ゼロベース思考が必要なタイミング
ゼロベース思考とは「これまでの前提条件や思い込みをなくして、ゼロからものごとを考える」ことです。
社会や経済の環境が複雑化しています。そのような状況のもとで、製品やサービスの差別化を図るうえで、ゼロベース思考は特に必要とされる思考法といえます。
でも、実際に「ゼロベース思考を行う」ことは結構大変です。
これまでの知識や経験に対して、ゼロベースで(ゼロの状態から)考える必要があるからです。
そのため、ゼロベース思考が必要なタイミングを知っておくと効率的です。
製品やサービスのライフサイクルのどの段階で、ゼロベース思考を行うと効果的かを解説します。
またゼロベース思考の具体的な方法として「柔らか発想法」をご紹介します。
ゼロベース思考が必要なタイミング
ゼロベース思考は、次の2つのタイミングで必要になります。
コモディティ化に対する差別化を図るタイミング
新しい価値をつくりだすイノベーションが必要なタイミング
最初のタイミングは、製品やサービスのコモディティ化が進んでいるときです。
コモディティ化とは、製品やサービスの「性能・品質・ブランド力」などに差がなくなり「どこの製品やサービスも似たもの」に見えるようになった状況のことです。
このような状況の中では、他の製品・サービスとの差別化を図る必要があります。
差別化により、競合する製品・サービスとの違いをつくり出し、競争上の優位性を得たいタイミングでは、ゼロベース思考による斬新なアイデアが必要とされます。
また「新しい価値をつくりだすイノベーション」が求められるときは、ゼロベース思考はさらに必要とされるでしょう。
次は上記の2つのタイミングが、製品やサービスのライフサイクルのどの位置になるかを見ていきます。
(この記事は、後日に有料化させていただく予定です)
製品・サービスのライフサイクル
製品・サービスのライフサイクルを考えるときには「製品・サービス」をシステムと捉えて、そのシステムの発展を考えるとわかりやすいです。
システムは、Sカーブを描いて発展することが観察されています。(参考文献1)
図の縦軸は「システムの価値」で、横軸は「時間」です。
システムの発展には、4つの段階があります。
1.導入期
2.成長期
3.成熟期
4.引退期
現行のシステムが引退期を迎えた後は、どうなるでしょうか?
現行システムに対する新システムが登場します。
「現行システム ⇒ 新システム」への交代期が進むようすを解説します。
現行システムが引退期を迎えるころには、新システムが現れます。新システムの価値は、当初(導入期)は現行システムには及びません。
しかし、新システムが成長期に入った頃には、現行システムを追い越しはじめます。そして現行システムを追い越した時点で、新システムが完全に取って代わります。
その結果、現行システムのSカーブと、新システムのSカーブは不連続になります。
「製品・サービス」をシステムとした場合でも、同様のSカーブが見られます。
Sカーブ上の位置
では「コモディティ化に対する差別化を図る」タイミングや「新しい価値をつくりだすイノベーション」が必要なタイミングは、システム(製品・サービス)のSカーブ上のどの位置になるでしょうか?
それぞれの位置は、次のようになります。
コモディティ化に対する差別化を図るタイミング
現行Sカーブの成熟期
新しい価値をつくりだすイノベーションが必要なタイミング
現行Sカーブの引退期~交代期
それぞれのタイミングについて、順に説明します。
1.コモディティ化に対する差別化を図るタイミング
現行システム(製品・サービス)が成長期の段階では、システムの発展は連続的です。それまでの知識や経験が活かされて、どんどん発展を続けます。
しかし残念ながら、その発展はいつまでも続きません。
やがて技術が成熟し、システムの発展が頭打ちになる段階がきます。そしてカーブの傾きが緩やかになります。それが成熟期です。
成熟期には、システム(製品・サービス)が「横並び→価格競争へ」と進みます。システムがコモディティ化し、その後に引退期を迎えることになります。
自社システム(製品・サービス)のコモディティ化を防ぐためには、差別化を図る必要があります。差別化により競争上の優位性を得るためには、斬新なアイデアが必要とされます。
そのためには「これまでの前提条件や思い込みをなくして、ゼロからものごとを考える」ゼロベース思考が必要になってきます。
2.新しい価値をつくりだすイノベーションが必要なタイミング
現行システム(製品・サービス)が引退期を迎える頃には、現行システムに変わる新システム(製品・サービス)が登場します。
新システムの価値は、当初(導入期)は現行システムに及びませんが、成長期に入った頃には、現行システムを追い越しはじめます。
現行システムを追い越した時点で、新システムが完全に取って代わります。
このようにして、不連続な交代が行われます。
この新システムが他社の製品・サービスの場合は、自社の現行システム(製品・サービス)は市場から引退してしまうことになります。
現行システムの成熟期にゼロベース思考で差別化を図れば、競争上の優位性を得ることができ、現行システムの引退期を遅らせることができます。
しかし、やはり現行システムのままでは、いずれ限界を迎えることになります。
そのような時期には「新しい価値を生み出す新システムをつくり出す」ことが必要です。
新しい価値を生み出すイノベーションにより、新システムをつくりだすことが必要です。
このようなイノベーションを行うときには、ゼロベース思考は特に必要になります。
ここまで2つのタイミングについて説明しました。
では、2つのタイミングでゼロベース思考を行うためには、具体的にはどうすればよいでしょうか?
これまでの前提条件や思い込みをなくして、ゼロからものごとを考えるための具体的な方法をご紹介します。
柔らか発想法
柔らか発想法は「柔軟かつ大胆」な思考を行う発想法です。その手順は、次のようになります。
思い込みを取り除く
思い込みを取り除くことで、頭を柔らかくする
頭を柔らかくした状態で、大胆に考える
「大胆に考える」とは、次のように考えることです。
・ものごとを恐れずに考える
・普段と違う思い切ったことを考える
「大胆に考える」ことで、ありきたりのアイデアを避けることができます。
さらに「頭を柔らかくした状態で、大胆に考える」ことで、それまでになかったアイデア、画期的なアイデアを生み出せる可能性が高くなります。
「柔らか発想法」について詳しくは次の記事をご覧ください。
チャンスをつかむ
これまでの知識や経験に対して「ゼロベースで(ゼロの状態から)考える」ことは結構大変です。
でも大変なときこそ、大きく変わるチャンスです。
ゼロベース思考が必要な2つのタイミングを知っておけば効率的です。
コモディティ化に対する差別化を図るタイミング
現行システムの成熟期
新しい価値をつくりだすイノベーションが必要なタイミング
現行システムの引退期~交代期
それぞれのタイミングで「柔らか発想法」を使って、次のようなアイデアを考えることができます。
コモディティ化に対する差別化を図るタイミング
競争上の優位性を得るための斬新なアイデア
新しい価値をつくりだすイノベーションが必要なタイミング
新しい価値を提供するためのそれまでになかったアイデア、画期的なアイデア
必要なタイミングでゼロベース思考を行えば、大きなチャンスをつかむことができます。
参考文献
Darrell Mann『TRIZ 実践と効用 (1) 体系的技術革新』の「第7章 問題定義-Sカーブ分析」
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