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「ワルイコあつまれ」ー 冒険は新しい地図と共に

その朝、いつも通りにEテレをつけていた視聴者は、突然始まった奇妙な番組にざわめいた。2021年9月13日朝8時25分。そこに映し出されたのは、ポップな色合いの部屋で向き合う、かつてフジテレビで放送されていたバラエティ番組『サタスマ』の人気キャラクター「慎吾ママ」と、現在NHKで放送中の大河ドラマ『青天を衝け』の「徳川慶喜」の姿だった。

番組の名前は『ワルイコあつまれ』。番組表には「大人も子供も楽しめる新教育バラエティ」という記載しかなく、全く前情報なしの、いわゆる「ゲリラ」放送だ。
放送中にNHK広報局がツイートしたところによれば、同日夜7時25分に再放送があるということだった。

番組放送中に「慎吾ママ」がツイッターの国内トレンド1位、「#ワルイコあつまれ」が同2位と、SNSを中心にあっという間に大きな話題となり、それを追うようにして出された複数のネットニュースでの告知もあってか、同日夜の再放送にも大きな注目が集まった。
実際に夜7時25分~7時55分の再放送時、オンエア終了後の午後9時には「#ワルイコあつまれ」がツイッターの世界トレンド1位となり、後日放送された第2回(9月20日夜19時25分~)放送時にも同じく世界トレンド1位を記録した。
NHK広報部によれば、『ワルイコあつまれ」は単発の放送で新しい企画に挑戦する「開発番組」として制作されたため、PRも実験的手法を取って事前告知無しに。元々2回の放送予定のみで、3回目以降の放送については「現段階では決まっていません」という。
しかし下記でNHKの公式アカウントが自ら嘆くように、これだけの話題性と番組自体への高評価を考えると、いつまでも「続編は未定」のままでは視聴者が納得しないだろう。

『ワルイコあつまれ』は

・一切の予告なしに放送されたこと。
・今放送中の大河ドラマに出演中の役者が、その役柄のままで出演したこと。
・民放テレビ番組発祥のキャラクターをNHKで演じたこと。
・SMAP解散のきっかけの一つとなったと言われる報道をした『週刊文春』の2016年当時の編集長が出演したこと。
・稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんが前所属事務所を辞めて以降、初となる3人揃ってのEテレ出演となったこと。

と、これだけ挙げても異例づくめだ。それにはもちろん戦略だとか話題作りだとか、制作側にも色々な思惑があるはずだ。
また、これまでの彼らを巡るテレビ局の対応を考えるならば、まだまだここまで秘密裏に進めないとならない理由があるのかと穿った見方もしたくなる。

ただ、本来はそんな思惑や裏事情などとは無関係な一視聴者である私には、第一報を聞いた時につぶやいたこの感想が全てだ。

今回の『ワルイコあつまれ』で私が感じた、テレビの前の人たちを楽しませること、ワクワクさせることにどこまでも貪欲な3人と、彼らを支える人たちの在り方や姿勢は、紛れもなくSMAP時代から変わらない「彼ららしさ」だ。
そしてかつてテレビは、そんな彼らと共に生き生きと新しい地平を拓く良き相棒だった。

それがすっかり失われてしまったかのように思えていた今、新しい冒険へと挑むEテレが、3人と共にその新しい地図を広げたこと。その挑戦に心からの拍手を送る。そして、多くの視聴者を喜ばせたこの冒険がこれからも続くことを切に願う。
間口は広く親しみやすいのに、新しくて尖がっている。
視聴者も出演者も制作者もテレビ局も幸せにする。
彼らと自由に遊ぶテレビよ、帰ってこい。


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惜しくも見られなかった!という皆さまに。

NHKプラスで『ワルイコあつまれ』2回目を配信中です。ぜひお早めにどうぞ。


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