チャットGPTの想像力レベルを試す、SFのパターンで空想アイデアをつくる
チャットGPTは想像力を持っているでしょうか?
チャットGPTに訊いてみると「私、ChatGPTは、レベル3の想像力を発揮することができます」との回答が返ってきました。
想像力は3つのレベルに分けることができ、レベル3は最も高いレベルで空想力と呼ばれます。
レベル3の想像力を持つ(と回答する)チャットGPTに、SFのパターンを使って空想アイデアをつくってもらいました。
想像力の3つのレベル
想像力は次の3つのレベルに分けることができます。(参考文献1)
レベル1
実際に経験したことがあるものに対する新しいイメージを想像する
【例】果実と野菜がなっている1本の木
レベル2
実際には経験したことがないが、その知識があるものに対する新しいイメージを想像する
【例】磁性のある果物
レベル3
「世の中には存在しないかつその情報もない」もののイメージを想像する
【例】気体の植物
「レベル1→レベル2→レベル3」と進むにつれて、想像力のレベルが上がります。レベル3は空想力と呼ばれる想像力です。(参考文献1)
チャットGPTの想像力はどのレベルか?
チャットGPTに「どのレベルの想像力を発揮できますか?」と質問すると、次のような回答が返ってきました。(要約です。わかりやすくするために一部を編集しています)
チャットGPTは、レベル3の想像力を発揮することができる
大量のデータと情報を学習してきたため、新しいコンセプトやアイデアを生成し、それらに基づいて新しい情報やアウトプットを生成することができる
提供するアウトプットの妥当性は、学習したデータや情報に基づくものである
「レベル3の想像力を発揮することができる」と回答してくれたので、チャットGPTの想像力に期待して、さまざまな質問をしてみました。
レベル3のイメージを考えてもらう
まず次の質問(プロンプト)をしました。
『では、レベル3のイメージ(想像した物)を、いくつか教えてください。
例えば、生きている匂い、内部に宇宙空間を持つ動物など、おもしろいイメージ(想像した物)をお願いします。』
そうすると、次のような回答が返ってきました。(要約です)
いくつかのレベル3のイメージを提供するが、これらは現実には存在しないアイデアやコンセプトであり、あくまで想像力を刺激するためのものである
といったまじめな前置きの後に、たくさんの空想アイデアを提供してくれました。その中から私の独断で、おもしろいアイデアを選んでご紹介します。(要約です。わかりやすくするために一部を編集しています)
食べ物が動物になる
この世界では、食べ物は成長し、動物として生きることができる
【例】パンが鳥になったり、サラダがウサギになったりする
感情を物質化する
この世界では、感情が物質化され、それらを売買することができる
【例】幸福の感情は明るい色の球体になり、悲しみの感情は暗い色の球体になる
内部に宇宙を持った宇宙船
この宇宙船は、外側からは小さく見えるが、内部には宇宙空間が展開されている
内部は無限に続いており、そこには星や惑星が浮かんでいる
他にも、さまざまな空想アイデアを提供してくれて、楽しませてもらいました。
それでチャットGPTに、レベル3の想像力つまり空想力をもっと発揮してもらおうと考えて、次のトライアル(試行)を行いました。
「SFのパターン」を使って想像してもらう
TRIZ(発明問題の解決理論)のICIコース(創造的想像力の開発)では「SF(サイエンス・フィクション)のパターン」というものが使われていました。
その「SFのパターン」の一部をご紹介します。(参考文献1)
SFのパターン1:「拡大⇔縮小」
【例】巨大ロボット対ミクロロボット
SFのパターン2:「加速⇔減速」
【例】地球の自転速度が、加速したり減速したりする
SFのパターン3:「動的⇔静的」
変更不可能なものが可能になる/変更可能なものが不可能になる
【例】人の姿が自由に変わる/人の記憶が変えられない
チャットGPTに上記の「SFのパターン」を伝えたうえで、それぞれのパターンに対して空想アイデアを考えてもらうというトライアルを行いました。
まずは、SFのパターン1「拡大⇔縮小」からです。
