「木いちごの心臓」セルフライナーノーツ(後編)

矢澤豆太郎さんの創作短編集「Home.++」に寄稿した、音楽ゲーム題材のゲームSF「木いちごの心臓」の自己解説、の続きです。

後編は第三章から第七章(ラスト)までです。
注意! 物語のネタバレを含みます。

前編はこちらです。

第三章

・音楽ゲームを通して外国語を覚える
海外にいながら(場合によっては未訳のまま稼働している)BEMANIをプレイし、あるいは日本の音楽ゲーム文化への接触を大きな動機として日本語を勉強されている方々が多くいらっしゃることに感動を覚えているので、この要素は入れたかった。

・ゲームセンターにほとんど行ったことがないアリカ
日本生産性本部・余暇創研「レジャー白書2021」によれば、余暇活動としての「ゲームセンター・ゲームコーナー」への参加率は10.5%。ざっくり10人に9人は(少なくとも余暇活動としては)ゲームセンターを利用しないことになる。

・アキシマ地区
架空。モデルは長崎県長崎市の出島と広島県尾道市の因島。地名の元ネタは東京都昭島市。

・内海に浮かぶ大きさ八キロくらいの島
だいたい円形だとして単純計算で総面積約25km^2。参考値として淡路島が593km^2、礼文島が81km^2、因島が35km^2、出島が2.6km^2。島の大きさのわりに大きなショッピングモールがあるのは、一種の特区であるアキシマ地区が工業地域ならびに港町としてそこそこ栄えており、また従業員やその家族が多数居住するため。

・フォレスタ
架空。ショッピングモールの運営法人の子会社が全国のモールに展開するアミューズメント施設チェーン。モデルはモーリーファンタジー(イオンファンタジー社)。名前はモーリー→森→フォレスタ。さすがにもうちょっとひねりなさいな(反省)。

・今どきのアーケードゲームは~個人IDカードを使うのが平常
架空の習慣。ちなみに作中世界の典型的な価値観は、個人情報保護に対して現実ほどシビアではない。BBTRにエントリーすらしていなかったミヤコに第五章でNA社が招待状を届けられたのは、個人IDと紐付いた個人情報をNA社に提供することに、この初回プレイのときに同意しているから。

・お小遣いのコイン
ミヤコのおこづかいは、アリカの家政やカイリの与えた庶務(古い書類のスキャン&シュレッダー作業とか宛名シール貼りとか)を手伝っての出来高払い。アリカは国の支給金から一定額を渡すつもりだったが、金銭を得るならば何らかの労働を行いたいとミヤコ自身が望んだため。

・専用アプリがインストールされた
ミヤコの教育用タブレットのOSはClioneOSベース。架空のWikipediaに記述の通り、ベリービーツのクライアントアプリの対応OS。

・家でも遊べる楽曲、家でもプレイできるゲームを、どうしてわざわざゲームセンターに行ってプレイするのか
ミヤコはああ答えたけど、人の数だけ回答があると思う。

・一回のプレイ時間は十分少々
かなり前、自分のプレイ時間を実際にストップウォッチで測ってみたところ、3曲設定のポップンで1クレあたり平均10分半くらいだった。

・サト
2021年時点で12歳。1クレで長時間遊べる落ち物パズルを主にプレイしていたが、後にベリービーツも始める。言語の壁が主な原因でうまく馴染めなかった養父家とは、2023年頃から徐々に和解。2025年春の中学卒業後には、同家の一員としてアキシマ地区で暮らしつつ島内の高校に通うことになる。

・週替わりの課題曲によるランキング
モデルは「beatmania IIDX」のWEEKLY RANKINGシステム。

・交流会でのプレー披露とそれに向けた練習
ミヤコほか改正トラバース法の子どもたちを、練習もせずにトッププレイヤーと張り合える類の鬼才集団として扱いたくはなかったので、日頃からがっつりとベリービーツを練習して上達できるような習慣を持ってもらった。

・ミヤコよりも一つ年上の少女
翌2024年のシーンではすでに中学校を卒業しアキシマ地区を離れている。

・ベリービーツ・トップランカーズ(BBTR)
架空。名前の元ネタは「BEMANIトップランカー決定戦」。もっと独自の名前を付けようと思ったものの一度思い付いたこれが頭から離れず確定。

