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聖なる夜に何を想う


今年もやってきた。

いや、よくぞやってきてくれた。

この忌々しいイベント。

そう、クリスマス。

よくぞやってきてくれたとか言ってるくせに忌々しいとは何事や、矛盾しとるやないか、と思ったそこの人、大丈夫、ちゃんと今から説明するから。

忌々しいし腹立たしい、でも、待ちわびてしまうほどに心が躍る。
好きな気持ちと嫌いな気持ちが拮抗し、その狭間で揺れる。
僕にとってクリスマスとはそういう日なのだ。


思えば、小さい頃はクリスマスに対して良いイメージしかなかった。

我が家では、クリスマスの2週間前ぐらいから欲しいものを紙に書いて、リビングにある棚の引き出しに入れておくのがルールだった。
当日は、サンタさんが入ってこれるように窓を開けておく。
うちには煙突がないから。

これは全部お母さんが教えてくれたこと。

サンタさんのためにこうしなさいって、もっとこうした方がいいよって、ゲームのソフトとかはいいけどゲーム機とかは流石にサンタさんもきついと思うよって、サンタさんが僕に欲しいものをくれるコツを色々と教えてくれた。

その甲斐あってか、サンタさんは毎年やってきた。
僕が願ったものをちゃんと枕元に置いていってくれた。
でもきっとそれは、僕が良い子にしてたから。

一度だけオーダーしたものと違うものがきたことはあったけど、たぶんそれは僕が良い子にしてなかったから。
もしくはサンタさんがプレゼントを配り間違えたか。

プレゼントをくれただけありがたいと思っていた。
だって、サンタさんからすると大荷物を抱えながら各世帯を1日でまわらなければならない、こんな大変なことはないのだから。
それを思うと、プレゼントを配り間違えたぐらいで躍起になってはならない、子供ながらにそう思えた。

でも、配り間違えたとしたらもう1人違うプレゼントをもらった子供がいることになる。
その子にはほんとに申し訳ないと思っている。
だって、ほんとはオレンジレンジのアルバムがほしかったのに、意味わからんWiiのソフトが届いたはずだから。
その子がWiiを持っていなかったと思うとゾッとする。
僕は幸運にもCDプレイヤーを持っていたので、オレンジレンジを聴きまくったというのに。

いつもクリスマスは食事も豪華だった。
チキンにケーキはもちろんのこと、和・洋・中なんでもありだった。
毎年、親戚たちと集まっては夜中までパーティをした。
ご飯を食べながらジュースを飲めるという1年で数回しかないチートデイだった。

うちの実家は、クリスマスにとんでもないほどの装飾もしていた。
これでもかというぐらい外に電球を張り巡らせ、屋内もツリーやライトで明るくしていた。

だから、今でもイルミネーションを見ると暖かい気持ちになる。
特に、ちょこっとだけ装飾している家とかを見ると心がポワポワする。
街の店や木に装飾されているものを見てもあまりポワポワしないのに(ちょっとはするけど)。


これが、僕がクリスマスを好きな理由。

この時期にクリスマスソングを聴くと、子どもの頃のイメージで、今でも心が踊るのだ。


さて、ここからは僕がクリスマスを嫌いな理由。

それは、大人になるにつれてクリスマスが寂しくなっていったこと。

サンタさんはこなくなったし、親戚たちとのパーティもなくなった。
家の装飾も年を追うごとに減っていった。

そりゃサンタさんは大人に構ってられないし、親戚たちも忙しい。
従兄弟たちはみんな結婚して子どももいる。
家の装飾だって誰が飾って誰が片付けるんだって話になってくる。
そんなことはわかっている、そんなことはわかっているけど寂しいじゃないか。


大人になるということは、される側からする側にならなければいけないということを知った。

大人になれない僕は、いまだに毎年ひとりでチキンを食べているのだが、喉が詰まりそうなほどの虚しさが押し寄せてくる。

じゃあ彼女でもつくればいいじゃんって声が聞こえてきたので、もう一度だけ言わせてもらう。

僕は、大人になれないのだ。


僕に恋愛というとてつもなくだるいものを許容できるキャパがあれば、彼女なんか途切れることなくつくっていることだろう(先日、彼女いない歴9年目に突入しました)。

みんなちゃんと恋愛して、別れたりくっついたり紆余曲折してなんだかんだ結婚したりして、ほんと大人すぎるってまじで、なんでそんなことできるん。


先日、大人になれない友達と散歩していたとき、こんな話になった。

僕「なんでクリスマスって彼女と遊ばないけんのかな?なんでレストランとか予約したりプレゼントとか渡したりせないけんのかな?(ばかにしてるとかじゃなくて本当に素朴な疑問)」

友「、、なんでやろなあ」

僕「サプライズとかされてほんとにうれしいんかな?」

友「実はうれしくないやろ」

僕「よね」

友「俺あれ(クリスマスイベント)があるけ彼女つくれん気がする」

僕「絶対そうやん」


こんなやつらに彼女できるわけないやん。

こんなことをいちいち考えず、大人になれたらどんだけ楽か。

まだサンタさんがやって来てもいいぐらいに、僕たちは子どものままなのだ。

でも、自覚はある。
僕たちの方がやばいっていう自覚はあるから彼女がつくれないのだ。

クリスマスに出歩くカップルを見て微笑ましいなと思ったりはする。
でも、よくあんな人混みのなかをわざわざ行く気になれるなと思ってしまう。

ここでも微笑ましさと嫌悪感が拮抗しているのだ。

好きと嫌いの狭間で揺らいでいるから、虚しさが押し寄せてくるとわかっていても毎年チキンとシャンパンを買ってしまう。
大人になってもクリスマスを精一杯楽しもうとする抵抗が、虚無感となって返ってくるのだ。


これが、僕がクリスマスを嫌いな理由。

終盤はただの恋愛不適合者を露呈させてしまっただけかもしれないが、クリスマスについてはすごく色々な感情が交差しているのだ。


さて、今日は12月24日、世間では今日をクリスマスイブと言うらしい。
街はカップルやイルミネーションで賑わっている。
今頃サンタさんは明日の準備に追われているころだろう。


今年のクリスマスは、僕は何を想うのだろうか。

やっぱりクリスマスはいいなって思うのだろうか、はたまたやっぱりよくないなって思うのだろうか。

明日の自分に聞いてみないとわからない。

まあ明日はめちゃくちゃバイトを入れているのだけれど。
クリスマスに浸る余裕なんかないのだけれど。

まあなんにせよ、今年も無事クリスマスを迎えられそうでよかった。

それが答えなのかもしれない。


でも、メリークリスマスは言わない。

僕はまだ、大人になれないのだから。

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