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「ナイトメア・アリー」観ました。

*ネタバレ少しあり。
映画「ナイトメア・アリー」鑑賞しました。
結末不穏で爽快な気分にはなれないし、冒頭から目を背けたくなる描写があって(どうしても抵抗のある映像はもう少しあとになってからでしたが…後述)…諸手をあげてオススメとは言い難い。でも目が離せなくなる展開は流石、素晴らしいです。
ナイトメア・アリーとは悪夢の小路の意味だそう。「シェイプ・オブ・ウォーター」と同じ監督で、現実世界からうんと遠くの世界に誘われる、点はそっくり。自分の日常を思い出す暇はなく、上映時間中はただただこの世界に入り込む…それって、映画にとって最高の誉め言葉なんだろうな。最初から最後まで不思議な映像美に酔わされます。
序盤の舞台は、1940年頃のアメリカのカーニバル一座。カーニバルと言っても“華やかで夢心地な楽しい”気配は、ひとかけらもなし。とにかく怪しげ…一座側もだけど、それ以上に見世物や読心術に熱狂する大衆を禍々しく感じました。魅惑的な映像で、人間の心のおどろおどろしさを浮き彫りにしていく。それは話が進み、場面が変わっても同じです。
「シェイプ・オブ・ウォーター」はお伽話的ですが、「ナイトメア・アリー」のお話にはそうした“甘い”香りはなし。どちらも、人のひりついた寂しさが物語の大きな推進力になっていますが。
詳細に語られない描かれない部分…主人公が幼い頃に体験した悲惨など…あり。けれど、大人に成長した今の言動から、その大変さが十分察せられます。その根深さも。
主人公に読心術を教えた老人は、心の闇を野放しにしてはいけないと、よく理解していた。人に傷つけられ心の穴ができると、その穴は深く、何を持ってしても埋めることはできないってこと。主人公の、抱える心の欠損も感じていたはず。
様々な場面での心理戦は、まさに手に汗握ります。どう相手をだましていくのか。どちらが勝つか。はらはら。そこが一番楽しかったです。
明るく颯爽とした悪…ルパン3世のような…はないので、主人公はやがて失脚へ進んでいくと誰もが確信する。その“破滅”への道を、じっと見つめている私達観客。それは、見世物に狂喜乱舞していた大衆とも重なってくるように思いました。
誰もが持つ、心の醜い救われない部分を、美しい映像と共に、見せつけてくる映画。
いくつか、直視し難い場面がありましたが、特に私が抵抗を感じたのは、映画序盤、それとエンディングでも使われた、象徴的なある映像。どうしても生理的嫌悪感があってひっかかりました。他の方はどうなんだろう…。

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