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2人の社員との別れが生んだ「健康経営」への歩み。“命を守る”のは経営者の責務

こんにちは。くまもとKDSグループ広報チームです!

前回の記事では、代表取締役社長の永田佳子から、会社の概要や経営する中で大切にしてきた思いを紹介してきました。2回目は、当社の成長の柱となっている「健康経営の推進」を、永田に聞いていきたいと思っています。

健康経営とは、社員の健康管理に関する投資を企業の成長戦略に捉えることを指します。当社では、5年連続で「健康経営優良法人」(日本健康会議)として認定。今年は、特に優良な健康経営優良法人として認められる「ブライド500」にも初めて選ばれました。

今回、なぜ健康経営を推進してきたのか、具体的な取り組みと苦労した点と生まれた成果を紹介します。ぜひご覧になってもらえると嬉しいです。

2人の社員との別れを機に。健康を意識したきっかけ

――当社は健康経営に関する取り組みとして、社食の提供や健康診断の徹底、禁煙の推進などさまざまな取り組みを進めてきました。永田さんは代表に就任した当初から健康管理を大切にされていたように思いますが、何かきっかけがあったのでしょうか?

代表になった当時、立て続けに2人の社員が生活習慣病に起因した病気で亡くなったことが大きなきっかけでした。ご家族の心痛を思うと苦しかったですし、一週間前まで一緒に仕事をしていた仲間がいなくなるのは、自身にとっても辛い体験だったことを覚えています。

2人とも60歳前後だったので、葬儀に参列したとき「今から孫たちと遊んだり、ゆっくりしたりできる時間ができると喜んでいたのに」というご家族の言葉を聞きました。「病院嫌いで痛みが出だしてから診察を受けたので間に合わなかった」という話も聞いて。「何か私ができることはないのだろうか?」と考え続けた結果、「社員の命を守るのは経営者である私の責務」と心に誓い、会社として健康に向き合おうと決めましたね。

――社長として最初の業務が、社員の健康管理だったということですね。

はい。亡くなった二人の共通項は、愛煙家だったということです。また、健康診断で要再検査の結果が届いてもそのままにしていた。「自分だけは大丈夫」と痛みを伴わない生活習慣病の恐ろしさを知らないのが、2人を含めた会社全体の現実でした。

このような現実は、食生活にも出ていたことを知ります。ランチの時間にスタッフルームをのぞくと、ロッカーで大量にストックしているカップ麺を食べていたり、毎日同じ揚げ物のお弁当を食べたりしているスタッフが大勢いたんです。愛妻弁当を食べる人は数名で、野菜を見ることがありません。医食同源を信じる元専業主婦として、見過ごせない状況でした。

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▲代表取締役社長の永田佳子

――多くの人がいつ生活習慣病になってもおかしくない生活をしていたと。

あと私が健康を大事にしたのは、創業者である父の影響も大きいと思います。高度成長期の人なので、「暴飲」「暴食」「愛煙家」という感じでした。会社の発展のため接待が多かったと子ども心に覚えていますが、その積み重ねで今の私の年齢で亡くなったんです。

一方で、母は今年で90歳になりますが、いたって元気。食べ物や睡眠、運動に気を配る日々を続けることで、ひ孫の動画をテレビで見ながら、今も家事全般をしています。この両者でも、日々の健康管理で人生が変わるのを目の当たりにしたので、今でも良い教科書とさせてもらっています。

こうした経緯もあり、会社として食事を整え、禁煙も進めていく。生活習慣病を知り、検診の結果もきちんと受け止め、予防してもらおう――。そう決意しました。健康経営という言葉さえ知らないころのことです。

「影のブレーン」と呼ばれることも。産業医の存在

――健康への取り組みとして、具体的に何を取り組んだのでしょうか。

ランチという観点でいうと、社食の提供を始めました。管理栄養士さんがカロリーと栄養のバランスを考えた献立を専門業者さんから1食440円で仕入れ、半額の220円を会社が負担するようにしています。

440円の負担だと「コンビニで好きな食べ物を買おう」という社員が出る恐れがあったので、社員の背中を押すつもりでこの価格にしましたね。

――始めてからの反応や印象に残っているエピソードはありますか?

