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【note創作大賞応募】「マイケル・ジャクソンに捧ぐ」 伝えたい本当の姿 

来月6月25日は、マイケル・ジャクソンの15回目の命日です。

15年前、突然の訃報に驚きました。
彼がコンサートの準備を進めていたことも信じられませんでした。
当時の日本人には、スキャンダラスな人物というイメージが強かったのです。
死後もなお、主治医が睡眠薬の処方を誤ったのではないかなど、疑惑ばかりがフォーカスされ、彼の本当の姿は伝えられませんでした。

そんな時に突然現れたのが、映画「THIS IS IT」。

コンサートのリハーサル映像を、映画館で見られるというものでした。
あまりの感動に胸が震えました。
マイケルのダンス、人柄、何もかもに魅了され、ファンになりました。



CD、DVD、本を集め、マイケルのことをたくさん勉強しました。
私がそれまで見ていたマイケルの姿は、マスコミに作られた偽りの姿でした。

たくさんの人達に、マイケルの本当の姿を伝えることが出来たら、どんなに嬉しいだろうと思いました。

当時、自分一人のためだけに書いた文章があります。
それが、この「マイケル・ジャクソンに捧ぐ」です。

note創作大賞募集の記事を読んでいた時に、ふと思い出しました。
応募すれば、たくさんの人に読んでもらえるかもしれないと。

書籍の中で見つけた素敵な言葉を引用しながら、自分の言葉でマイケルへの想いを綴っています。

まさか、この文章が日の目を見ることになるなんて、思いもしませんでした。

マイケルへ、心を込めて贈ります。

何か少しでも、心に感じるものが残ってくれれば嬉しいです。



「マイケル・ジャクソンに捧ぐ」




【最後のカーテンコール】


「間違いなくこれが最後の講演なので、皆さんが聴きたい曲を歌います。
これが、最後のカーテンコールです。」

2009年3月5日、真紅を背にしたマイケルは、少し照れながら、数千人のファンの前で発表した。

ステージから遠ざかっていた13年という月日が、悲しくも彼から沢山のものを奪ってしまったかのように見えた。
鮮烈な赤色が彼を勇気づけ、あたたかく見守っている。

今更コンサートだなんて笑われるかもしれないけれど、もう一度挑戦してみたいんだ。
そんな声が聞こえてくるようだった。
照れ隠しに、はしゃいでもいた。
まるで無邪気な子供のように。


記者会見の様子 ロンドンにて


【一億人に見守られて成長するということ】


「自分が特異に思われているとは知りませんでした。
しかし、僕がそうであったように、5才の時から一億人に見守られて成長すると、自然と人とは異なってしまうのです。
僕には少年時代はありませんでした。
クリスマスも誕生日もなく、普通の子供達の生活や喜びとは、かけ離れたものでした。

代わりに僕が経験したのは、苦痛と苦しみでした。
やがて僕は成長し、成功しました。
しかし、僕が払った代償は、とてつもなく大きいのです。」

 〈1993年 グラミー・レジェンド賞 授賞式のスピーチ〉



彼が幼い頃から夢見ていたのは、史上最高の売り上げを記録するアルバム。
日が沈む時には、きまって願い事をしていました。
「これは僕の夢。僕の願い。」

その願いは目標に姿を変え、重労働と必死の努力の末、現実のものとなりました。
けれども、その代償に、彼は子供時代を失いました。

マイケルは、あまりにも人と違う人生を歩んできたし、彼のずば抜けた才能は、私達の想像を超えていました。
いつの間にか、彼は容易に理解することの出来ない変わり者として人々の目に映るようになり、それがいっそう彼を孤独にしました。

まだ、あどけなさの残る幼いマイケルに、とびきりのバースディケーキをプレゼントしてあげたかった。
「お誕生日おめでとう!」って、抱きしめてあげたかった。


ジャクソン5




【子供達から学ぶこと】


「子供達から学ぶことはたくさんあります。
今日世界は様々な問題を抱えています。

街の犯罪から大規模な戦争やテロなど、これらは僕達が子供達から楽しい時代を奪った結果です。
マジック、奇跡、神秘、そして子供達の純真さは、世界を癒す想像力の種です。

