虚無感
「なんか最近モヤモヤするんです、自分はこのままで良いのかなって。今の仕事続けてて何になるんだろうって考えちゃうんです」
新しい年度になり、自分も含めて、良くも悪くも気持ちに波が立つようです。
数個下の後輩が、仕事の合間の休憩でふと内心を打ち明けてくれました。
「仕事で成長してるって実感がないってこと?」
きっとそんな答えが返ってくるんだろうなとわかりながら、あえて聞いてみました。
「それもそうです。トップダウンのやらされ仕事が多いのも事実ですよね。けどそうではないんです。」
それ以上にどういった答えが返ってくるんだろう、と色々と考えていると、少し俯き加減に彼はこう言いました。
「この人になりたい、この人に追いつきたいっていう人が身近にいないんですよね」
なるほど、伏し目で語る理由には合点がいきます。
僕という人間も彼にとっては憧れの存在とは到底言えず、
「あなたはとうに追い越してしまった人間なんです」
と捉えかねられないと慮ったためでしょう。
幸い、彼とは公私ともに気兼ねなく話せる、年齢や年次を超えた関係を築けていたがゆえに、彼の発言が、僕を見下すような意図を感じることはありませんでした。
彼は続けます。
「憧れの存在ってなんだろう、って考えてたんです。正確無比に、ミスなく仕事ができるとか、芯の通った仕事をする人とか、そういう人も凄いとは思うんですけど、自分がそうなりたいかって言えばそうではなくて。僕が大学生の時に、こういう社会人になりたい、って理想は『子供っぽく仕事できる』人だったんですよね。」
「子供っぽく仕事ができるって、キャッキャしながら、笑いながら仕事する…みたいな感じ?」
「極論ですが、そういう邪気のない姿勢で仕事が出来る人というイメージですかね。今僕らの周り見渡して、そんな管理職なり先輩ってなかなかいなくないですか?というかこの会社に入ってそんな人見たことないんです」
なるほど、確かに彼の言う通り、様々な職種を渡り歩いてきた自分自身でも、そんな茶目っ気のある、良い意味で子供っぽい人は会ったことがありませんでした。
みんな優秀な大学の中でも、優秀な層が集う会社です。出木杉くん軍団です。
それがゆえに、コミュニケーション能力は総じて高く、頭の切れる人、仕事のスピードがやたら速い人はごまんといます。
ただ、そんな人たちもどこか機械的に、ひたすら上からの仕事を、空気を読みながら進めている感は否めません。
管理職ともなれば、残業の制限なく、毎晩日が変わるぐらいにまでオフィスに残り、夕方ごろの会議ともなれば、疲れがピークに足して、白目をむいて寝てしまっていたりもします。
僕たちとの打ち合わせともなれば、「○○さんがこう言ってるから仕方ないよな」と肩を落としながら、次善の策を相談することも多々あります。
10年、15年後に自分がそうなりたいかと思いません。
かといって、明日から上司や僕が茶目っ気たっぷりにキャッキャ仕事していたら、それはそれで事件ですし、心配すらされることでしょう。
入社2,3年目の社員から、自分自身がどう見られているか。
彼らにとって仕事のやりがいもさることながら、追いかけたい背中が身近にあるか否か。
最近話題の若手の離職率の高さの一因を垣間見た瞬間でした。
どんな人からでも、日々学びがあるものですね。
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