住まいあっての、人間の暮らし
30数年前、大学時代、上野駅の地下道で初めてホームレスの人を見て衝撃を受けた。
20年くらい前に上野で働いていたときも、仕事帰りの上野駅で、毎回ホームレスの方と遭遇した。心にダメージを受けるのがわかった。
今は、その頃より頻繁に至る所で、目にすることが増えてきたと思う。
暮らしている横浜でも、時折見かける。夜、店のシャッターが降りた商店街を歩いていると、多くの荷物に囲まれ路上で眠ろうと準備する人…。瞬時に、目をそらしてしまう。自分がその立場だったら、ということの想像を拒否して自分の心を守ろうとする。住まいがない、路上で暮らすって恐ろしい。住まいを持たず生きている人、が、少なからず存在するのに、そしてそれは増えてきているのに、つい見て見ぬふり。見たくない考えたくない、と強い意識が働く。
昔、確か青年劇場「つながりのレシピ」を鑑賞した後で、鑑賞者同士食事しつつ歓談していたときのこと。仕事が先か住まいが先かの、話題になった。ある人が力強く「やっぱりまず仕事だよ、仕事」と言い切り、私は圧倒されて反論するタイミングを失ってしまった。後悔。違う、住まいです、絶対。
安心して暮らせる場所があることが、すべての活動の基本。お腹がすいて食べるものがなくなったとしても、家を失くすことだけは避けたい。住まいがないのは、生きる活力も人間性も奪ってしまうと思うから。
評判を知って読んだ、柳美里「JR上野駅公園口」…すごく良かった。柳氏のイメージが変わり(けっして好きな作風ではなかった)、人の心の深遠に触れたと思えた。主人公はホームレス男性で、歩んできた人生とその思いの深さに圧倒されていく。そして、ひとり一人の“生”が、かけがえなく尊いものだと、深く感じ入ったのです。
皆、誕生時には、未来を持って生まれてきた祝福されるべき人たちだったのだ。
誰も、どんな状態になっても、最低限ホームレスになってはいけない…と、常日頃から揺るぎなく思ってきたのですが、今月Twitterであるプロジェクトの存在を知りました。
「家があってあたりまえでしょ!プロジェクト」。そうそう、そうなんだよ!NPO法人POSSEとNPO法人ほっとプラスの、10代・20代の若者が中心となっているそう。この年末、大宮で活動されているようです。POSSEは、東京での文学フリマにいつも出店していて、よく雑誌を購入しています。若者の労働問題に焦点を当てていて読み応えあり。
住まいだけは、生涯確保していたい。自分にとって切実な望みだけに、誰も、その不安に怯えないですむ社会であってほしい。最優先の政策にしてもらいたいです。
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