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めっちゃわかりやすい発達障害の授業6限目~先生の危険思想とは?~【インクルーシブ教育】

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発達障害のある子は,
生育環境に関わらず,
不安や戸惑いの気持ちを抱くことが多いんです。

どうしよう…
できないかも…
わからない…
やったことないし…
逃げたい…
誰かにやってほしい…

と,新しいことに対してはとりわけ不安に感じます。

確かに,いざやってみれば,
うまくいくこともあるでしょう。

しかし,配慮や支援がないと,
みんなと同じようにやって
失敗することの方が多いのです。

そうなると,「もうやりたくない」と
行動が滞ってしまう。
「くやしいから次はがんばるぞ!」とは,
なかなか考えにくいんです。

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周りの大人,特に学校の先生の中に
この子たちに対して大きな誤解をしている方がいます。

「とまどい・つまずき・とどこおり」から起因する,
困った行動に対して,
いわゆる「やる気の問題」で
すべて片付けてしまう先生です。

が,これは間違いですし,
決してしてはいけない危険な考え方です。
そう,「危険思想」といってもいいでしょう。

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「やる気の問題」は,障害のある子を追い詰めていきます。
「やればできる」という励ましの言葉は,
「お前にはやる気が足りない」と言っているようなもの。
「やる気がない人間」と言われ続けてよくなる子はいません。

イライラ・爆発・落ち込み…と,
まさに二次障害への道へ徐々に進んでしまいます。

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私たちは,
その子がまだできないこと,
練習したり教えたりすればできそうな事,
その「のびしろ」の部分と,

障害や特性ゆえに,その子が困っていること
困っているからできないこと,
やらかしてしまうことを
分けて考える必要があります。

今できない事は,本人が成長するためのアプローチ,
困っている事は困らないようにするための環境調整が必要です。

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本人の成長のためには,指導や努力が必要です。
今ある周囲の環境に
本人が合わせることが求められます。

一方,環境調整は
人の対応を工夫する,
集中しやすい場所を作る,
課題の時間や量を調整する,
その子に合った教え方・取り組み方を工夫する,
その子が使いやすい,わかりやすいツールを活用する,
こういった本人に合わせた工夫や配慮を意味します。

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これはスウェーデンのことわざです。

タンポポはいわゆる健常児。
平均的な子どもたちです。
能力があり,多少の環境の変化にも充分適応できる子どもたちです。
どんな場所にも根をはり,
踏まれても枯れることなく花を咲かせ,
種を飛ばすことができるタンポポと同じです。

一方,蘭という花は,
ずいぶんと咲かせるのに手間がかかるそうです。
温度管理や肥料・水分など,
常に手をかけながら育てていかないと枯れてしまいます。
そのかわり,見事に成長し,花を咲かせたあかつきには,
高い値段で取引きされるほどの美しい花になります。
お店の新装開店に飾られることも多々ありますよね。
この蘭が,発達障害のある子どもたちです。

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適応力の強いタンポポ組の子どもたちには,
たくさん指導して,
おおいに努力を重ね,
成長してもらえばいいのです。
多少の苦労や挫折も成長の糧になることでしょう。

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蘭の子どもたちには十分な環境調整が必要です。
もちろん本人ががんばるための努力も求めていいのですが,
まず大前提にあるのは環境調整・配慮が十分にあることです。
一緒に勉強したり,こまめに褒めたり,
ちょこちょこ休憩も必要でしょう。

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例えば,気が散りやすいお子さん。

目につくところに教材やおもちゃがあれば,
そちらに気持ちがいってしまい,
先生の話を聞くことが難しいでしょう。
そのとき,

「話を聞きなさい」
「集中しなさい」
「よそ見をしてはいけません」

と、本人の努力・成長を求めるよりも,
目につくその教材の棚をカーテンで覆ってしまえばいいんです。
これは物理的な環境調整の一例です。

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障害のある子は,保育園や学校で苦手な活動がたくさんあります。

その苦手な活動に対して,
がんばって乗り越える,
だめでもともとだからやってみる。
…ではなく,

まず,なぜやりたがらないのか?
なんで苦手なのか?

