読書感想#19「詩のトポス 人と場所を結ぶ漢詩の力」

さまざまな漢詩を、洛陽や長安など、場所ごとに区切って紹介する一冊です。

私個人の好みですが、華やかな都の様子より、涼州のような中華から見て辺境の地を歌う詩に惹かれました。有名な涼州詞の最初の「葡萄美酒夜光杯」の文字の並びの美しさにはため息が出ます。「ブドウのびしゅ やこうのはい」と日本語で読むのもいいですが、やはり漢詩なので中国語の音で味わいたくなります。(ちなみに現代中国語の音で書くとしたら、プータォメイジゥ イェグヮンベイ、となります)

また、中国各地の地名の中に混じって江戸も紹介されていて面白かったです。
幕末に関する小説を読んだ時にも思ったのですが、江戸や幕末の日本人と今の日本人は全く別の生き物だなと思いました。いまの日本に漢詩が書ける人などそうそういないと思います。それどころか、日本語でも、花を見て詩を紡ぎたいと思う人もそうそういないのではないでしょうか。現代はスマホの写真でなんでも残せる時代ですが、写真で撮ることに満足して、感動をじっくり味わうという気持ちが薄れてるような気がします。


この記事が参加している募集

#読書感想文

191,896件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?