・旧児童福祉法
「児童福祉法」なる法律自体は実在するが、ここでは架空。作中の時点では、成育医療等基本法(架空)への統合に伴って廃止されている。

・移動制限条項
この物語の要石の一つだが、実のところこの世界の価値観(人権感覚を含む)は我々と異なるので、この制限の存在をわりとドライに受け止めている。「不条理」とまで表現しているのは、それが身近な人物の存在証明にすらかかわる問題となり、しかも例外規定が実際に適用され得る現実を実感した後の、第五章最終盤のアリカだけである。

・「演者(プレイヤー)よ、来たれ。仕事(プロフェッショナル)の時間だ」
元ネタは「beatmaniaIIDX 15 DJ TROOPERS」のキャッチフレーズ『「撃鉄」 ( トリガー ) は引かない。 「戦律」 ( せんりつ ) を打て』。現実として「ちょいダサ」「中二病」方面の演出は、この類のゲームでは重要だと認識しています。

・ちょっとダサい煽り文句
アリカがオブラートに包み損ねた。

・ホットミルク
ミヤコの好物。アリカはたとえ1杯分であっても電子レンジではなく鍋で温めるタイプだと思う。

・お砂糖をひとさじ
元ネタは映画「メリー・ポピンズ」より劇中歌「お砂糖ひとさじで」(A Spoonful of Sugar)。

・誰の支えも期待できない彼女
庇護を失った子供が現実に立ち向かう絶望については、かつて読んだ米澤穂信「リカーシブル」があまりに心に来てしまって、ずっと支配されている。

・わたしにはなんにもないから
そんなことないよ。

・移動制限の例外規定の羅列
ラストシーンに向けた伏線として、地区外の高校への進学(学校側からの招聘限定)がしれっと仕込んである。

第四章

・一人がひたすらしゃべり続ける番組を書き起こした体裁の小説
直接の元ネタは筒井康隆「経理課長の放送」(『農協月へ行く』収録)。

・架空の配信
第二/四/七章にはアリカやミヤコの知らない〜語り得ない情報が多く、視点を変える必要があった。もともとは三人称で書くつもりだったのが、第二章がWikipediaになり、第七章が記事原稿になった。じゃあ第四章はどうしようと悩みつつひとまず語るべきことをリストアップしておいたら、配信という単語が浮かんだ瞬間にヨータくんがひょっこり顔を出して、羅列事項を拾いながら話を膨らませて勝手に全部しゃべってくれた。ありがとうヨータ。本作のMVP。

・ヨータ
2024年当時32歳。アプリ版ベリービーツ最初期からのプレイヤー。本業はギグワーカーで、宅配、動画編集、軽作業などいくつかのプラットフォームを掛け持ちしている。モデルはgahouさん、1048さん、べあーさん、ほか多数の尊敬する音ゲーマーの方々。

・ビーバー
BerryBeatsことBBのファンなのでBBer。

・BBer’s Nest
架空の配信番組。名前の元ネタは、「DanceDanceRevolution」の元スーパープレイヤーでもある音楽レーベルDiverse System主宰・YsK439(与作)さんの老舗ウェブサイト「Gamer’s Nest」。動物のビーバーにも掛けている。

・いわゆる「点五」回
たまに番外編的な回が連続することがあり、点七回、点九回、点九九回みたいにその場のノリで適当に刻む。

・Twitter
実在。

・エリック
前作「夜の名前」(『Home.』収録)より。

・ペイコメ
架空。YouTubeでいうところのスパチャ(スーパーチャット)的な機能。架空のプラットフォームなので別の名前で実装。

・アンキパン
既存の架空。藤子・F・不二雄「ドラえもん」に登場する架空の道具(ひみつ道具)。

・一世紀早くフラゲ
ドラえもんは2112年生まれなので、作中の時点で残り100年を切っている。

・ばさ、ばさ、ばさ
紙束の擬音を入れるのは前出「経理課長の放送」オマージュ。

・アーケードゲームに移行したのが2016年11月~
このあたりの歴史はベリービーツのWikipediaを参考にした。Wikipediaを書いてくれたひとありがとう。

