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「テンプル騎士団」(佐藤賢一)読みました

集英社文庫で気軽に読める。面白かったです。知識欲も満たされるし、オススメ!
西洋史に詳しくなくても、 “十字軍って習ったなあ”ぐらいの知識で十分楽しめます。
いかに、テンプル騎士団が“歴史上唯一無二”の存在だったかを教えてくれる。 “ヨーロッパ初の常備軍、ヨーロッパ一の大地主、ヨーロッパ最大の銀行”で“城塞で農場で銀行窓口だった支部をヨーロッパ中に張り巡らせた超国家的組織”…おもしろ!何で今まで知らなかったんだろ。
作者は大学院で西洋史研究されていた直木賞作家。学術的でありながら、とてもエンタメしています。
テンプル騎士団は、約200年続いた十字軍と共に発展しました。十字軍が終わった後フランス王の計略により滅びましたが、その生き残りの伝説は多々あるそう。そのひとつで最も有名なのは、フリーメイソンになったというもの。えっ、フリーメイソンってあの、都市伝説の、世界を影から動かしているっていうあれだよね?…と、読み始めから、心わしづかみにされちゃいます。
パリにある重要な支部がフランス王の武装勢力に早朝急襲を受けたのは、1307年10月13日のこと。多くの騎士が逮捕されました。13日金曜日が不吉といわれるのは、キリストの処刑日であることよりむしろ、この事件の影響か大きいようです。捕らえられたテンプル騎士の自白で、入団する際のおぞましき男色の儀式が明るみとなり…ってこれは眉唾可能性大とか。当時、キリスト教異端者への拷問は過酷だったものね。拷問を避けるため嘘の自白した者が多かったと思われる。とはいえ、マッチョな男の園で帰属意識とプライドに満ちた騎士たち…人々が彼らをどう思っていたかが伺い知れるかと。下品な好奇心をかりたてられてしまう。
テンプル騎士団は、最初は巡礼者の道行きを警護することを目的とした、わずか9名から始まったらしい。が、やがて教皇や皇帝も恐れる、史上類を見ない権力を持つに至ったわけで…。そうなれたのは…金、金、金です。
テンプル騎士団が社会に与えた経済的影響の大きさといったら…! ページをめくるほどに、その鮮やかな錬金術ぶりに感心させられる。
昔は為替がないし、紙幣もなく、誰もが重い金属製貨幣を持ち運んでいた。現地のお金に両替する際には騙され大損することも…そうした苦労は、テンプル騎士団により解決されたのです。社会の常識を大きく変えたテンプル騎士団。
歴史は、今の私たちの生活に結び付いているもの…そう深く実感できる一冊です。

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