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ティーチングもトレーニングもやる言語コーチングのこと

ここ数年でコーチングの情報は格段に入手しやすくなりました。KEC の受講生にも「コーチングを受けたことがある・学んだことがある」という人が増えてきています。なかには「コーチング=ティーチング(教えること)をしない」と思っている人もいるようです。確かにそういう考え方もありますが、KEC のコーチングではティーチングをやります。トレーニングだってやります。

国際コーチ連盟認定 言語コーチになるためには、講座に申し込む時点で「言語教育の資格を持っていること」や「3年以上、言語を教えた経験があること」という条件をクリアする必要があります。まずはティーチングの知識と経験を積み、それからコーチングを学ぶ。言語コーチングはティーチングやトレーニングと対立する概念ではなく、両者を含んでいるという考え方です。

ティーチング経験者を対象としているので、言語コーチ講座では、たとえば文法そのもの(例:品詞の区別、条件の作り方、関係詞の使いどころ)や文法の教え方を教わる機会はありません。その代わり、どうすればいわゆる伝統的なティーチングを “コーチング化” できるか学びます。

コーチは学習者の言ったことや書いたものをもとに、学ぶ必要のある事項を見極め、学習者の母語やこれまでの学習経験を踏まえて最適な情報を最適なタイミングで与えます。教わっただけで使えるようになることはまずありませんから、トレーニングも重要。少し形を変えて力を試したり、学習者にとって継続しやすいメニューを考えたり、時間をおいてどれくらい定着したか確認したりします。

ティーチングやトレーニングを排除しない以上、言語コーチングは純粋なコーチングではないと考える人もいるでしょう。でも、言語コーチがティーチングもトレーニングもしなくなったら、学習者は迷ったり遠回りしたりすることが増えてしまいます。他の分野と違い、言語には文法などのルールや “正用・誤用” といわれる範疇があるからです。言語を学ぶということは、その言語を使っているコミュニティーに後から入れてもらうこと。すでにある作法を教わり、それに則って行動しないと通用しないのです。だからコーチはティーチャーと同様に教える言語のルールやコミュニティーの作法を知り、常に知識をアップデートしておく必要がありますし、トレーナーと同様に学習者の心身の状態を見て、安心・安全で着実に成果を感じられる環境を整える責任があります。

特に、英語を学ぶ日本人のように母語でのコミュニケーション経験がある学習者の場合、やみくもに当たって砕けるより、先に知識を頭に入れてから練習にうつる方が効率が良いのです。仕事や生活で英語を使う必要に迫られているなら、間違いを繰り返している余裕はありません。また、知識や経験が豊富な “先輩” に「できている」と認めてもらうと、学習者は自信ややる気を保ちやすくなります。

なにより、学習者のメリットをいちばんに考えるコーチなら、自分の持っている道具の出し惜しみなどしないはずです。コーチングには有効なテクニックやモデルがたくさんあり、コーチはセッションで対話する中で「ここぞ」というときに道具を懐から出します。私は言語コーチングにおけるティーチングもトレーニングも、その道具のひとつと考えています。


Photo by Torsten Dederichs on Unsplash

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