を考えてみましょう。
生まれもっての苦手さ・特性が原因で
うまくできない,やりたがらないのであれば,
それは努力ではなく,環境調整が必要です。

変わるべきはその子自身ではなく周りです。

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がんばればできる?

そうですね…。
努力は確かに大切です。

しかし,障害のある子たちの多くは,
どんなにがんばっても難しいこともあります。
それに関しては,周りが大目に見つつ援助していく必要があります。

もちろん,がんばればできそうなこともたくさんあります。
それはあくまでも楽しく。
楽しくトレーニングしていくことで,身に付いていくのです。
決して「鬼の特訓」ではなくですね。

私たち大人も,実は同じではないでしょうか?

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私たち大人は苦手な事にどう対処しているでしょうか?

がまんして,努力して,克服する場合もあるでしょうが,
それ以外の選択肢をいくつも使っているのではないでしょうか?

学校時代は嫌だけどやらざるを得なかったマラソンも,
大人になれば,やらない人はやらないし,
マラソンは嫌だけど,自転車で有酸素運動をしている人もいます。
苦手なことを他者にやってもらうことで,
社会の役割を分担しているともいえます。

しかし,「先生」といわれる大人は,
ついつい「がんばれ!努力だ!克服しろ!やればできる!」路線のレールを
敷いてしまいます。
強いてしまいます。

そして,がんばってもできない子ども達は,
「逃げる,固まる,ウソをつく」ことに
磨きをかけていくのです。

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配慮や援助は決してズルではないことを示す絵です。

左は3人とも平等にサポートを受けていますが,
試合の様子が見れない子がいます。
サポートが足りないので権利が冒されています。

右はそれぞれの背の高さ=ニーズに合わせたサポートを
それぞれが受けており,
全員が公平に試合を見ることができています。

このサポートの違いはズルいのでしょうか?
いやズルくないです!

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最近はおじさんたちの中にも料理を習う人が増えてきたそうです。

今まで全くやったことがない人が料理を教わるのって
不安だし,簡単ではないのです。

それは子どもたちも同じです。

教える内容をしぼり,
同じ教え方・スモールステップで
こまめに褒め
視覚的に示しながら
わかりやすく説明することが大切です。

これはサポートの基本ですよね。

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たとえサポート付きであっても,

できた!
うまくいった!
褒められた!

という「成功体験」は,まさに体験になります。
一回やってみてうまくいったので,
同じようにやればできる。
それを繰り返しながら,
色々と工夫する余裕も出てくるでしょう。
その結果,できるようになる,身に付くという
よい道筋ができます。

逆に,失敗してしまうともうやる気をなくしてしまいます。
もともと不安なことや苦手なことに
チャレンジする気持ちが弱い子どもたちです。
失敗して「ちくしょう…次は見てろよ」なんて思わないんです。

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みなさんは,その子に対して
どんな大人になってほしいと願っていますか?

人生は人それぞれ。

「普通」というよくわからないもの,
価値変動するものにとらわれることなく,
その子がその子の特性・能力・道筋で自立し,
社会に参加できることが私たちのねがいであり目標です。

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最低限のルールやスキルを身に付けていれば,
普通を目指す事なく,
その人なりの生き方・幸せになる道を
歩いてもいい時代が来ています。

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支援とは,
べったりくっつくのではなく,
その人との一番良い距離を
支援する側がいつも調整しながら
その人の人生に並走していく。
そういうものだと私は考えています。

もう支援が必要ない状態になれば,
より離れて様子を見守っていればいいんです。

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発達障害のある子ども・人たちには理解者が必要です。

そして,何かと心配してくれて,
何かとかまってくれて,
何かと誘ってくれる。
そんな存在が必要です。

その人の苦手なところも,
良いところも理解した上で,
苦手なことを助けてくれて,
良いところはみんなに紹介してくれたり,
それが生かせるような仕事や遊びを紹介してくれたりする人。

それが「サバイバルパーソン」です。

私たちがサバイバルパーソンになるために,
一人でも多くのサバイバルパーソンを増やすために,

そして,危険思想に警鐘を鳴らすために,

今回の記事を書きました。


以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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