僕はそう信じています。

子供から学ぶべきものは、子供っぽさではありません。
彼らは、僕らにどのように生きるべきか教えてくれます。
それが何よりも大切なことです。」

 〈1993年 グラミー・レジェンド賞 授賞式のスピーチ〉


マイケルは子供達の中に身をおくことで、失われた子供時代を取り戻すのと同時に、大切な何かを学び続け、創作の原動力としていたのかもしれません。


【沈黙の日々、そして復活】


1993年、2度目の世界ツアー(ソロとしては1度目)を行っていたマイケルは、途中、金銭目当ての悪意ある訴訟により、警察による家宅捜査が行われ、精神的苦痛からツアーを中断しました。

その後、13年という月日を、ほとんど音楽に触れることなく、スキャンダラスな報道に苦しめられながら、子供達に寄り添い生きてきました。

彼は2006年、ロンドンのO2アリーナでのコンサートのオファーを受けた時も、
「まだその時ではない。」と、断りました。

関係者は、マイケルはもう二度とステージに上がるつもりはないのだろうと思ったそうです。

ところが、2008年9月、彼は突然、復活の準備ができたと、コンサートへの意欲を伝えます。
何故、今なのかと聞かれた時、
マイケルは、こう答えたそうです。

「子供達は、もう僕の仕事が理解できるし、
僕も今なら見せてやれる。」


プリンス・マイケル 1世(12才)
パリス・マイケル・キャサリン(11才)
プリンス・マイケル 2世(7才)


彼は、自分が働く姿を子供達に見せてあげたかった。
そして、記憶に残してほしかった。
そのために、子供達の成長を待っていました。

世間から非難と中傷にさらされている父の姿しか知らない子供達へ、本当の自分を知ってほしかったに違いありません。

自分が誰よりも輝ける瞬間を。




【映画 THIS IS IT】


記者会見の後、彼は意欲的にコンサートの準備を始めます。

衣装、デザイン、振付、音楽、ヴォーカルアレンジ、照明や美術、撮影に至るまで全てに関与し、これまでのどのコンサートよりも真剣に取り組んでいました。

けれども、ロンドン入りを目前にした
2009年6月25日、彼は突然この世を去りました。

1958年8月29日生まれ、享年50才。
あまりにも悲しい知らせでした。

ラストコンサートのステージ監督をしていた彼の長年の振付師で、クリエイティブ・パートナーであるケニー・オルテガは、
4月のオーディション開始から死の直前まで、100時間を越えて残された映像を編集し、映画「THIS IS IT」を完成させます

この映像は、マイケルがプライベート用に記録しておいたもので、そのような事をするのは今回が初めての事でした。
まるで、この時が来ることを予想していたかのような奇跡でした。

映画用の機材など用意しておらず、断片的な映像しか残っていない状態で、ケニーはマイケルの想いを胸に、起きてから寝るまで彼のことを考え続け、彼ならどうするかと自問自答しながら不休で作品を作りました。

映画にはマイケルの真の姿が映し出されています。

彼がどれほど純粋であたたかく繊細かを。
どれほど謙虚でひたむきに全力で生きたかを。


マイケルは全ての人との繋がりを信じ、この世界がもっとより良いものになるよう願い続け、
自分の才能を最大限に発揮しました。
人の心に訴えかけるため、精一杯力を尽くしました。

環境問題が、今のように取り上げられるずっと前から、彼は自然破壊に心を痛め、飢餓や病気に苦しむ人々のために、力の限り手を差し伸べてきた人でした。

この映画は彼の魂の結晶です。



このプロジェクトの主要メンバーは、マイケルを失っても誰一人あきらめませんでした。
全てをお蔵入りにする訳にはいかないと。

マイケルのメッセージをなんとか形にするために。

彼らの必死の努力が実り、マイケルを亡くして4ヶ月後には、スクリーンで輝く彼の姿を目にすることが出来ました。
ラストステージにかける思い、リハーサルで心を込めて歌いダンスする姿は、輝けば輝くほど涙をさそいました。

