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米国金融相場 不可解な局面

最近の米国金融相場は不可解だ。何が不可解か考えてみる。

(1)長期金利が大きく低下している
「利上げ⇒景気後退⇒将来は利下げ⇒それを織り込んで長期金利は低下」
ということで、通常なら不思議はない。しかし、FRBは、今回は、景気を犠牲にしても(景気後退しても)物価抑制の為に利下げはしないと言っている。
パウエル議長が何度も述べていることを思い出してみよう。
「景気を抑制する政策=制約的な金利水準は当面の間必要となるだろう」
歴史は時期尚早の金融緩和に対し強く警告
物価安定の回復にはまだ長い道のりがある」
「経済活動の伸びが長期トレンドを大幅に下回る水準で持続する必要がある」

市場は、80年以降ディスインフレの時代の経験で判断している。
パウエル議長は70年代のインフレ時代の金融政策を思い描いている。

(2)株価が不当に上昇に転じている
政策金利が上昇する中で長期金利が下がるということは、景気後退を予想しているからに他ならない。つまり、企業業績の減益(epsが低下)を予想している。
株価は、epsとperの積なので、epsが低下すると予想しているのに、株価が上昇するのはperが拡大すると予想しているということになる。
perは金融状況を反映する(金利の逆数になる)ので、perが拡大するということは政策金利が低下すると考えているからだ。perの拡大は利下げの少し前から始まることが多い。少し前というのは、どんなに長くても半年程度前ということだ。
ところが、市場は利下げは1年後と考えている。たぶん、FRBはもっと遅いと考えているだろう。普通なら、こんな時期にperの拡大が始まるわけはない。
何か、他に理由があるのだろうか? それがわからないので不可解なのだ。

以上のように考えてみると、不可解な相場の背景は「急速な利上げで急激な景気悪化が起こり、それがFRBに利下げを強いるだろう」と市場が考えていそうなことだ
たとえ、今の雇用状態が堅調でも、消費も堅調でも、比較的早期に急激に悪化するだろうと考えているようだ。FRBが何と言おうと、急激な景気悪化、インフレ沈静が起きると考えているのだろう。


市場にこういう反応を起こさせているのは、あまりに早い利上げだ。80年代以降では考えられない速さだ。
しかし、FRBはたと景気が後退しても、早期の利下げは70年代後半同様の悲劇を生みかねないと考えている。
グラフを見るとわかるが、70年代は政策金利の変動に比べ、10年金利の変動は小さかったのだなぁ、と思う。

パウエル議長言っているように、80年代以降経験したことがないようなインフレに、市場も戸惑っている。
インフレは株価にプラス論もでている。
金融引き締めで実質成長率はマイナスでも、名目成長率は高まるかもしれないからだ。
今、単価100円で100個販売していれば、売り上げは10,000円だが、これが、
販売戸数が90個になっても、単価が120円になれば、売り上げは10,800円になる。株価は名目なので、インフレは株価にプラスということだと。

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