読書感想#7「司馬遼太郎短篇全集7」


もともとこの読書記録を始めたのは、乱読の日々で読んだはいいが内容を忘れてしまいがちだったので記憶をとどめておきたいと思ってのことだったのですが、私のような無名のものの雑記帳にも通りすがりに読んで、いいねを押してくれる方々がいてありがたいなと思っています。これからも細々と続けたいです。

司馬遼太郎さんの1963年の期間の短篇が収録されている巻です。
「割って、城を」という話では、茶の世界の底知れなさを感じました。
名物が生まれる過程というのも書いてあって面白かったです。由緒があるかどうかではなく、名人が「これは名物だ」と言ったらただの茶碗も名物になるとは、そんな自由でいいのかと呆れつつも芸術の世界はえてしてそういうものかもしれないと思いました。その物自身のクオリティよりも、推薦する人物が誰かという付加価値に惹かれるということは現代においてもあるかもしれません。

「前髪の惣三郎」と「胡沙笛を吹く武士」では、新撰組に翻弄された若者たちが描かれていると思いました。惣三郎は、色狂いの気こそありましたが、時代や場所さえ違えば死ぬほどの罪ではなかったと思います。鹿内は、笛を吹くのが好きな、東北から出てきた純朴なただの若者だったのが、新撰組という時代の流れで生まれた組織に巻き込まれ儚く散っていった様が切なく思いました。

「軍師二人」では、大阪の陣を舞台に真田幸村と後藤又兵衛の散り際が描かれます。幸村と又兵衛が実践的な策を献策しているのに、戦を知らない、戦に疎い淀君とその取り巻きに決定権があるのは、会社で例えると現場を知らない上層部の役員がいいように振る舞う倒産寸前の会社といったところでしょうか。
もはや、勝ち負けではなく、より良い死に様を見つけるために戦うという悲壮感に滅びゆく者の美を感じました。


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