待ちに待った復活のステージ。
そして、これが生涯最後のステージ。

キング・オブ・ポップとしての栄光を取り戻すための、最後のチャンス。


神様に、もし1つだけお願いを聞いてもらえたなら、せめて初日の公演だけでも叶えさせてあげたかった。
彼の思い描く壮大な夢が、形になるのを見届けてほしかった。




【マイケルを失って気付いたもの】


マイケルは、どんなゴシップや非難にもじっと耐え生きてきました。
思いは歌にして、たくさんのメッセージを発信してきました。

けれども、裁判で無罪の判決が下されたニュースは、誰の耳にも聞き取れないくらいの小さな声でしか報道されませんでした。

スキャンダルの第一報は世界中を駆け巡り、その後何年にもわたり、彼を笑い者にし続けたというのに。

無罪を勝ち取ってもなお、人々の心の中に宿った彼への不信感は消えることはありませんでした。
無罪確定のその日、彼は最後まで笑顔を見せることはありませんでした。

無罪の人をあれほどまでに追い詰め、傷付けておきながら、自らの非を謝罪することなく、再び同じ過ちを繰り返すマスコミ。

そして、耳にした情報を知らず知らずのうちに鵜呑みにし、人を色眼鏡で見てしまう私達一人ひとりの卑しい心。

悲しくも、マイケル・ジャクソンという偉大な人物をなくして、はじめて、その罪の大きさに気付かされました。


彼がコンサートを成功させていたとしたら、決して見ることは出来なかっただろう彼の素顔。

信じる者に裏切られ、想像を絶する辛く悲しい出来事を経験しながらも、世界を恨むことなく仲間を信じ、愛のために最後まで全力で生きたマイケル。

彼の魂は、ガラスのように透き通る美しい宝石のようでした。
こんなにも美しい魂を傷付けてしまった。

私達一人ひとりに宿る卑しい心が、彼を苦しめてしまった。



【叶えたかった夢】


「 僕にとってツアーのゴールは、毎回のステージで最高のパフォーマンスをすることでした。
僕のことを好きじゃない人まで観に来てくれればいいのにと、僕は願いました。」

「自分の将来の道は、映画にあるかもしれないと悟ったのです。
僕は幼い頃から映画が大好きでした。」

〈自伝 ムーン・ウォーク より〉


マイケルは、現実にコンサートを行うという夢を叶えることは出来なかったけれど、心から望んでいた本当の夢を叶えて、天国へと旅立っていったのだと思います。

自分は何の非もなく、ただ子供達を愛し、地球を愛して生きてきただけなのだと、映画を通して世界中に訴えることが出来ました。

偏った愛がおかしいとか、偽善者ぶっているだとか、そんな陳腐な言葉は一瞬で消えました。


彼の真の姿は、見る者の心に直接語りかける胸に迫る映像でした。

これまで、スキャンダラスな報道でしか知らなかった人達も、リハーサル中に亡くなるという衝撃の結末に心を揺さぶられ、数多くの人達が映画館へ足を運んだに違いありません。

亡くなってからファンになった人が沢山います。
私もその一人です。
それこそが、彼の夢でした。

「僕のことを好きじゃない人達にも、観に来てほしい。」

彼の夢は、壮絶な人生と引き換えにして叶いました。
彼が一番好きだった映画という形になって。



【3人の子供達へ残したもの】


かつて、どんなに世界ツアーを成功させても、世間からのバッシングが鳴り止まなかったように、もしも、生きて「THIS IS IT」のコンサートを、
大成功で終わらせることが出来たとしても、
ステージから離れれば、彼は奇特な人物として報道され、本当の自分を理解してもらえないまま、余生を過ごしたように思えてなりません。

