月300時間以上働く同志たちへ、伝えたいことがある今日この頃
約2ヶ月前、僕はコンビを解散した。
お笑い漬けの毎日だった僕は、急に何をすればいいかわからなくなった。
解散するまで、特にこの1年間は、毎日のようにネタを作り、ネタ合わせをしライブに出る、遊びの誘いを断り、バイトの数を最小限にし、何よりもお笑いを優先してきた。
そんな毎日が急になくなった。
有り余る時間だけが僕に与えられた。
そして思い立った。
「よし、とりあえずめっちゃ働こう」
お笑いに専念していたときは、ろくにバイトに入れず月10〜15万円ほどで暮らしていた。
しかも、急にオーディションやライブが入ることもあるので、バイト先はすこぶる融通が利くところでしか働いてなかった。
だが、今の僕は何でもできる。
一旦お笑いの方は休憩して、2.3ヶ月必死に働こう。
そうすれば何か見えてくるものもあるかもしれない。
そんなこんなでめっちゃ働くことを決意した僕だったが、最初は週5ぐらい入って月30万ぐらいを目標にと考えていた。
だが、僕は僕をみくびっていた。
僕は自分自身、極端すぎる人間だということを忘れていた。
一度働きだすと、かかったエンジンは止まらず、体が勝手に馬車馬のように働きだしたのだ。
新しく固定のバイトを増やし、7つの日雇いバイトのアプリを使いこなし、少しの隙間時間が空けばそこにバイトを入れ、予定をバイトで埋め尽くした。
スケジュール帳でパズルをしているかのようだった。
そんなことをしていると、日勤からの夜勤からの日勤という過酷な勤務になることもあり、自分が今どこでなにをしているのかわからなくなるときもあった。
こないだなんかはもう立ったまま電車で寝ていた。
身を粉にして休みなく働いた結果、気付けば月300時間以上も働き、固定のバイト先は4つに増えていた。
当初予定していた月30万を優に超え、普通のアルバイトだけで約45万稼いだ。
この0か100かしかない性格に自分自身、狂気を感じた。
先日、朝から夜まで働いたあと、朦朧とした頭で次の夜勤の仕事に向かっていた。
ふらふらした足取りで歩いていると、楽しそうな男女4人組とすれ違った。
すれ違う瞬間、男女たちの会話が耳に入ってきた。
「ねーなんでそんなに働くの〜?」
僕に言われているかのようで、振り返ってしまった。
すれ違うのは一瞬なのに、その言葉だけが鮮明に鼓膜へ入ってきた。
楽しげで甲高い女性のその声は、僕の頭の中で何度もリピートされた。
何度もリピートされた結果、僕の頭には「うるせえ」という言葉しか浮かんでこなかった。
この「うるせえ」とは、今に見てろ、これがのちの成功に繋がるから、黙っとけ、みたいな意味合いを全部詰め込んだ「うるせえ」である。
でもたしかに、なんでそんなに働くのかと聞かれるとすぐに答えが出てこない自分がいる。
たぶん、何か不安なのだと思う。
思えば、お笑いに専念しているときも似たような感じだった。
まわりよりも結果を出さなければいけない、もっとネタを作ってもっとネタ合わせしてもっとライブに出なければならない、ずっとお笑いのことを考えていないと不安で、勝手に自分を追い込んでいた。
そのときはそれが当たり前で気が付かなかったが、今考えると正気の沙汰ではなかった。
肉体的にも精神的にも相当やられ、心に余裕がなくなっていたと思う。
大好きな蕎麦とカツ丼のセットを食べても、味がしなくなるほどに。
もうあんなことは二度とやれない気がする。
お笑いがすきで始めたのに、最初はあんなに漫才が楽しかったのに、いつしかそれを忘れ、重い使命感に駆られていた。
まだいけるまだやれると追い込み続けた結果、色々と取り返しのつかないことになった。
何事もほどほどが大事で、楽しくやるのが1番だということを、この一年で思い知らされた。
最近よく「そんなに働いて大丈夫?もっと休んだ方がいいよ」と言われることが多々あるが、お笑いに専念していたときと比べると、こんなの屁でもない。
月300時間働くのなんて僕からすると余裕のよっちゃんなのである。
たまに立ったまま寝たりたまに朦朧としながら歩くことがあるぐらいで、気持ち的にはまだまだやれる気がしている。
だが、これだとあのときの二の舞になるので、これぐらいで留めておこうかなと、ほどほどにしとこうかなと、最近は思っている。
もうあの頃の僕じゃない、今の僕はセーブすることを覚えた新しい僕だ。
いつ自分がだめになるかは自分ではわからない、自分のキャパはそのキャパを超えたときに初めて気付く。
まだいけるまだやれると思っていても、キャパオーバーになるときは突然やってくる。
そのときになってからでは遅い。
だから、皆にも気を付けてほしい。
まだやれると思っているぐらいで留めて、そのくらいでほどほどにしてあげてほしい。
心に余裕がなくなる前に、自分を労ってほしい。
月300時間以上働いている全国の人へ、もしくはそれと同等のことをしている人たちへ。
これ以上追い込んでも何も良い方向に進まないから、無理矢理にでも休んで、毎日を楽しいと思えるように過ごしてください。
自分の1番の味方は自分なのだから、自分が自分を労ってあげないと、自分が可哀想です。
さて、そんな僕の今日のシフトはというと、24時間勤務の4時間休憩で実働20時間といったところだ。
あれ、おかしいな。
セーブしているはずなのに、なんだこの過酷勤務は。
よし、じゃあ今日はカツ丼と蕎麦を食べて自分を労ってあげることにしよう。
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