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パニック障害はつらいよー

パニック障害ってすごくつらいです。通勤電車に乗るのが恐怖で、会社を辞めようかと思いました。パニック障害と診断されるまで二年かかりました。耳鼻咽喉科、内科、精神病科、泌尿器科、男性更年期障害科などを転々としたあげく、やっと心療内科にたどり着きました。

五十の頃、パニック障害になった。最初は病院に下血して救急車で運ばれ、生まれて初めて入院した。一週間ほどして院内を歩けるようになると、床屋があったのでそこに入った。前のご夫婦が終わり、たぶん旦那さんが理髪して、奥様は付き添いだと思うが、私は床屋の椅子に座ってエプロンをかけてもらった。

そこに予約か何かの電話がかかってきて、一人鏡に映った自分を見ているときに、居ても立っても居られない、いわゆるパニックに襲われた。床屋の椅子から転げ落ちるような、目の前の流しに嘔吐するような、不快な気分が押し寄せて来た。

このパニックは本当につらい。でも数分なんだけど。通勤電車でパニックが起きると、次の駅で下車してトイレに駆け込んだ。嘔吐も下痢もしないのだけど、人目を避けたくなる。原因が分からず、精神病院、耳鼻咽喉科、泌尿器科などを回ったが、なおらない。男性更年期障害科にもいった。心療内科にたどり着くのに、二年かかった。セロトニンを出す薬を飲んで安定している。
電車の中とか、床屋の椅子とか会議中とかその場所から離れられない状況になるとパニックが発生する。運転中は怖い。だから車はやめた。通勤電車もつらい。だから会社のそばに引っ越した。このパニックはセロトニンのせいだといわれている。対応する薬があるので、医者にそうだんすると良い。

聖路加病院でパニック障害だと判明するまでの二年間、最大の悩みは通勤だった。徒歩の間はいいが、電車と地下鉄を乗り継いで約1時間15分。この間に当時は確実にパニックが発生した。吊革につかまり、押し寄せる不安感というか、下痢か嘔吐か小便漏らすのか、その逼迫感から、とにかくトイレに急ごうと、各駅停車しか乗れない。次のホームで降りると、トイレに急ぐ。でも駆けると漏らしそうな恐怖があり、適度な速さで個室が空いていることを祈りながらトイレに向かう。おかげで中央線の駅のトイレはだいたい覚えてしまった。人前で粗相をしそうな恐怖感。当時年に数回講演を頼まれていたが、講演の最中に発症すると、とても困る。一応トイレタイムをもらったりするが、もう大丈夫だと安心できるまでにはやはり数分ではだめで、二十分ほどは一人で休まないといけない。
仕事は会社に説明して了解されたが、講演みたいな仕事は極力避けるようにした。
このパニックの恐怖はやはり体験しないと判らないだろう。高速道路を運転していてパニックが発生すると、アクセルを踏むのが怖い、その場で車を乗り捨てたくなる。小仏トンネルで発症したときはハンドルを持つ手が震えて、ブレーキを踏みたくなった。走行車線だからと言って、高速のトンネル内で停車するわけにもいかない。震える足でアクセルを踏みながら、トンネルの出口が待ち遠しい。トンネルを出たら、路肩に停車しようとパニックの恐怖と、高速運転の恐怖が重なり、運転中のパニックを数回経験して、車の運転は止めた。
パニック障害は人には理解されにくい。しかし、本人は死ぬに等しいような恐怖だ。まあ、人前でうんこたれても死ぬわけではないが、社会的死に等しいだろう。私の場合、二年後に心療内科がいいらしいと聞いて、聖路加病院へ行ったら、「床屋は怖くないですか?」と聞かれた。
その最初の一言で、救われたと思った。発症が床屋だったこともあり、ああ、理解してくれる人がいたと、大いに安堵した。
しかも、セロトニンという脳内物質の不足が原因とか、それを補う薬で症状が出なくなるとか、対策までわかっていたので、本当に良かった。

パニック障害の皆さん、パニック障害と判れば、薬もあります。安心できます。医者と相談して治療に当たってください。頑張ってね。

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