきゃいけないからな。あとは、梅野と畠山の実力を信じる。

 「Echo!」
 大河さんたちのお声が聞こえた。オレと畠山さんは持っていたパンフレットで防塵しつつ動きを始めた。やはり、大河さんはすごい。陽動には充分過ぎる視覚情報と聴覚情報。これで気付かなかったら人間ではないってくらいド派手な入場だった。
 結果的に大河さんたちの陽動は成功した。オレと畠山さんで何としても情報を取らなきゃいけない、短時間でスマートに。畠山さんは器用じゃないから、相手を絞め落としてしまうかもしれない、オレが取らないとと思っていたけれど、畠山さんのパワーチョークスリーパーはあっという間に情報がもたらされたんだ。聖奈さんはこのビルじゃなくて他の建物に行っている、場所は不明だと。そしたら、畠山さんはサクッとそいつを夢の世界へ誘ったんだ。そして、横にいたのはマハルだったと思うんだけど、後方からあっという間に締め上げて場所を聞き出したんだ。それは空港近くの飲食街の今はテナントが入ってなさそうなビルの名前だった。
 「コイツ、落とすわ。」
 畠山さんの声を、不肖、この梅野は数年ぶりに聞いた気がするけれど、畠山さんはマハルを担いでスムーズに大河さんたちを追いかけて消えていった。勝手に何とかしなきゃと思っていたんだけど、オレが何も出来ない人間だって改めて痛感した。中山さんと大河さんは追手から逃げるために合流予定の場所へ先に向かって車を用意している。オレたちもそこに向かわなきゃいけない。
 畠山さんはマハルを担いでるのにオレより早く移動していった。オレは必死に追いかけて何とかエミレートファイナンスのビル周りの喧騒と野次馬のいない空間まで移動した。とにかくおんぶに抱っこされている感覚だった。
 待ち合わせに使ったのは少し離れた山の国定公園の駐車場。ここには監視カメラがないってオレが確認していたんだ、そこに着いた時には車が到着してオレを待っていたような感じだった。
 「梅野も帰ってきやがった!オレたちの部下は信頼に足る連中だ、よくみんな来たな!」
 無事に戻ったことを喜んでくれる大河さんの横に威風堂々の中山さんと獲物を仕留めた熊のような満足感に浸る畠山さんがいた。そして、スヤスヤと眠るようなマハルも。何故かパンイチになっているが細かい事は気にしないでおこう。
 車に全員が乗った時に大河さんがオレを見ながら言うんだ。
 「梅野、人には得手不得手がある。現場が得意なやつも居ればトータルマネジメントが得意なやつもいる。こういう場面で活躍するやつもいれば、もっと大局観が求められる場面で活かされるヤツもいる、今度は中山や畠山をフォローしてやってくれ。」
 中山さんと畠山さんは声は出さないもののサムアップサインで応えてくれた。有事の時に役に立てた感覚がない自分をすぐにフォローしてくれる大河さんには頭が上がらない。

 車でオレと中山が先に待っていると何故か畠山がマハルを背負ってやってきた。男を1人担いでこれだけ進んでも息すら乱れない畠山のスタミナは尊敬に値する。梅野はまだ来ていないが、アイツは直接的な戦闘よりも司令塔役が似合うタイプだ、舞台が違う場所とはいえアイツは賢い、きっと無事に戻るに決まっている。
 「マハルじゃないか。畠山が締めたのか?」
 「そこにいたので。」
 「そこにいた事がエラーとはついてないな。」
 オレは何か隠し道具があると面倒なので服を脱がせた。しばらくすると外気の影響もあるのかマハルの意識が戻ってきた。
 「おい、ネイキッドになってるじゃないか!」
 マハルが目を覚ましたようで大声で色々叫び始めた。
 「お、目を覚ましたな、マハル。お前にはこれからたくさん話を聞かないといけないんだ。是非とも協力してくれ。」
 「大河さん、話はするから服は着たいです。」
 「ダメダメ、武器持ってたら困るからな。」
 「武器なんてないよ、ポイズンなんて持ってないから!」
 「畠山。」
 「御意。」
 マハルには畠山のチョークスリーパーで再度夢の中へ行ってもらう事にした、殺しはしない。お話があるからな。そうこうしていると植木の中からがさっと音がした後に梅野が姿を現した。まったくオレたちの部下は信頼がおける。梅野は参謀型だ、1番苦手な現場でよく耐えて戻ってきたと、オレは心から思う。そして、エミレートファイナンスをぶっ潰すには梅野の力が絶対に必要なんだ。
 中山や畠山にはない良さがコイツにはある。コイツがキーマンなんだ。だからこそ不得手な分野を乗り越えて帰ってきてくれたことが本当に嬉しかった。聖奈も奪還してオレたちはエミレートファイナンスをぶっ潰す。

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