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自主隔離の練習をしたら新しいことに出会いました

練習をしています

 『宇宙兄弟』に登場する航空教官デニール・ヤング(通称ヤンじい)は歩けないわけでもないのに杖をつき、電動車椅子に乗って移動する。訝しんだ主人公ムッタが理由を問うと、父も祖父もたどった脚が萎える老後を想定して訓練しているのだと応える。この話を気に入っています。
 いつかなるかもしれない事態を予想するというのは「想像力」が要ることです。けれど頭だけで想像するのは限界があるので、人は実際にそれに近い空間や状況を作り出してシミュレーションをします。それをいまの社会状況で置き換えると、私たちはCOVID-19感染者の濃厚接触者になる可能性が残念ながら低くない。メルケル独首相が2週間の自宅隔離を終えて「想像以上につらい」と吐露した頃から、自分も「自主隔離」の練習をしておくのがよいなと考え始めました。

 折しも知人夫妻の経営するKAGANHOTELは経営危機が深刻さを増していました。

 見通せるだけでも300万円以上の損失が出ている状況。私たち夫婦もサポートして昨年船出したばかりの空間が沈黙しているのは悲しいし、ましてや沈没させるわけにはいかない。なんとか血液を循環させたいという思いも重なってこの週末(4/10-12)に宿泊をすることに決めました。

人生初のホテル独占体験

 4/10の金曜午後は仕事を早めに切り上げていったん帰宅。自宅から自転車を利用し接触者ゼロのまま18時にKAGANHOTELに到着。この時、今日は宿泊者が全フロアで自分ひとりだと告げられました。完璧な孤独。自己隔離の練習にはうってつけの状況で練習がスタートです(正確にはレジデンスフロアに数名が暮らしています)。
 利用したのは4Fホステルフロア。シングルベットとデスクと台車(?)というシンプルな部屋で風呂・トイレ・洗面は共用。共用といっても今日はすべてを独占です。

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(2枚目 公式HPより)

 夜はオーナー扇沢くんの特製カレーをいただいてからZOOMイベントを主催。じつは自宅のポケットWi-Fiが夜間不調になりがちになっていて、安定したネット環境を求めたのもこの日の利用の理由です。もともと比較的静かな立地なうえにフロアに誰もいないから気兼ねなくしゃべって3時間。ZOOMイベントを終えてからもメール作業がサクサク進み、結局25時を回ったころに就寝。もちろん快眠です。翌朝はゆっくり8時に起きてまたPC作業と読書。特別にチェックアウトを遅らせてもらって正午過ぎまでの約18時間、物理的に誰にも会わずに過ごしました。
 ここでいったん外出。2日目から合流する妻を迎えに行きます。

0日目の #STAY_BIG_HOME

 自己隔離の練習2日目(4/11)は欧米式に「同居家族のみ同伴」のパターン。部屋も5Fのホテルフロアに移って17時チェックインです。この時にオーナーの扇沢・日下部夫妻からおしえてもらったのがレンタルオフィス利用の展開。インバウンド・国内旅行者ともに激減のうえ職場通勤も自粛になるなか、安全な距離を保って安心して仕事や作業に集中できる環境としてKAGANHOTELを使ってもらう。そもそも感染拡大前からリクエストが多かったらしく、この機に乗り出すとの話でした。自主隔離の練習を名目まさにそうした使い方をしていた自分は、図らずもこの事業の練習生にもなっていました。

 いま、このプランでも最上位のホテルフロア503号室でこの記事を書いています。アーティスト木村華子さんの写真作品を独り占めしたり、窓を開けて広々したバスタブに身を沈めたり。そのうえこの建物には自分たちしかいないと思うと、はっきりいって贅沢な気分になります。

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(1枚目 公式HPより)


 もちろん今の状況は簡単には好転しないし、職場でもこれから4週間まったく学生と会えない厳しい日々が続きます。ホテル独占なんていう宝くじが当たったらやってしまいそうなことも、もう二度と体験したくありません。

 このホテルの安全性とホスピタリティは保証します。理論値では部屋を出てから15分以内に新幹線に乗れる超好立地です。たいへんな思いを抱えながらこの新しいチャレンジに踏み出すKAGANHOTELの #STAY_BIG_HOME。ぜひ多くの人に伝えて、見守ってください。現場からは以上です。


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おまけ。2メートル離れて寝ました。


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