Dir en grey - MACABRE(2000)

ヴィジュアル系の重鎮、Dir en greyの2ndアルバム、MACABREです。

個人的な話をすると、このアルバムは最新作の「The Insulated World」を除いて僕が一番最後に手にとったアルバムでした。
なんか勝手に難解なイメージを持っていてとっつきにくかったんですよね。
でも一応全ての作品を網羅しておきたいなと思い、TSUTAYAで借りたのを覚えています。

しかし、蓋を開けてみれば難解なのはジャケットだけでした。
収録曲はキャッチーなものがほとんど。メロディーも明るいものが増えました。前作にはシングル曲である「予感」だけが明るめの曲だったので、一つ大きい変化だと言えるでしょう。
「太陽の碧」なんか僕が当時ファンだったらこの路線でこのまま進むんだろうか、と心配になるレベルの曲ですね。
また、前作にあったTHEコテ系な雰囲気、つまりこのバンドの耽美な側面がほぼ消えたようにも感じます。京(vo)の歌唱にはまだその名残が残っていますが、楽器隊の演奏や全体的な雰囲気は泥臭くパンキッシュに変化しています。「羅刹国」や「Hydra」はスクリームが入り、曲調やドラムのツッタンツッタンというフレーズもハードコア・パンクに近いものを感じさせます。唯一「脈」のAメロなんかは前作に主録されていても違和感なさそうですが、サビのメロディーは完全にこのアルバムのものです。
一方、曲中のセリフやエフェクトは健在です。むしろ前作より竿隊とドラム以外の音が増えているという印象を受けます。「egnirys cimredopyh +) an injection」や「Berry」の間奏などチャレンジ精神を感じます。個人的には「蛍火」はそういう今作の変化が一番わかりやすく出ている曲だと思います。和のイメージを表現したフレーズが顔を覗かせたり、バイオリンが間奏で登場したりと今までなかったタイプのナンバーに仕上がっています。そして今後何作かに渡ってこのタイプの曲が出てくることを考えると、やはりこの曲は一つの転換点だと考えられるでしょう。
そして今作にもある超尺曲。今作は「ザクロ」と「MACABRE -揚羽ノ羽ノ夢ハ蛹-」の二曲です。前者はしっとりめのメロディーが展開するバラード。しかし、京のボーカルから怨恨の念がにじみ出ているので、生ぬるさはありません。こういう刺激を切らさないところがDir en greyの魅力の一つですよね。後者は打って変わって、複雑な構成のミディアムテンポの楽曲。昨今のDir en greyの超尺曲と似たような構成をしています。ただ疾走パートがないのでゆったりには感じますが。どちらの曲にも伸びやかなギターソロがあるのも個人的には好きなポイントです。優雅なギターソロは長尺曲の特権ですからね。

僕が個人的に好きな曲は「理由」です。この曲、他の今作の収録曲とは違い、バンドサウンドを基調としたサウンドに京が歌う低めのメロディーが乗るというあっさりした構成になっています。しかし、シンプルだからこそ、ライブにおける京の感情が伝わりやすい曲になっています。全編クリーンですし、京が歌うメロディーがスッと体に入ってくるのがまた気持ちいいんですわ。京の感情がクリアになる、という点では「ザクロ」も外せません。特にこの数年後に披露された時(Biltz 5 days)のパフォーマンスが最高です。曲の後半になるにつれてだんだんメロディーを追わなくなり、叫び倒れ込む京に対して淡々と進む演奏。この対比がより京の狂気を際立たせています。こういうクレイジーなボーカルが好みの僕にはブッ刺さりますね。

というわけで、Dir en greyのMACABREでした。前作と比べると、急に個性を感じる仕上がりになっていました。それもまたいい方向に向かっているのがいいですよね。

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