転職エージェントとは求職者に偏見を持つもの 〜だからあなたは良い求人を紹介されない〜
僕は約12年、転職エージェントをしています。
残酷なことではありますが、転職エージェントは求職者とは偏見を持つものです。
これはどういうことかというと、”イイ求人を紹介する人と、紹介しない人”を分けているということです。
ちなみにここで言う”イイ求人”というのは、いわゆる他と比べて給料やボーナスが高かったり、休みが多かったり、福利厚生が充実していたりと、多くの人が希望するような人気求人のことです。
もちろん、これは僕自身のさじ加減なんじゃないか?と思う人もいるかもしれませんが、これは僕だけに限らないのです。
というのも、これまで大手の転職エージェントから中小の転職エージェントまで、複数の組織に所属してきましたが、どんなキャリアコンサルタント(転職エージェントで個人対応をする者)だとしても、やはりイイ求人を紹介するかしないかを人を見て判断しているからです。
実際に転職エージェントでは、日々こんな会話がなされているものです
「Aさんですが、この求人(イイ求人)を紹介しました。」
「Bさんは?」
「Bさんですが、経歴などは申し分ないですが、こちらの求人(普通の求人)を紹介しました。」
と、このように、転職エージェントは単に経歴や実績、資格などの目に見えることだけで判断して求人を紹介しているわけではなく、別の要素も含めて「イイ求人を紹介する人と紹介しない人」を差別しています。
では、なぜ転職エージェントは偏見をし、また一方で求職者は偏見を持たれるのでしょうか?
◆ ◇ ◆
1.なぜ転職エージェントからイイ求人を紹介される人とされない人がいるのか?
まずは本題に入る前に、転職エージェントの仕組みについて解説していきます。
この点が理解できていた方が、「転職エージェントからイイ求人を紹介される人とされない人がいる」という理論が、より分かりやすくなるはずです。
まずは、この図をご覧ください。
これが、転職エージェントのビジネスモデルになります。
簡単に言うと、転職エージェントは「人を企業に紹介し、その人が採用に至った場合に対価を得る」のです。
これはすなわち、お客様は企業であって、人(転職者)は転職エージェントにとっての商品ということになります。
そのため、お客様である企業に対して良い商品である人(人材)を紹介したいと思うのです。
例えば、ラーメン屋の常連さんや平均客単価よりも多く注文してくれたお客さんに対して、店主が煮卵や面の大盛を無料でサービスする場合があります。
なぜなら、そのお客は他のお客よりも”良いお客”だからです。
つまりビジネスの世界では、多くのお金を払って買ってくれるお客様、いわゆる優良顧客に対しては、普通の顧客よりも良い商品やサービスを提供したいと思うわけです。
もちろん、商品の均一性(当たり外れがないこと)が重要視されるような自動車や携帯電話といった大量に商品を市場投下するようなメーカーなどは、この理論は働きません。
そして、特に俗人的であるサービス業ほどこのような思考が働くわけです。
これを前提に転職エージェントに当てはめると、以下のようになります。
「優良顧客=良い求人を提供してくれる企業」
良い求人ほど人を紹介しやすい、なぜなら採用に至る可能性が高いから
「良い商品=転職エージェントから良い求人を紹介される人」
良い人ほど良い求人を紹介しやすい、なぜなら優良顧客である企業の満足度を高められる可能性が高いから
このような構図から、イイ求人を紹介される人がいる一方で、イイ求人を紹介されない人もいるわけなのです。
それでは、イイ求人を紹介される人(良い商品)とはどんな人なのかという疑問が湧くかと思います。
それについて、次のトピックで話していこうと思います。
◆ ◇ ◆
2.転職エージェントに好かれる人の特徴
イイ求人を紹介してもらうためには、カンタンに言うと「転職エージェントに好かれる」ことです。
これは前のトピックでも話した通り、転職エージェントはとても俗人的なサービスの一つです。
転職エージェントで求人を紹介する人は”キャリアカウンセラー”や”キャリアアドバイザー”と言われる求職者(転職希望者)の担当が行います。
(以下、キャリアカウンセラーで統一)
