読書感想#22「長い冬」

「長い冬」というタイトルより、同シリーズの「大草原の小さな家」のほうが有名で通りがいいかもしれません。時はアメリカ開拓時代。ローラたち6人家族が、長く厳しい冬を生活の知恵を絞りながら忍耐強く生き抜いていく様子が描かれた物語です。ただ空想で書かれたわけではなく、作者のローラ・インガルスさんの少女時代が元になっているので、描写の細かさやリアリティの迫真さが輝いていて、長めの物語ですがあっという間に読んでしまいました。空想の魔法物語よりもある意味ドキドキする物語かもしれません。

約150年前のアメリカですから、もちろん電気や水道など今の生活に当たり前のものは何もありません。子どもたちも、長い越冬中は遊んだりはせず、家の手伝いをするか勉強をするかです。
食べ物もストックが尽きてくると毎日同じパンやジャガイモなどで、残りわずかな食糧に悩みながらのやりくりの生活です。現代の私たちから見たら、信じられないくらい不便で苦しい生活なのですが、頼もしいお父さんとお母さんが生きるための知恵で日々を切り抜けていき、子どもたちも協力して一家で団結して生きていく様子に静かな感動を覚えました。闇の中荒れ狂う吹雪という、黒と白のイメージの無彩色の外の世界と、お母さんの作る美味しそうな料理や家の中の温かな火の光の有彩色との対比が、文章から伝わってきて絵画的な味わいも感じました。

この物語は、最初に農地から越冬のため街へ引っ越して、学校などにも行きますがほとんどが家の中でこもって吹雪をやり過ごす話です。色々な場所へ旅したりする冒険物語ではないのに、なぜか心を捉えられてこの先どうなるのだろうと気になる不思議な魅力があります。
何気ない日々の仕事や生活の一つ一つの小さな出来事も、客観的に見たら十分に物語に満ちているものなのかもしれません。



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