SFのパターン1:「拡大⇔縮小」
まず、次の質問(プロンプト)を入力しました。
『次のSF(サイエンス・フィクション)のパターンに基づいて、レベル3の空想アイデアを考えてください。
・SFのパターン1:「拡大⇔縮小」
(例)巨大ロボット対ミクロロボット』
そうすると『素晴らしいアイデアですね』という誉め言葉の後に、次のような回答が返ってきました。(要約です。わかりやすくするために一部を編集しています)
パターン1の空想アイデア
「縮小化された惑星」
宇宙に浮かぶ小さな惑星があり、その上に微小な生物や植物が住んでいる
人類はその惑星を発見し、宇宙船を送って調査することになる
宇宙船内には特殊な装置が搭載されており、それによって人類はその惑星の表面に降り立ち、縮小したサイズでその惑星を探索することができる
ストーリーの展開案
縮小化された人間が、植物や動物と対峙する
微小な生物の視点から見た惑星の景色や風景などを描写する
人類と微小な生物の交流やコミュニケーションを描く
SFのパターン2:「加速⇔減速」
続いて、次の質問(プロンプト)を入力しました。
『では次のパターンでレベル3の「空想アイデア」を考えてください。
・SFのパターン2:「加速⇔減速」
(例)地球の自転速度が加速したり減速したりする』
今度は『素晴らしいパターンですね』という誉め言葉の後に、次のような回答が返ってきました。(要約です。わかりやすくするために一部を編集しています)
パターン2の空想アイデア
「時空間の加速」
ある人物がタイムトラベル装置を発明して、過去や未来に旅することができるようになる
ある時、装置の設定を変えることで、時空間そのものを加速させることに成功する
すると、時間が通常よりも速く流れるようになり、その人物は通常の時間の流れとは異なる時間を過ごすことになる
ストーリーの展開案
通常の時間よりも速く流れる時間の中で、登場人物が何を見たり、何を体験したりするかを描写する
通常の時間の流れでは見ることができない星の誕生や崩壊を観察したり、数千年先の未来を体験する
通常の時間の流れとは異なる時間の中で、登場人物がどのように成長したり、変化したりするかを描写する
SFのパターン3:「動的⇔静的」
最後は、次の質問(プロンプト)です。
『次のパターンでレベル3の「空想アイデア」を考えてください。
・SFのパターン3:「動的⇔静的」
(例)変更不可能なものが可能になる(人の姿が自由に変わるなど)』
今度も『素晴らしいパターンですね』という誉め言葉の後に、次のような回答が返ってきました。(要約です。わかりやすくするために一部を編集しています)
パターン3の空想アイデア
「物質の静的変換」
特殊な装置を使って、物質を静的に変換することができる世界を描写
木の実を鉄の塊に変換したり、石を水に変換することができる
変換された物質が元の物質と全く同じ特性を持つため、変換された物質を使って建物や乗り物を作ったり、食物を作ったりすることができる
ストーリーの展開案
物質を静的に変換することができるという新しい技術が生まれた世界を描写する
物質の変換によって、新しいビジネスが生まれたり、新しい産業が興る
この技術によって、環境問題を解決する。有害物質を無害な物質に変換して、環境の浄化を容易にする
チャットGPTによる「空想アイデアづくり」は以上です。
ICIコースでのSFのパターンは他にもありますが、今回は3つのパターンをお借りして、チャットGPTに空想アイデアを考えてもらいました。
私の感想
チャットGPTは、私の方から提示した「パターン」と「例」を忠実に倣って、それぞれの空想アイデアを考えてくれました。そこにチャットGPTのまじめさを感じました。
また「どこかで聞いた(見た)ことがあるアイデアを使っているな」と思われる空想アイデアもありましたね。
SF好きの私には、とてもおもしろいトライアルになりました。こんな風にチャットGPTを使ってみるのも楽しいと思います。
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参考文献
Yuri Salamatov『超発明術TRIZ シリーズ5 思想編「創造的問題解決の極意』の「5.2.空想の常識」