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台所の隅で18年後に思いを馳せる

こんにちは。

甘いものの食べ過ぎはよくない。と、思いつつ、ついついストックちゃう年末。今年も、冬太りへ、まっしぐらです。みなさん、大掃除の準備は万端ですか?

さて、最近、だんだんと知恵がついてきた娘が、わたしのお菓子ストックを漁ることを趣味にし始めた。前々から、食料がストックされている棚に興味津々で、隙あらば覗こうとしていたけれど、少し前までは中身を見たら『自分には関係ないもの』として、そこまで深追いはしてこなかった。

けれど、この頃は『チョコレートは苦い』からとか、『おせんべいは辛い』からとかいう言い訳が通用しなくなってきた。大人がこっそり台所の隅で、おやつタイムを楽しんでいることに気づき始めたらしい。

「これ、ドーナツでしょ?」と、目を輝かせながら、買っておいたミニドーナツの袋を引きずってきた。「そうだよ、ドーナツ知ってるの?」と話を逸らすきっかけを探ろうとしてみる。「まるくて、穴があいてて、ちょっとだけ甘いやつ」。ほう、めっちゃ詳しく知ってるやん。話を逸らす間もなく「食べてみたい」と申す。しっかり、甘いものへの嗅覚も成長している様子。

ちょうど、おやつの時間だし、そろそろデビューさせてみるか。テーブルにつき、はじめてのドーナツを手に取り、満面の笑み。いつもなら「いただきます」と言う前にかぶりつくのに、今回はしげしげとドーナツを眺め、穴をのぞいて観察している。

そして、はじめのひとくち。「ふふふ」と微笑み、「ちょっと甘い」という感想。憧れの食べものをほおばり、『食』とは、こうあるべきだという手本のように、幸せな時間を表現する。

娘に気づかれまいと、台所の隅でこっそりチョコレートを食べながら、甘さに癒されつつ少しの罪悪感を覚えるのとは次元がちがう。もう、こっそり食べるのはやめて、堂々と「おいしいね」と言い合いながら食べようと決めた。虫歯を心配するなら、歯みがきをがんばればいい。

でも、ときどき台所の隅であける缶ビールだけは、自分へのご褒美として取っておきたい。大人には、この『プシュッ』という音に労いを感じるときだってあるのだ。決して、やさぐれる感じではなく、いい一日だったなあと、ありふれた日常に乾杯するのだ。この音を娘と共有できるのは、あと18年後。そんなに先の自分も、娘のことも想像できないけれど、どうか「おいしいね」と言い合いながら、一緒にお酒が飲める関係であってほしいと願う。

そして、今日も夕食の準備をしながら、お先に『プシュッ』とやっていたところ、娘がリビングから「なんの音?」と駆け寄ってきた。それには答えず、「今日もいい一日だったね」と話しかけると、はてな顔で“うん”と頷いて戻っていった。ああ、明日もきっと、いい一日になりますように。


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