自分の健康を考えて、行動する社員が増えたことに驚きました。ある日、コンビニの千切りキャベツを10袋くらい買い、ランチを食べている集団がいました。理由を聞くと、「社長、『ベジファースト』という言葉を知らないんですか? 食事の最初にサラダから食べると血糖値が急激に上がらず、健康に良いんです」と答えてくれて。

一方で、「毎日食べていると消毒のニオイが気になってくる」という声も聞こえてきました。そんなときは経営者である私の出番。熊本県は栄養たっぷりの野菜を作っている農家さんが多いので、採りたてのベビーリーフを直接仕入れ、サラダバー形式で提供するようにしたんです。

――社員の声がきっかけで、新たな取り組みが生まれたんですね。

とても嬉しかったことを覚えています。社員の健康を応援していると、それぞれが考えて行動するようになり、私もさらに応援する好循環が生まれた良い事例だったと思います。

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▲社食の様子※新型コロナ感染拡大前の写真です

――健康診断の位置付けも、以前とはだいぶ変わりました。

はい。検診で再検査や要治療と診察された社員は、たとえ繁忙期であっても通院や投薬するよう通達を出し、再検査結果なども含めてすべて報告することを就業規則に規定しました。もし行っていない人がいると、衛生委員会から優しくお声がかかります(笑)。

――通院や投薬をし、会社に報告することが一つの業務となったんですね。

そうなんです。あとは健康診断後に、産業医と1on1で面談することも仕事のうちと位置付けました。同じ産業医の先生に長くお願いしているので、社員も話しやすいようで。検査結果を見て一緒に喜んだり、あるいは家庭内の問題を相談したりすることもあるようです。

私も専門的な知識がないので「この病気で新しい業務は大丈夫か」「癌の手術・治療復帰プログラムをどう作るか」などをよく相談しており、会社全体で先生を頼りにしています。「影のブレーン」と呼ぶことも(笑)。私にとっても頼りになるメンターがいて有難いです。

社員の81%が喫煙者。最も苦労した全面禁煙への歩み

――さまざまな取り組みの中でも、苦労されたのが禁煙に関する取り組みだと思います。

手強かったですね。就任当時は、社員の81%、男性のほぼ全員が喫煙者でした。最初に取り組んだのは、喫煙時間の限定。しかし、喫煙可能な時間になると禁煙中の人の横でお構いなく吸う人の姿を見かけ、廃止しました。

喫煙コーナーを外に出すと伝書鳩のように並んで吸い始め、苦情の電話が来るように。次に屋内で喫煙ルームを作ると吸いだめが始まり、服や髪につくニオイがひどくなり、サードハンドスモークで最悪の結果となったんです。

――失敗の連続でしたよね……。

「嗜好に口を挟まれたくない」と退職した社員も出始め、どうしたらいいか外部に相談していきました。あるとき、産業医から「会社が禁煙と本気で向き合って頑張ったほうがいい」と言われて。思い切って、2015年には社員を対象に、2017年からはお客様も含めて敷地内を全面禁煙にしたんです。

お客様に強制して大丈夫か、売上の減少につながるといった声もありました。しかし、入校生には卒業間近の高校生も多くいますし、青少年の健全な育成と教育にもつながると考え、決断。パンフレットや申込書、各スタッフの名札にも明記して、スタンスを明確にしたうえで入校生を募っています。

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――今は喫煙率が何%なんでしたっけ?

昨年で6%、ついに2021年で「0%」になりました。

全面禁煙にしてから、「どうしてタバコが体に良くないか」を専門家やドクターに教えてもらう講習会を開催したんです。タバコが原因で血管が収縮する様子を目の当たりにしたり、副流煙について学んだりすることで、危険性を学んでもらいました。「子どもの小児ぜんそくはタバコの煙のせいかもしれない」と、講習を受けたその日にやめた社員もいましたね。