そして、彼らが「この人は良い!」と思わない限り、わざわざ転職エージェントの優良顧客を紹介しようとは思わないわけです。
なぜなら、転職エージェントにとっての優良顧客に対して悪い商品(人材)を紹介して自分たちの評判を落とすことはしたくないですし、また優良顧客に対してはなおさら自信を持って奨められる商品(人材)を紹介し、自分たちの価値を上げようとするものです。
求人を依頼する企業としても、「イイ求人を出すんだから、イイ人を紹介してよね」という思惑があるのも事実です。
もちろん優秀な経歴や実績を持っている場合は、良い求人を紹介されるアドバンテージになりますし、キャリアカウンセラーも転職者との面談前に求職者の経歴などを確認した上で、イイ求人を紹介しようと想定したり、もしくはそのように上司から指示を受けていることもあるでしょう。
しかしながら、最終的にどの求人を紹介するか判断するのは求職者と面談を行うキャリアカウンセラーなのです。
実際、面談において交わされた会話というのはブラックボックスであり、キャリアカウンセラーの上司であっても、基本的には分かり得ません。
そのため、いくら優秀な経歴や実績の持ち主であっても、面談したキャリアカウンセラーにとっての印象が悪かったり、キャリアカウンセラーが疑問に感じるような言動を行った求職者に対しては下手に優良顧客、すなわちイイ求人を紹介するに至らないのです。
それではここから、イイ求人を紹介される=転職エージェントに好かれる人とはどんな人なのかについて解説していきます。
僕が考える「転職エージェントに好かれる人の特徴」はこの3つです。
・低姿勢/愛嬌がある
・清潔感がある
・正直である
ちなみにここでは、あくまでパーソナリティやキャラクターに関するものを挙げます。
「優秀な経歴や実績」を持っている方がイイ求人を紹介される可能性が高いのは明らかですし、そのような分かり切ったことをここで話しても意味がないため、その点についてはここでは触れません。
それでは、ここで挙げた3つの特徴を持っている人ほど、転職エージェントに好かれる理由について、具体的に話していきます。
2ー1.謙虚/愛嬌がある
謙虚だったり、愛嬌があることは、転職エージェントに限らず、対人関係において好かれる要素の一つではないかと思います。
自信を持つことは悪いことではありません。
しかし、自信を持つことと過剰にアピールすることをはき違えている人が、割と転職市場には多いのです。
ちょっと想像してみてほしいのですが、仮に素晴らしい経歴や実績を持っていて、明らかに優秀そうな人であっても、それを誇示するような態度を取ってきたら、いくらスゴイ人だとしても鼻につきませんか?
一方で、優秀にもかかわら低姿勢であったり、愛嬌がある人はどこか可愛らしくみえるものです。
だからこそ、自分に自信があるのであればなおさら、謙虚さと愛嬌を表現することで、より一層転職エージェントから好かれるはずです。
また、謙虚さについてはこんな研究結果があります。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンによる人格と知的能力を調べた研究によると、謙虚な人ほど自分が持っている能力やスキルに対する評価が平均1.2倍~1.3倍増になるということなのです。
一方で、過剰にアピールする人は能力が低いと見なされる可能性が高いそうです。
つまり、自分の能力をアピールしたいのであれば高慢な態度を取るのではなく、愛嬌と謙虚さをもって振る舞うことで実際よりも優秀に見られるでしょう。
2–2.清潔感がある
清潔感というと、見た目の爽やかさや身なりがきちんとしていることをイメージするかもしれません。
もちろんそれも大事なのですが、意外とニオイに気を遣っている人は多くありません。
特に口臭と体臭には気を遣った上でキャリアカウンセラーとの面談に臨むことで、彼らから持たれる印象はガラッと変わってきます。
実際、僕も日々面談をする中で、ニオイがキツイ人がたまにいます。
そのような場合、その人がいくら人柄がよく身なりに清潔感があったとしても、クライアントである企業に紹介するのはためらわれます。
実際にあったことですが、僕が紹介した人がとある企業の面接後に、その企業の担当者から「優秀だし良い人ではあるんだけれど、ちょっとエチケットに気を遣った方がいいかもしれませんね。」と暗にニオイについて言及されたことがあります。