・ナップスターズ
架空。NA社と手を組んだナップチューン社が主催するベリービーツの非公式大会。元ネタはROUND1頂上決戦。名前は架空の社名の元ネタであるナップスターから。

・マスター・ヨータ杯
架空。語り手のヨータが主催する完全ファンメイドの大会。元ネタはエリナ杯、べあー杯。名前の元ネタは作中も現実も「スター・ウォーズ」の登場キャラクターであるヨーダ(マスター・ヨーダ)。名前はヨータの友人が付けてくれて、気に入ったのでずっと使っている。

・Python
実在のプログラミング言語。

・プレイヤー数の推測方法
「beatmania IIDX」の各段位の取得者数を独自に調査している方を見かけ、その手法を真似たもの。

・俺が持ってたULTRAあたりの記録
ヨータも普通にランカークラスの腕前。ただしBBTRは彼の苦手とする最上位の高密度譜面ばかりなのと、第一線のプレイヤーほどのプレイ頻度は保っていないため、最近のBBTRには出場を控えている。

・レジー
ヨータと同じくアプリ版ベリービーツ最初期からのプレイヤー。現在でもBBTR決勝大会の常連で、BBTR2021の準優勝が最高記録。

・ハルヤん
ハルヤとヨータは長い付き合い。第六章では公式解説なのでハルヤ選手と呼んでいたけど、配信では素が出る。

・articles
架空。テキスト記事プラットフォーム。noteのジェネリック。

・雀豪DX
架空。アーケード麻雀ゲームで、キャラクター要素やアバターのキャラメイク、麻雀初心者向けのチュートリアルモード、禁煙など若年層向けに振り切っているのが特徴。

・プロプレイヤーはゲームだけが上手ければいいわけじゃない
このあたりの下りが、「大会に優勝した人がプロゲーマーになれる」といういかにも盛り上がりそうな企画が、実際にはほぼ行われない理由だと思っている。本作は、現実に存在しないそのような試みが実際に行われたとしたら?というIF世界の物語でもある。

・俺らの大好きなゲームがこの世でいちばん上手いやつは、一体誰なのか
嘆願への署名を募るためのファンへのアピール方法をいくつも考え抜いたヨータが、ベリービーツの音ゲーマーには下手に論理を説くよりもシンプルで熱い煽りこそが響くと判断し、最終的に選んだもの。実際にはヨータが出現する前に自然に湧いてきたコンセプトだけど、発想の根源を辿ればおそらく押川雲太朗「根こそぎフランケン」。

・司法省法学校
架空。現実世界でいうところの法科大学院(ロースクール)。名称の元ネタは明治時代に実在した同名の教育機関。

・配信のdescription
ヨータが使っているプラットフォームの動画説明欄はdescriptionと呼ばれ、リンクや説明書き以外にも簡単なスクリプトを実装できたりする。

・このストリームは1秒前に終了しました
架空のプラットフォームの架空のシステムメッセージ。元ネタはGYARI「永遠にゲームで対戦したいキリタン」ミュージックビデオのエンディング。このメッセージを出したいがためだけにプラットフォームを架空にしたところがある。

第五章

・Discord
実在。作中世界ではビジネスシーンにも浸透し、SlackやTeamsとシェアを競っている。

・ミヤコと私は揃って疑問符を浮かべる
これは作中で全く匂わせてすらいないので二次創作なんですけど、アリカのこの疑問符はミヤコに対する演技。実はアリカとヨータは事前に連絡を取って、ミヤコの事情や本人の意向、ヨータの企画とその状況について何度か情報を交換している。なので、まだ中学生であるミヤコの付き添いとしてアリカが同行することになるのをヨータも知っており、切符やホテルの手配はアリカのぶんも含めた二人分が届いた。

・同社の担当者の奔走
ヨータが表のMVPなら、裏のMVPはこのNA社の名もなき担当者。表に名前の出ない運営スタッフや開発者たちが、現実世界でも様々な舞台を支えていることを描きたかった。

