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DeepL翻訳がすごいという話。英語というスキルの陳腐化。中国語も悪くないかも?

DeepL、最近有名になってきたのでその名前を聞いたことがある人も多いと思いますが、DeepLとはグーグル翻訳などと同様の翻訳サービスのことです。アウトプットの質が非常に高いのです。翻訳技術は各種テクノロジーとの相性もよく、ここ数年飛躍的に進歩している領域の一つだと思います。

ポケトークなど、年々進歩している音声の処理技術と組み合わせたサービスもどんどん出てきていますし、いつの日か、翻訳こんにゃくも現実化するかも知れません。

このような進歩は人類全体にとって素晴らしいことだと思います。また日本にとっては、「日本語」という言語障壁により、読まれなかった各種論文、文書も読まれるようになるなど、他の先進国、中進国と比べて英語力が低いことに起因した不利益が少しずつ解消されていき、大きな恩恵が得られるように思います。

もちろん、これは言語障壁で守られていた部分が競争にさらされることでもあり、特にコンテンツ産業をはじめ、マイナスな影響も受けるかも知れません。しかし日本は現状、情報発信量、発信力<<受信量、受容力という印象があり、この部分が解消されるメリットの方が遥かに大きいのではないか?など楽観的に考えています。

しかしその一方で、多少なりとも英語が付加価値になっている私のような人間にとっては、すこしアタマの痛い話でもあるのです。「語学はツールでしかない」とは昔から言われていますが、よりその時代に近づいています。英語を武器にしたいのであれば、翻訳ソフト以上 and/or 翻訳以外のナニカを身につけなくてはならない時代になっているということです。

翻訳ソフト以上のナニカとは…

語彙力、正確性という観点では勝負になりません。一方、「間」の取り方やテンポ等、そういった領域は、まだまだ人間の方が上手でしょう(もはや英語力ではありませんね)。しかし、このレベルになってくると、正直、純ジャパには厳しいように思います(中には、とんでもない英語力の人もいますが)。

私自身、TOEICで945というそこそこの点数を取得し、社会人になってからは、仕事でも日常的に英語を使用し、アメリカでも働いていました。それでも特に会話については帰国子女、2~3年以上留学をしていた人とは埋めがたい差を感じてしまいます(努力不足、才能不足といえばそれまでですが)。

また、外国語が堪能な人は世界中にたくさんいます。中国で働いていると、英語と日本語が堪能な中国人に多数遭遇します。アジア圏以外では、ベルギー、オランダには4~5か国語操る人が多く、彼らに欧州全域の管理者兼通訳として動いてもらうことが多々あります。

もちろん、日本では、英語力にシグナリング効果はあると感じていますし、キャリア、チャンスを広げることに繋がると思いますが、やはり一部のコミュ力お化け系以外の多くの日本人にとっては、他の知識、スキルと組み合わせで勝負する、生き残っていくのが現実的だと思っています(もちろん価値観や目指す報酬、キャリアにもよりますが、単純労働こそ高い語学力が求められますし、外国人への労働ビザの発給要件は厳しくなるでしょう)。

そもそも英語力は必要なのか?というはなし

日本なら英語ができなくても生きていけますし、仕事だっていくらでもあります(素晴らしいことです)。必要ないのであれば、必ずしも身につける必要もないとも言えます。旅行で使う程度であれば、アプリ、翻訳ソフトで十分対応できます。

むしろ英語学習は過大に評価されているかも知れません。現実に目を向ければ英語以外に身につけるべきこと、もっと大きなリターンが得られることだってあるはずです。時間は有限ですし、本当にやりたいこと、必要なものに使うべきですよね。

英語以外の選択肢

一昨年前、私は「あと3~4年したら、次はアメリカかな…」なんて考えていたら、その翌年から上海行きの辞令を受けました。中国で働くことは考えたこともなかったため、赴任と同時に中国語の勉強をはじめ、一年経ったいま、メールなら外部ともやり取りできる、会話なら、英語を交えながら部下に口頭で指示出来るというレベルです(だいぶゆっくりです…)。あと数年かけて商談に耐えられるレベルまで上げたいと思っています。

そんなこんなで偶然勉強することになった中国語ですが、結果として中国語を勉強しはじめて良かったと感じています。いまは中国への風当たりが強いですが、断交でもしない限り、中国とのビジネス上の付き合いが終わるとは考えにくいですし、特にアジアにおいてその存在感は圧倒的です。中国も少子高齢化という課題を抱えていますが、経済規模が(相対的に)縮小することは考えにくいように思います。

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世界を米国、欧州、中国の三極で考えた時、米国と中国は激しく火花を散らしているのは見ての通りですが、欧州はどうでしょうか。欧州も国によって異なりますが、必ずしも米国と同じ方向を向いている国ばかりではありません。欧州の米国企業に対するデジタル課税、米国から欧州の自動車製造業に対する関税措置など、問題は山積しており、溝は決して狭い、浅いものではないように思います。
個人的には、香港の担ってきた部分を日本が吸収できれば、日本は大きく浮上すると考えています。シンガポールに目が行きがちですが、シンガポールも中華圏に他なりませんしね。バイリンガル教育、法人税の低減等を徹底すれば、金融ハブとしての東京の再興も夢ではないように思います。
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特にグローバルなキャリアを歩みたい人にとって中国語は大きな武器になるように思います。もちろん、米国や欧州の本社で、ガリガリと戦っていけるような語学力、能力、タフネス、学歴、圧倒的な専門性がある人はすこし異なると思いますが、日本のマーケット、日本語の優位性を活かすことを考えると、たとえば米系、欧州系企業の本国やシンガポールにある、アジア太平洋地域(APAC)の管理者を目指すというキャリアが現実的なように思います。

ひと昔前は、米州、欧州企業にも「日本担当」、「アジア担当」というように日本マーケット専門のポジションがあったと聞きますが、今はアジア担当しか残っていない企業が多いように思います(寂しいはなしですが)。そしてアジア担当として活躍するためには、中国、中国語圏は欠かすことはできません。

英語圏の人がラテン語圏の言語を身につけやすいように、中国語は日本人にとって身につけやすい言語です(漢字がわかるのは圧倒的なアドバンテージです)。英語と比較すると学習者が少ないですし、コストパフォーマンスが良い言語と言えます(中国語話者もいっぱいいますし、中国語一本足で勝負しようとすると、文字通りレッドオーシャンがあるのですが)

身につけたスキルがどんどん陳腐化していく大変にきびしい御時勢です。食いっぱぐれることがないように、アップグレードを続けていきたいと思います。

(追伸)
この記事を書いた6月初旬は問題なかったのですが、最近中国のネットワークからDeepLにアクセスできなくなってしまいました。Google、Lineなどと同様にアクセス制限の対象になってしまったようです。DeepLに限った話ではなく、Google翻訳にしても、翻訳サイトは情報管理の観点から問題視されることがありますよね。情報流出を忌避した措置なのかも知れません。以前、中国国外と大容量のデータ共有のため、クラウドサービスを使用しようとしたら、DropBox等の著名なサービスが軒並みアクセスできず、中国資本の百度しか見つけられなかったのですが、同じ理由かも知れませんね(当事者にとってはアタマが痛い問題です。しかも百度は何故か中国語のサービスしかない。)

ではでは


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