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米FAA型式証明取得の枠組み

従来の垂直発射型ロケットに対して、飛行機を空まで飛ばして、この飛行機に搭載したロケットを上空で切り離し、宇宙軌道にのせる方法として、空中発射型ロケットによる打上げが進んでいる。

この空中発射ロケットによる打上げを行う代表的な事業者が、米Virgin Orbitである。Virgin Orbit(VO)については、以下にまとめているのでご確認いただきたい。

米国内でロケットの打上げを行う場合、アメリカ連邦航空局Federal Aviation Administration(FAA)に申請し、ライセンスを取得する必要がある。FAAは、アメリカ合衆国運輸省の下部機関で、航空輸送の安全維持を担当する部局である。

2020年4月、VOと大分県が提携し、22年の人工衛星打上げを目指すという計画が発表された。大分空港からVOのロケットが飛び立ち、人工衛星を積んだロケットを打上げが、将来行われるということである。

この大分空港を利用した空中発射型ロケットの打上げにあたり、先ほど説明したFAAのライセンスが必要となる。米国からではなく、日本の空港からの打上げになるとしてもだ。

FAAは、宇宙機、飛行機の両方に対して管理をしている。通常、飛行機については、耐空証明を行う。耐空証明を受けていない航空機は飛行させてはならないことになっている。これは、政府が機体の安全性を保障するという制度である。

FAAは、この耐空証明を、ロケットを搭載した飛行機(母機)に対して、宇宙機として耐空証明を発行する枠組みを用意しているため、紹介したい。

なお、日本では、飛行機は航空局、宇宙機は内閣府が管理・監督者であり、機関が分かれることや、もともとこのような事業が想定されておらず黎明期であることから、相当する制度はないのが現状である。

FAAの航空機に対する特別な型式証明の枠組み

連邦規則集the Code of Federal Regulations(CFR※)に型式証明書について規定されている。

※CFRとは、アメリカ合衆国の連邦政府により連邦官報の中で公布される、一般的かつ永続的な規則・規定を集成した法典である。CFRは50巻(Title)あり、14巻には、航空と宇宙(Aeronautics and Space)に関する規則が定められている。

14CFR§21.25(a)には、特別な目的で運用される制限付きカテゴリーの型式証明書を取得する権利を有するとある。§21.25(b)には、特別な目的の運用について列挙されている。このうち、宇宙機は、(7)の「FAAに定められるそのほかの運用」に該当する。

§ 21.25 Issue of type certificate: Restricted category aircraft.
(a) An applicant is entitled to a type certificate for an aircraft in the restricted category for special purpose operations if he shows compliance with the applicable noise requirements of Part 36 of this chapter, and if he shows that no feature or characteristic of the aircraft makes it unsafe when it is operated under the limitations prescribed for its intended use, and that the aircraft
(b) For the purposes of this section, “special purpose operations” includes
(7) Any other operation specified by the FAA.
(出典: Legal Information Institute)


制限付きカテゴリーの型式証明手続き‐Order 8110.56B-

CFRは、制度の概要について定められているが、この手続きについては、FAAが発行している、Order 8110.56B - Restricted Category Type Certificationを確認することになる。Order 8110.56Bは、FAAのAviation Safety(AVS) 室の直下のAircraft Certification Service 局が発行している。

General Informationによると、本命令は、FAAが制限付きカテゴリーの航空機の型式証明を発行する方法について規定したもの。連邦規則集CFR14巻に準拠し、制限付きカテゴリー航空機の型式証明の責任と手続きについて詳述している。

Chapter 1. General Information
Purpose of This Order.
This order prescribes how the Federal Aviation Administration (FAA) issues aircraft type certificates (TC), supplemental type certificates (STC), their respective amendments, and other design approvals, in restricted category and details the responsibilities and procedures for type certification of restricted category aircraft pursuant to Title 14 of the Code of Federal Regulations (14 CFR) 21.25.

 
制限付きカテゴリーの型式証明の概要によれば、FAAは、制限付きカテゴリーの航空機における型式証明を以下の通り整理している。

・ 14CFR21.25(a):制限付きカテゴリーの航空機について解説
  ・21.25(a)(1)標準カテゴリーの耐空性要件を満たす航空機を対象→Chapter3に詳述
  ・21.25(a)(2)米国の軍隊の使用を目的とした航空機を対象→Chapter4に詳述
・14CFR21.25(b):特別目的について解説
  ・特別な目的の運用は、承認された特定任務、目的の両方を含む→Chapter5に詳述

もちろん商用利用のため、大分県でのVOにおける、空中発射は14CFR21.25(a)(1)の手続きが必要と考えられる。

一部抜粋
Chapter 2. Type Certification in Restricted Category—General
1. General.
The FAA issues TCs to restricted category aircraft pursuant to 14 CFR 21.25(a) for use only in those special purpose operations defined in 14 CFR 21.25(b).
2. 21.25(a)(1) Aircraft.
Section 21.25(a)(1) addresses aircraft that meet the airworthiness requirements of a standard category (i.e., normal, utility, acrobatic, commuter, or transport category) except those requirements that the FAA finds inappropriate for the special purpose operation for which the aircraft is to be used.
5. Special Purposes and Special Purpose Operations.
An aircraft type certificated in restricted category may only perform the special purpose operations for which the aircraft has been approved.

14CFR21.25(b)の特別な目的の運航とは何なのかに関しては、Chapter5に記載がある。そして、宇宙機は、Space Vehicle Launchとして記載されている。

Chapter 5. Special Purpose Operations
1. General.
An aircraft certificated in restricted category may be used only for the special purpose operations for which it is approved.
2. Special Purposes and Special Purpose Operations.
a. The following special purposes and special purpose operations have been approved for restricted category (contact AIR-111 for a current list). More details on each of these are provided in paragraphs 4 through 10 below.

10. Other Special Purpose Operations, 14 CFR 21.25(b)(7).
The following are also approved as restricted category special purpose operations:
e. Space Vehicle Launch. Aircraft approved for space vehicle launch must comply with the applicable requirements of part 36, unless waived by the FAA.

まとめ

・大分県におけるVOの空中発射型ロケットの打上げには、米FAAのライセンスが必要
・ライセンス取得のための、型式証明は、14CFR§21- Issue of type certificate: Restricted category aircraft.によって取得できる
・手続きは、FAA Order 8110.56B - Restricted Category Type Certificationに詳述されている。特別な目的の航行の宇宙機の打上げ(Space Vehicle Launch)が該当する。


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