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「もう別れてもいいですか」読みました

「もう別れてもいいですか」垣谷美雨著を読みました。
面白かったです。読後感よかった&考えさせられる。印象に残った言葉をひとつだけあげるとしたら…「家族というのはな、安上がりに暮らせる共同体なんよ」
垣谷美雨さんは映画もヒットした「老後の資金がありません」の作者です。「老後の~」では、思いがけない出費の多さにびびる主人公の胸の内の描写が巧みで、“そもそも人類に墓が必要か?”のところでは笑わされました。
垣谷美雨さんなら、面白いこと間違いなしという確信と共に、中高年女性の離婚を扱ったテーマということにとても興味津々。
というのも、これまで野原広子漫画を3作読んでいて(「離婚してもいいですか?翔子の場合」「妻が口をきいてくれません」「消えたママ友」)、経済力小さな主婦の心の地獄模様を感じていたので…。これらの漫画では…とくに「離婚してもいいですか?翔子の場合」では…結局自立できる経済力を持たないことが諸悪の根源なのか~と思わずにはいられなかった。その閉塞感に満ちた心境がとてもリアル。
さてさて、垣谷美雨さんなら、いったいどう描くんだろう…と、とても関心あったのです。夢物語はしらけるし、かといって救いがないのは辛いし…と。
で、実は、この本の最後の方を先にさらっと読んでしまった。野原広子漫画とは異なる結論を知った上で、おお!この結末に至るまでの経緯はいかに?と楽しみに読み進めました。久しぶりに一晩で一気に読みましたよ。
経済力の小さな主婦…しかもこの本の主人公は還暦前…の経済的不安からくる葛藤は、野原広子漫画と同様です。生活レベルが下がることが確実、ということだけでも恐怖なのに、路頭に迷う怖れまで考え始めたら誰だって足がすくむ…。
そういう女性は、日本全国、いや世界中にたぶん大勢いるはずで。
すべての人間にとって生命維持はなにより大切なこと。
“妻”と言っても、ひとり一人性格も状況も違う。現在の日本で、夫と別れたがっている人に、安易に「自分自身が苦しいなら離婚しなよ。きっと大丈夫」とは言えない。
でも、本人自身が、離婚後の厳しさを十分覚悟し、自分の持てるもの(能力、人間関係、法律知識etc)を最大限生かせば大丈夫と自信が持てたなら、離婚した方がいい。そのほうが自分にとって幸せと信じられるならば。
それを具体的に明示した小説であり、夫婦関係に苦悩する女性に大きな希望を与えてくれていると思います。

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