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#復興に向けて手を繋ごう がニュースになった日

2021年2月5日、NHK公式HPの「News Up」のコーナーに一つのニュース記事が掲載された。

『毎週月曜日の夜10時ごろ。ツイッター上には東日本大震災の復興を支援するツイートが相次いでいることをご存じでしょうか。ツイートを見ると解散したSMAPのファンがつぶやいているようです。なぜ、毎週同じ時間帯に?』
から始まるこの記事は、かつて月曜夜10時にフジテレビ系で放映されていた「SMAP×SMAP」の時間帯に、番組が終了した2017年以降、SMAPファンが中心となって続けている「活動」について紹介している。

私はこのニュース記事の掲載には、大きな意味があると思っている。

一つ目は、「被災地を忘れないこと」の大切さが明確に伝えられたこと。
発生から10年を迎える東日本大震災は、決して過去の災害ではない。
「復興五輪」が喧伝される一方で、本当の意味で「被災地」に寄せる思いは日に日に薄れていく中で、東日本大震災をはじめ、その後の熊本・大分地震や毎年のように各地で起こった多くの水害などを含め、未だ災害後の苦しみは続いているし、「復興」は完成していないことを改めて発信する意味は大きい。

二つ目は、宮城県の南三陸ミシン工房が紹介されたこと。
南三陸ミシン工房は、震災後、寄付されたミシンを使って仮設住宅で小物などを作って販売していた女性たちと彼女たちを支えるボランティアが立ち上げた団体で、その活動自体が、仕事と生きがいを生む復興支援の意味を持っている。
もちろん今回紹介されたことも、その活動を後押しすることになるだろう。
記事では、「被災地」に寄り添う思いが繋がって、また次の動きを生んでいる様子も伝えている。
南三陸ミシン工房についてはこちら

三つ目は、ネットのみのニュースとはいえ、公共放送がSMAPファンによる活動を取り上げたこと。
(この活動の詳細については、以前併記事でも書いているので手前味噌だが、ぜひご覧いただきたい。
「月曜22時スマスマの時間です。」ーファンが繋ぐ思いと支援

例えば、解散前の37万筆署名やクラウドファンディングによる新聞全面広告、SNS連動番組での記録的なリアクション数や彼らが関わる商品に対する高い購買力のように、集中的にパッと目立つ結果を出すことは世間的にも知られているファンたちではあるが、このような地道な活動を続けていることは案外知られていない。
しかし「忘れないで思い続ける」ということの難しさを思うと、この活動の尊さがしみじみと迫ってくる。

今回のニュース記事では触れていないが、そのファンの活動の発端が、あの2016年1月18日の残酷な生謝罪の後も、解散を巡る憶測が飛び交っていた時期も、2016年年内での解散が発表された後も、そして結局、ひとことも思いを伝えることができないまま終わった番組最終回のエンディングでも、変わることなく復興支援のために頭を下げる彼らの姿と、そこに込められた思いであったことも忘れてはいけないと思う。

そして四つ目は、この記事が、もしかしたらSMAPを巡るテレビ局の対応のエポックメイキングになる可能性だ。

今回の取材を受けた南三陸ミシン工房の方が、その内容について以下のツイートをしている。

この方が、あえてそう尋ねずにはいられなかったように、SMAP解散以降、とりわけ稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんの前事務所退所以降、「SMAP」という名前が出て当然の場面でそれが使われないという奇妙な「ムード」は、広く知られてきた。

しかし今回は、取材時の約束通り「SMAP」の文字が掲載されたばかりか、記事内には、NHK制作番組『プロフェッショナル仕事の流儀 SMAPスペシャル』から、SMAP5人の画像が添えられている。
2017年以降、ネットニュースのゴシップ記事に彼らの画像が添えられることはあっても、地上波テレビ局が、自社で所有しているはずの彼らの画像を不自然に出さないという状態が続いたことを考えると、これは大きな変化だ。

本来、公共性の高い記事には肖像権の縛りは緩く、しかも自社の所有する画像だから使えるのが当然なのだが、SMAPに関しては、その当たり前がなぜかずっと通らなかったように思える。
それが変わった。

公正取引委員会が「注意処分」を出しながらも、前事務所がテレビ局に対してかけた不当な「圧力」についての明確な証拠を挙げられなかったのは、おそらくこれまでの支配構造の中で身についてしまった忖度で、もはや具体的な指示や命令がなくても、局側が事務所の意向を汲んで行動してしまうという状況だったからだろう。
しかし、そのような構造から解放されれば、当然、テレビ局側は自社の権利を普通に行使するようになる。

だから、この一つのニュース記事は、そんな変化の現れとして大きな意味を持っている。

さて、次に続くのはどこだろう。


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