禁煙に成功する社員がどんどん出てくる中、2021年にオンライン禁煙外来を就業時間中に受診できるようにしたことから、0%を達成できました。

――失敗を重ねて0%を達成できたのは、社員としても嬉しいです。

社員からも嬉しい声が届き、ご飯がおいしくなった、肌つやが良くなったと聞くようになりました。一方で、徐々に太り始めるスタッフも増加したんです。次はメタボ対策でした。今は社員を巻き込んで運動しています。ラジオ体操や「くまもとスマートライフ」という歩数計アプリを導入しました。くまもとスマートライフでは、会社内でランキングの争いができるので、4日以上の休みがあるとインセンティブ付きの万歩大会をよく開催します。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、自動車教習所にも熊本県から11日間の休業要請が入りました。お休み期間にも大会を開催しまして、なんと3分の1以上の社員が毎日1万歩も歩いていたようです。営業再開時に表彰式で景品を受け取っていたのが、印象に残っています。

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▲表彰式の様子

「健康経営優良法人」になって得られた嬉しい変化

――健康経営を推進したことで、どのような変化が生まれていきましたか?

改正健康増進法の一部を改正する法律が2020年4月から全面施行されるのに伴い、当社の禁煙に関する取り組みが注目され、NHKや朝日新聞などのメディアに取り上げられました。

地元の高校でも春に行う交通安全指導で、「受動喫煙防止プロジェクト」の講義をさせていただくことにもつながり、保護者や先生方から「信頼の置ける自動車学校」と認識いただけるようになったようです。

ご両親から「タバコの煙にアレルギーがある我が子をぜひ入れてほしい」と言っていただき、入校のきっかけになることもありました。

――それは嬉しい言葉ですね。

あとは採用の質も上がりました。以前は求人サイトでの募集や採用イベントへの参加をしていたのですが、多くのメディアに取り上げていただいた影響か、会社のWebサイトに直接問い合わせてくれる人が増えましたね。

この1~2年で、社員のリファラル採用も進めています。当社の文化や業務内容について自信を持って話す社員が誘い、入社した場合はその社員がチューターとして面倒を見るようにしているので、離職率がぐんと下がりました。

――2017年には「健康寿命をのばそうアワード2017」健康局長優良賞、そこから5年連続で「健康経営優良法人」にも認定されました。

この認定が、素晴らしい波及効果をもたらしてくれました。

前回の記事で紹介したように、当社は外国人の採用をしています。彼らは最初、学生ビザで来日するのですが、就職が決まったら労働ビザの申請を行います。その際、九州経済産業省の方から、申請時に「健康経営優良法人」であることを伝えるようにとアドバイスいただいたんです。

これにより、申請書類の煩雑が東証一部上場企業並みに優遇されるだけでなく、会社の評価もあわさってビザの滞在期間が一般的な1年から、なんと5年になりました。こういった優遇制度により、今では祖国から家族も呼び寄せた社員もいますし、「KDSに就職できて本当にラッキー。社長さんありがとう」と泣いて喜ぶ社員もいて、いつも胸が熱くなります。

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▲健康が生み出す企業発展の好循環

――今後の取り組みについては、どのように考えていますか?

2020年8月に、熊本県内で健康経営を考える企業の会「くまもと健康企業会」がキックオフしました。私もお声がけいただき、今は48社の企業が参加しています。目的は、健康経営の情報交換の場とし、具体的例を効率的に学ぶこと。志が同じ企業が集まり、健康経営の輪を広げ、熊本を全国でも有数の健康県にしていけたらと考えています。

――最後に、健康経営にかける思いについて、あらためて教えてください。

車離れや少子高齢化が進み、自動車学校も経営が大変な状況になってきました。私がこの業界に入ったころと比べ、熊本県全体の入校者数は16%も減少しています。

しかし、当社は発達障がい者の運転免許取得のサポートや外国人の入校者受け入れ、企業人の運転再教育など、さまざまな新規事業を進めてきたことで25%増大。この成長は、健康から生まれるやる気やエネルギーによって実現できたものだと考えています。

今後も新たな事業を展開していく予定です。従業員満足度を第一に目指すことで、本当の意味での顧客満足度を向上し、ベストなサービス提供につなげたいです。そのためにも、経営者がどれだけ社員に寄り添い、家族同様の愛情を持てるかを大切にしていきます。

読んでいただき、ありがとうございました。当社の健康経営やSDGsの取り組みをもっと知りたいと思ってくれた方はnoteをぜひフォローください。当社で働きたいと思ってくれた方(時短、リモート、起業準備中の方も歓迎です!)は、こちらの問い合わせからご連絡いただけると嬉しいです。

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