・FPS
実在。first-person shooter。一人称視点のシューティングゲーム。

・FPC
既存の架空。first-person combat。一人称視点の格闘ゲーム。赤野工作「C9H13NO3(アドレナリン)」(『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』収録)に登場した架空のゲームジャンル。

・MOBA
実在。multiplayer online battle arena。多対多のセッション型特殊能力バトルゲーム(正直、含まれる概念が多様でこの説明に自信はない)。

・CeS
架空。正式名称はeスポーツ会議体(Committee of eSports)。モデルは特になし。

・全国スポーツ協議会
架空。モデルは日本スポーツ協会。

・ミヤコの出場の実現
出場について他プレイヤー達からの嘆願があり、移動制限の例外規定を利用して実現させる、という2点だけは最初期のプロットから決まっていた。合理的な道筋を実現するために、ヨータ達やNA社のスタッフ・各団体の窓口担当が、限られた時間の中で懸命に対応してくれて実現にこぎ着けた。この場を借りて御礼申し上げます。

・旅費と宿泊費はクラウドファンディングで募り
意識せずに書いたものの、パキスタンで独自に発達した格闘ゲーム「鉄拳7」プレイヤーコミュニティの代表者を日本に招待するクラウドファンディング企画から明らかに影響を受けている。また原稿提出と前後して、「beatmania IIDX」の非公式大会である「第三回べあー杯」で遠方からの招待選手に交通費をカンパするクラファンが実施され、現実に追いつかれた。

・国営鉄道
架空要素の一つ。言うまでもなく、現実の日本では国鉄は1987年に民営化されている。

・MIYA、YOTA
それぞれ事情を抱えてはいるけれど、二人の間にはベリービーツのプレイヤー同士というシンプルな関係がある。意図的にスコアネームで呼びかけ、名乗ることでそれを示すヨータ。

・大会の前日
第六章の解説に書き忘れたんですけど、大会は12月24日、クリスマスイブ。前作も今作もお話がクリスマスイブのシーンから始まってるのは完全に無意識の偶然です。

・レンバス
既存の架空。J・R・R・トールキン「指輪物語」に登場するエルフの国のビスケット(携行保存食)。

・彼女の国の焼き菓子
作中世界でもエルフの国は実在しないのであくまで架空。

・「勝って」
私がこの短編で一番好きな台詞。

第七章

・架空のWEB記事原稿
構成上、試合自体の様子は書かないと最初から決めていた。まずは大会で起きた事実のみを無機質に並べ立てたところ、気付いたら普段の癖で大会レポートっぽくなっていたので、本当に記事の体裁に仕立てた。ところが大会のレポート記事そのものなら写真が欲しいところ、BBTRは架空の大会なので写真がない(それはそう)。そこで写真がなくても成立し、キャプション指定で情景も補えて、ライターの情熱という情報まで込められる、「架空の記事原稿」という好都合なフォーマットを練り上げた。もし私がイラストを描ける人だったら、写真の絵(?)を描いて挿入し、記事そのものに仕上げていたかも。

・カリノ
フリーランスのゲームライター。2024年当時31歳。経歴的に私とは全くの別人のはずだが、カリノ名義で架空のTwitter告知を行った私に乗っ取られた。もうしません(?)

・UberFiles
架空。「Uber Eats」はじめギグエコノミーで知られるUber社がファイル転送サービスにも手を出していたIF。架空のウーバー概念の元ネタは、「ファイナルソード」RTA文化ならびに まんが牧「異世界転生RTA」の「ウーバー商人」。

・EAS(エレクトロニクス・アンド・アミューズメント・ショー)
架空。家電製品とゲームおよびアミューズメント分野の総合展示会。モデルはJAEPO(ジャパンアミューズメントエキスポ)とCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)。

・画像挿入:01_DCMP24122401_024.jpg
カリノさん所有のコンパクトデジカメで撮影。元画像をトリミング加工して、ファイル名の頭に登場順の連番を加えた。

・フリージャズの複雑なリズム
「茶色い犬のワルツ」にはEXT譜面でアレンジが変わるギミックがある。

・精度の鬼
念頭にあったのはPEACE選手。

・水底の華炎
既存の架空。「夜の名前」(『Home.』収録)に登場した人気アートコア楽曲。初出は2000年なので、ベリービーツへの収録は18年越しの会社間移植。読みは「みなぞこのかえん」だが頻繁に間違えられる。

