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『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』読みました

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(加藤陽子)、ようやく文庫で読みました。
そしてまた、最初から読み返しています。とても面白かったんですが、人から説明してと言われるとかなりあやふや。読み終わったものの、多くは忘れてしまったような。もったいないと思い、珍しく、1冊の本を読み返しているのです。
文庫本あとがきで橋本治氏が結んでいる言葉に、この本の真髄があると思う。『加藤先生は、「みんなで考えてよ、私は手掛かりを上げるから」と言っているのでした。』うんうん。だから何度も読み返すのが、きっと正しい。
これは、加藤陽子先生が20名ほどの中高生に行った講義録です。
著名な大学者が、歴史に関心のある若者に、1930年代の戦争にまつわる史実…日本・各国の権力者から市井の人まで多様な事例をあげて…を伝えていく。芳醇なときがそこに流れていただろうなあ。臨席していた大人(教員)も羨ましい。
中高の歴史の授業は、まず今の日本や世界がどうなっているかを学び、そこから遡る形で勉強すべき、とも言われます。時系列に沿って授業が進むと、“今”の時代に直結している近代現代の100年が早足で終わってしまう。そこが肝心なのに。
現在の政権や政治体制とも目に見える形で繋がってくるだけに、授業にしづらい面があるのだろうけれども。あまりに、私たち、知らないこと多すぎる。
本の中には多くの興味深い内容が書かれています。ふたつだけあげると…
長野県は満州移民を盛んに送り出した県だった。そこには国策とその協力で財政的に潤いたい村の計算があった。けれども、そうしたことに異を唱える人もいたらしい。そして、多くの満州移民を送り出したことを悔やみ自死した村のリーダーは、まだ42歳…某NHK朝ドラを思い出してしまった。
日本の傀儡政権を南京につくった汪兆銘(おうちょうめい)の妻のことも。中国人の敵と批判されたときに言ったそう。「蒋介石は英米を選んだ、毛沢東はソ連を選んだ、自分の夫・汪兆銘は日本を選んだ、そこにどのような違いがあるのか」。
戦争はドラマチックで様々な国の、人々の思惑が錯綜する。めっぽう面白いのだけれど、その前線で苦しい思いをするのは、いつでもどこの国でも、全体像など知りようがない市井の者なわけで…。やるせない気持ちにもなります。
戦争が起こる背景には様々な要因がある。けれどそれをやると“決める”のは国家で、そこには“しかたない”、などないのです。
今の時代こそ、読むべき本と感じました。

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