彼が輝けば輝くほど欠点を探し出し、私達のいる同じ場所へと引きずり落とそうとするマスコミ。

子供達にとって、自慢できる世界一のお父さんになること。
子供達が胸を張って堂々と生きていけること。

それこそが、晩年のマイケルが一番願ったことではないかと思うのです。


彼は、子供達のそばから永遠に消えることと引き換えに、最高の贈り物を残したのかもしれません。



「THIS IS IT」は、命と引き換えに真実を伝えた映画でした。

あの日を境に、マスコミが何十年ぶりにマイケルを称賛する報道を流し始めたのです。
親しい人達だけでなく、やっと世界が彼を認めた瞬間でした。

歌やダンスの才能と同じく、彼の人格もまた素晴らしいものだったと。

それは、きっと何よりも彼が子供達へ残したかったもの。
彼は今、安心して子供達を見守り、愛し続けていることと思います。

「ただお伝えしたかったのは、私が生れてからずっと、パパは、これ以上考えられないくらい素晴らしいお父さんだったということです。
私はただ、パパを心から愛してるって言いたいです。」

マイケルの追悼式で、娘パリスが伝えた言葉です。
世間では誰も彼女の声を聞いたことがなく、予想外の出来事でした。

彼女がお父さんのことで、どれほど胸を痛めていたか、お父さんの名誉のために、どれほどの勇気でマイクの前に立ったかを思うと、胸をうつ映像でした。

どうか復活したマイケルの名声が、永遠に続きますように。




【歌とダンス】


マイケルはあまり知られていませんが、発表した曲の多くを自分で作っています。
75曲中54曲。
そのうちNO.1ヒット曲が8曲。



彼は楽器を奏でることが出来ないので、メロディを口ずさむことで作曲していました。

頭の中では沢山の音楽が鳴り響き、それぞれの楽器を声で表現しました。
それが、あの独特な歌唱力の源となっています。

そして、ダンスする時の彼は、まるで音楽そのものでした。

「もし、耳が聞こえなくても、彼の動きで音楽が分かる。」
ダンサーの一人は、マイケルのことをこう賞賛しました。



「THIS IS IT」では、世界でトップクラスのダンサーが選ばれました。

若くてエネルギッシュで、躍動感に満ちたダンサー達の中にいて、50才のマイケルは、以前と変わらぬ輝きを放っていました。

若い頃とはまた少し違い、適度に力の抜けている感じが最高に格好良く、
「ビリー・ジーン」では息をのむ美しさ。

178cm、57kgの細く華奢な彼の体は、誰よりも軽やかにダンスします。
30代の頃よりも、更に魅力を増し輝くばかり。

歌唱力もダンスも体力も、少しも衰えることなく維持してきたマイケル。
13年という長い月日を、この日を信じて努力を続けてきました。



【DVD  「THIS  IS  IT」】


DVDには舞台裏の特典映像が多数収録されています。

復活までの道のり、オーディション、ダンサーの紹介、それぞれに抱くマイケルへの想い、華麗なステージ衣装、あっと驚く舞台装置の数々。

映画を見た人も、見ていない人も、機会があればぜひDVDを見てほしいと思います。
彼と同じ時代に生きながら、この壮大な夢が創り上げられていたことを知らずに一生を終えてしまうなんて、本当に勿体ないと思うから。


全力で生きること、仲間と共に夢を形にすることの素晴らしさを教えてくれます。
見ているだけで、心が元気になります。

幻のコンサートは、映画を見た一人ひとりの心の中で完成していくのだと思います。

一人でも多くの人へ、
マイケルのメッセージが届きますように…。


お読み頂き、ありがとうございました。


* この記事を書くにあたり、長文のため何枚かネット上にある写真を使わせてもらいました。

たくさん使用されている写真なので大丈夫だろうと判断したのですが、著作権について詳しくないため、不安な気持ちでいます。

著作権に詳しい方がいらっしゃいましたら、コメントで指摘して頂けると嬉しいです。
違法の場合、削除します。





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