・J. SAKURAI
架空。EDM~QDMアーティスト。女性。名前の元ネタは物理学者のJ・J・SAKURAI(桜井純)。

・QDM(Quantum Dance Music)
架空の音楽ジャンル。音楽ゲームに限らずEDM全般のBPMが高速化しつつある2010年代、その流れに逆行するように、極限まで低BPMでありながらも「ノれる」ダンスミュージックとは何か?を追求したEDMのサブジャンル。ジャンルそのものや楽曲に特定のモデルはないが、低BPMのボス曲というコンセプトのモデルはPower Of Nature「少年は空を辿る」とその楽曲コメントから。

・Heartbeat of Raspberry
架空の音楽ゲームの架空のボス曲。「シューティングスター☆ラブ」のように実在する未来もあるかもしれない。ベリービーツのエピソードが広く知られているJ.SAKURAIにこそゲームそのものを象徴する新曲をお願いしたい、というNA社からの依頼を、マネージャーの反対を押し切って快諾した彼女が書き下ろしたもの。タイトル回収しつつクライマックスに向けてビート(心拍)を刻み始めるようだ、という趣旨の感想を頂いて感動を覚えた。そういえば作品タイトル、執筆の最終盤になってはじめてjun「Raspberry♥Heart」と丸かぶりという致命的な事態に気付いてしまい、見なかったことにしました。

・アニー賞
架空。モデルはグラミー賞。名称はアカデミー賞、グラミー賞、トニー賞のごちゃまぜミックス。

・決勝戦の結末
最初期のプロットから決まっており、覆す気はなかった。

・運営スタッフと選手を交えての協議
この章の書き手であるカリノから見えた範囲に基づいた記述。実際には事態の技術的な調査はテクニカルスタッフが行い、最終裁定は大会の運営責任者はじめ現場の中核スタッフ数人の合意により下された。裁定の公表前に運営側からミヤコとハルヤに確認したのは「ノーツ抜けの原因がミヤコのタブレットの不具合であることに異論はないか」の一点。たとえ勝者であるハルヤが望んでも、再試合などはあり得なかったと思う。

・タブレットを抱えて~慰める
画像キャプションという概念があったからこそ入れられた描写。当初のプロットには存在しなかったこのシーンが現れたとき、この情景のためにこそ「木いちごの心臓」という物語は書かれたのだと確信した。私が一番好きなシーン。

・イチゴ世代
教育用端末への「ストロベリー・ミュージック」の初収録は2017年。7年という長い時間によって芽吹き始めた概念。

・プレスリリースのURL
架空。未来のURLなので繋がらない。元ネタというわけではないけれど、小説中にURLが出てきて現実で本当に繋がる、の一例としては成田良悟「デュラララ!!」(2004)。「架空のWEBサービスのそれっぽいドメイン」という観点でいえば、グレッグ・イーガン「ルミナス」(1995)には、0~3歳児限定SNS「WiddulHands.com」や、食生活上の悪癖を肯定してくれる「科学的な」根拠を大量の医学論文の海から探し当てる「FoodExcuses.com」が登場する。

・ISSU(国際体育大学)
架空。International Sport Science University。

・体育大学によるeスポーツ選手の獲得
2022年現在ではおそらく架空。体育大学所属の研究者がeスポーツ文化を研究対象とする事例であれば複数存在する。

・ミヤコの出場を扱った先行記事
当該記事中では、「未成人の庇護者が自立し収入を得ることを想定していない」「職業選択の自由など基本的人権に反する可能性がある」「ミヤコには国際大会への招待も打診されているというが、改正リフシッツ法の対象者にはパスポートの発行すら想定されていない」といった問題も提起されている。

・改正リフシッツ法の行方
本当にそのような未来が待っているのかどうかは分からない。けれど、「発展した文化は、やがて社会の制度や人々の価値観そのものに影響を及ぼしてゆく」「一人ひとりが小さな意図を持って動くことが、やがて一人ひとりの当初の意図よりも大きなものを動かしてゆく」という思想があります。なので、最後の一文はこれになりました。

おわりです。


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