田園で人と繋がる“菊池みらいベース”
"Cafe FIKA"で繋がった
熊本県菊池市にある“菊池みらいベース” 田園の中のリノベーション古民家には、ワークスペースやシェアキッチン、サウナやゲストルームが用意されている。
ウッドデッキから大きな開き戸を開けて建物に入ると、ふわぁっと珈琲の良い香りがしてくる。奥に厨房があり、壁に細長く開けられた窓からは田園風景が見える。目の前で珈琲を淹れてくれる小さなカウンターとテーブル席2つ、コンパクトながらも開放感のある店内。そこはシェアキッチン "Cafe FIKA"
店主の松生 由紀子さんがフェアトレードの珈琲を扱い、月火水のランチを日替わりで4人の料理人が担当している。
「フィーカ」は北欧のスウェーデン語で「お茶の時間」。
その名の通り、今みんなが必要としている「ゆったりした時間を過ごして欲しい」との松生さんの思いから名付けられた。
訪れた日のFIKAランチ担当は、三池哲子さん(86) 。松生さんが 「大豆の会」で惚れ込んだ何歩も先を行くパワフルな熊本の女性だ。
キラキラとした目、素敵な笑顔、山と川が大好き!という哲子さんは、ハイジの様なまるで山から遣わされた森の妖精の様な人だった。
この日哲子さんは、結婚63年になるという夫 和博さんと一緒に現れた。哲子さんは山と川からそのときどきの旬の素材を見つけて料理する。熊本県が誇る食の名人の1人でもある。
「山が呼ぶんですよ♫自然に生かされているんですよね」と嬉しそうに語る哲子さんは、いつ行ったらどこに魚がいるか、サワガニがいつ出てくるのか、山椒がどこにあるかのを知っている。
そんな哲子さんのこの日のメニューは、
・川魚とサワガニの甘露煮
・さんしょの佃煮
・きくらげの天ぷら
・きくらげ人参青じそのかき揚げ
・里芋の蕗のとう味噌和え
・椎茸の南蛮漬
・ナスの味噌煮
・キュウリの酢の物
・なめこ汁と後藤さんの自然栽培米ご飯
そしてデザートは
・トマトゼリー♫
「きくらげは雨が降ったら喜ぶ♪ 喜んで大きくなるからね🤗」と 食材に対しても子どもを扱うかのように優しい。
哲子さんは、なぜ自然の恵みのランチを提供しようと思ったのか?
山が大好きな哲子さんはある日の山登りの途中、道で車に轢かれて命を落としたたくさんのサワガニを見つけた。「可愛そうだと思って…轢かれるくらいならと獲って来て調理してあげようと思ったんです」とそれが始り。
哲子さんが傷付けないように調理して、綺麗な形を残したサワガニは美しく本当に手を合わせたくなる。出されたお料理には哲子さんの優しさがあふれている。
哲子さんの使用する全ての食材は、山の声を聞き夫の和博さんと採りに出かけて見つけてきたものや畑で育てたもの。
「山に出かけると出会うんですよね」と大好きなお友達に出会うかのように話す。そしてそれはご自身の人生とも重なる。
「人が呼ぶんですよね。人に生かされてるんですよ私は」
この日、哲子さんのランチを求めて店内はあっという間に満席となった。
そんな哲子さんの趣味は民謡とカラオケ♫
カラオケは名人だそうだ。54歳のときにホノルルマラソンにご夫婦で出場したり地元の旭志ホタル夜想曲保存会の立ち上げ、保育士の資格取得やリメイクの洋裁等など(ここでは書き尽くせない)、これまで決めたことは全部やって来たという哲子さん。
「80代になってからが忙しくてね」と、いま 地元の中学生へホタル夜想曲の踊りの伝承や菊池市のシニア料理教室の指導、そして地域の子ども食堂の計画と、活躍の幅はどんどん拡がり留まるところを知らない。
Cafe FIKAで一緒になった人々は、いつの間にかみんな繋がって話が拡がる。人が繋がるというのはこういうことだろうか。その壮大な哲子さんと「若い人に繋がって欲しい」と松生さんやその仲間たちはいう。
私は気が付けば目の前で起きる、人と人との科学反応のような現象の渦中にいて何だかとてもワクワクしていた。
色んな質問をして来る私に、傍らにいた夫和博さんが静かに立って、哲子さんの冊子をそっと開いて見せてくれた。あ〜こういうことなのかと長年連れ添った夫婦の姿と、哲子さんの行動力の源を見せられた気がした。
本日のFIKAのランチのあと、お腹にも心にも深く深く幸せを感じた瞬間だったことを書き添えておきたい。
ありがとう❤️
2023.7.5取材 2023.8.21寄稿
📍菊池みらいベース
〒861-1304 熊本県菊池市深川51
📞0968-25-2501
📍Cafe FIKA カフェ・フィーカ
月・火・水 12:00〜18:00 営業
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