また、転職エージェントの面談では、基本的には閉じられた空間(個室)にキャリアカウンセラーと約1時間〜1時間半ほど二人きりでコミュニケーションを取ります。
そのため口臭や体臭がキツイ場合、正直キャリアカウンセラーは面談に集中できなくなってしまいます。
「プロなんだからそれくらいなんとかしろ」という人もいるかもしれませんが、キャリアカウンセラーもまた人です。
我慢できないものは、できないのです。
僕自身としては、面談時にスーツを着ている一方でニオイがキツイ人よりも、ラフな格好である一方で歯磨きをしたり制汗スプレーでニオイに気を遣っている人の方が、だいぶ印象が良いものです。
そのため転職エージェントで面談に臨む際には、事前に歯磨きと制汗スプレーなどをして、ニオイに気を遣うことで良い印象を持たれるでしょう。
2ー3.正直である
正直であることも、転職エージェントに好かれるポイントの一つです。
これは、自分の経歴やスキルを偽らないということはもちろんですが、自分の言動を偽らないことが大事です。
例えば、キャリアカウンセラーから紹介された案件に対して、本当は興味が無いにも関わらず変に気を遣って興味のある素振りを見せる人がいます。
しかし、このちょっとした偽りを行うことで、キャリアカウンセラーは「そのような求人(仕事や企業)が希望に近いのだ」という考えに至ってしまいます。
キャリアカウンセラーは求職者の真意を読み取ることなんてできず、あくまでも求職者の言動に則ってサポートをします。
そして求職者の言動に沿って求人検索や求人応募といった手順を踏んでいくため、当初聞いていた求職者の本来の考えが違っていたとなると、振り出しに戻ってしまいます。
また、仮に面接に行ったとしても話がブレてしまい、企業から良い印象をもたれないだろうという推測に至ってしまいます。
もちろんそのような場合でも嫌な顔は見せないとは思いますが、おそらく「めんどうくさいヤツ」というレッテルを張られ、なおさら優良顧客である良い求人先を紹介する可能性は低くなるでしょう。
もし転職に対しての考えが固まっていなく、自分自身でも何を希望しているのか分からない場合は、正直にそのように伝えた方が良いと思います。
キャリアカウンセラーは色々な角度から話を聞くことで、潜在的なニーズを引き出す手引きをしてくれるはずですから。
また、本音でコミュニケーションを取れない求職者と信頼関係を築くのは難しく、信頼関係が築けない者同士が共通の目的(満足のいく転職)に向かうことに支障をきたすことでしょう。
◆ ◇ ◆
まとめ:悲しいけど現実は色眼鏡で見られる
この記事では、転職エージェントがイイ求人を紹介する人とされない人の違いについて書いてきました。
そして結論としては、「転職エージェントは人を色眼鏡で見るものだ」ということです。
ただこれは、転職エージェントに限った話ではなく、転職以外の日常でもありふれた事実です。
ちょっと想像を巡らせば思い当たることはあるかと思いますが、例えば飲み会で出会った人であったり、コンビニの店員さんであったり、会社に飛び込みで訪れた営業マンであったりと、私たちは誰もが初めて会う人に対して、その時々の印象でその人がどんな人なのかを無意識に自己判断しています。
その中には、実はとても真面目で根はすごくいい人であるにもかかわらず、初対面の印象だけで「なんか気持ち悪っ」と思われてしまっている人もいるでしょう。
それはとても悲しく残酷なことではある一方で、それが”現実”です。
だからこそ、いかに他人から「この人は良い!」と思われるような振る舞いをすることが大事なのです。
そしてそれが、いわゆる”錯覚資産”として機能することに繋がり、「良い求人を紹介される」といったようなメリットを享受することになるのだと、僕は長年転職エージェントとして求職者と対峙することで思った次第です。
とはいえ、あまり堅苦しく考えるのではなく、どうしたら相手に快く思ってもらえるのかをちょっと考えて振る舞うだけでも、身の回りに起こる出来事はポジティブになるのではないでしょうか。
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