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ボカロV系カバー祭2023秋 / Royz「THE BEGINNING」制作秘話


ボカロPとして、間違いなく一歩踏み出せた2023年。
カバー曲となりますが、今年最後の投稿作品の解説記事となります。
お忙しい中この記事を読んでくださっている方々、ありがとうございます。


■選曲経緯

年2回の頻度で開催されている、ビジュアル系にまつわる楽曲をカバーし合う
ニコニコの人気投稿祭「ボカロV系カバー祭」

私は今春、初めて参加させて頂きました。
その際のカバー曲はPENICILLINさんの「ロマンス」です。

※制作秘話はこちら:
https://note.com/ke_nya_p/n/nb5486ac02254

ボカロPとして記念すべき初のカバーは、思春期に
90年代ビジュアル系に洗礼を受けた者として、まさにBACK TO BASIC。
ある意味90年代V系の象徴でもある楽曲をカバーさせて頂きました。

そしてこの制作で得た経験を、オリジナル曲に還元したのが
今夏リリース「どうか」です。
自分の解釈で、90年代のV-ROCK/J-ROCKを頭から爪先まで意識し制作した楽曲です。

※この曲の制作秘話はこちら:
https://note.com/ke_nya_p/n/ndefdce06b7c1

まだまだ未熟な点は多々ありつつも、自分の原点を
カバー/オリジナル共に表現できたことは、大きな一歩でした。

そして今回の投稿祭。
選曲について、原点とは違った視点で脳内会議を繰り広げる今夏。
その中で頭に浮かんだことは、ズバリ。

・バンド活動時代に憧れた方々の曲にアプローチしたい
・今の自分がまだ浅い、モダンな感性を養いたい

青春時代の憧れの存在は、今でも無類の輝きを放っていますが
私がバンド活動をしていた時代も、ある意味青春であって
その時代に天上の世界で活動されていた方々も、まさに憧れでした。

ちょうど2010年半ば。
その時代からずっと天上を駆け抜けていたバンドのひとつがRoyzさんです。
0からのスタートで、対バンやリリースを重ねつつもしのぎを削っていた
当時の自分達にとっては、間違いなく目指すべき存在でした。

当時目指していた姿とは異なりますが、ソロでの音楽活動を
ある程度軌道に乗せることができた現在、あの当時への想いを込めたい…
そんな気持ちが沸き上がるばかり。

実は公式スコアを、以前購入したことがあり
その中から選曲を絞ることに。
熟考の上「THE BEGINNING」を選曲しました。

近未来へ誘うシンセサウンド、
コミュ力お化けよろしく、メインリフと絶妙な相槌を打つSE、
変幻自在に躍るリズムパターン、
陸空を駆けるベースライン、
切れ味とLRの阿吽の呼吸で魅せるギター、
そして切なくも力強く、ラップや多重コーラスをはじめとする
多才な表現に溢れたボーカルアプローチ。

2010年代のモダニズムに溢れたこの楽曲は
今の私にとって、これ以上にない習作となることを実感しました。
もう心は一気に傾き、トキメキながらこの楽曲の制作に打ち込む10月上旬。

■特に注力した点

・近未来感をどこまで再現できるか

前述の通り、メインシンセリフ以外にも様々なSEが全体を占めており
凄まじい情報量のこの楽曲。
スコアを凝視しつつも、9月に購入したシンセソフト・Omnisphereの検証も兼ねて、ひたすらに印象の近い音を漁りました。

アルペジエーター機能は理解が乏しかったのですが、今作のメインリフは
同機能を駆使しております。
またサイレンやいわゆるZap(ぴゅーんって効果音)のEditなど
自作曲では使ったことが無かったのですが、漁るのがまた楽しくて。
私なりの解釈ではありますが、原曲の雰囲気を極力踏襲しました。

・どこまで多彩にボーカルアプローチを表現できるか

歌モノでありつつも、コーラスパートは何重にも渡り
そしていわゆるラップ的なアプローチや3、2、1などの掛け声…
音程の縛りがないので、ボカロで制限するには大変でした。

こんな感じ。ボーカルパートだけでも過去最多です

完全な再現は難しかったけど、ボーカロイドの特性を活かし
「リンちゃんが歌うとなぜか萌える」イメージで調声しました。

・どこまで均整の取れたドンシャリミックスに歩み寄れるか

今春リリース「Sink Into You」は
どこか中低音が籠っているとレビューを頂き、
今夏リリース「どうか」は
今聴き返すとややシャリシャリしており、同様のレビューも頂きました。

今作ではまずスネアの音を変更。
9月に購入したMODO DRUMのメタルスネアを元に、ヘッド/ボトム共に太くも抜けのある音を追求。

ベースは削っていた中低音をやや強化し、高音域も一部の帯域だけ底上げ。
ギターはRに比重が寄っていたため、Lを全体的に強めつつ、中音域をカット。

総じてドンとシャリのバランスを意識しましたが、いかがでしょうか?
既存作の反省点を活かし、下手ながら改善に向けて一歩踏み出せたら良いのだけど…。
(ミックスほんとに沼ってます、相談会したいです)

■イラスト・動画

今回も一縷さん(https://twitter.com/Ru_nocturne_1)に描いて頂きました。
不肖けにゃPの創作活動において、もはや欠かせない存在です。

今回はズバリ「V系バンドのボーカリストとなったリンちゃん」
イメージして描いて頂きました。
衣装などは全て一縷さんのオリジナルです。

いつもイラストのラフ案から惹き込まれますが
今回は過去一、遊んで頂きました!
どうですかこの、画面から飛び出てきそうな熱量溢れる一枚!

また今回は新たな試みとして、全身を描いて頂いたため
大きく可動箇所が拡大。一気にアプローチが拡充しました。
この気合い溢れるイラストには、こちらも全力で応じるしかありません。

イラストのポテンシャルを余すところなく表現することを前提に、
前述の近未来感を私なりに勘案し
"過去一動き回る動画(当社比)" の制作に挑みました。

実は制作に取り掛かれたのがちょうど2週間前で、時間との戦いでありました。
しかし既存作の経験を踏まえ、以前よりは動画恐怖症は解消できたかな?
何にせよ動く動画とは何か、やっと少しは体現できた気もします。

■完成版

投稿祭に併せて、ニコニコにて先行公開します。

作品へのリアクションは最後まで読めず、チャートアクションを気にしすぎると
自分を見失ってしまう時もありますが、今作は前述の通り
「カバーするだけで、身に余るほどの勉強ができた作品」でもあります。

そのため、この記事を書いている現段階でも、次に繋がる掛け替えのない経験を得ることができました。
未熟者なのでもっと多方面にアンテナを張り、腕を磨いていきますが
ひとつ、前進することができた、私にとっても大切な楽曲となりました。

第二の青春時代への想いを形にすることで、もしかしたら私は
第三の青春時代へ進むことができる、かもしれません。

きっかけとなる楽曲を送り出してくれた、Royzさんに感謝の気持ちを送りつつ
この世界に憧れた一介の表現者として、これからも活動を続けていきます。

最後まで読んでくれた、またカバー作品を観てくださった方々
ありがとうございました。

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