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批判者たちに対して思うこと

人間は、物事を絶対的な基準で決める事はまずない。他の物との相対的な優劣に着目して、そこから価値を判断する。

これは「予想どおりに不合理」という本から引用した言葉だ。

要は「人間は常に物事を、何かと比較している」ということ。そして今回のテーマは、単純に比較して批判するのは意味が無いという話だ。

ここ数ヶ月のニュースは新型コロナばかりだ。感染と経済面の不安がストレスとなり、ストレスは不満を増大させて批判するループになっている。批判する対象は政府だ。

「他の先進国に比べると、日本の医療や検査体制は脆弱だ」というメディアの論調が目立つ。例えばICU(集中治療室)の数だ。

10万人あたりのICU数
ドイツは29床
日本は4床

単純比較だとドイツは日本の7倍のICU数になる。
これを根拠に「脆弱だ」と批判している。

では人口あたりの感染者数を算出してみよう。
ドイツの人口は8,315万人、感染者は69,430人
日本の人口は1億2596万人、感染者は15,463人

10万人あたりの感染者数
ドイツは83人
日本は12人

この数字から分かるのは、ドイツは日本の7倍感染が流行していること。こうなると、人口あたりのICU数の7倍の差が意味をなさなくなってくる。

PCR検査の絶対数が他国比で少ないのは事実だ。日本の感染者数が氷山の一角である可能性は高い。そうなると感染者という分母が変わり、10万人あたりの感染者数も変動するのは注意が必要だが。

しかしメディア(少なくとも今朝の日経新聞)では、感染者数も織り込んだ複合的な観点から記事が書かれていない。

欧州でも致死率の低いドイツ。政府は「死者100万人」の最悪シナリオを3月に描き、医療体制の能力拡充に動いた。日本はどうか。1日の検査数は最大9千件台。10万人あたりICU病床数は4床と受け入れ体制は脆弱で、医療体制の崩壊は目の前の現実だ。

そもそも比較対象をドイツにすることが恣意的ではないか。

確かにドイツの死亡率は先進国でも低い。ドイツの死者数は7,392人で死亡率は約1%、日本の死者数は551人で死亡率は約3.5%だ。しかし、ここでも考慮しないとならないのはPCR検査数の差だ。日本の感染者数が氷山の一角であるならば、死亡率は著しく下がる。

数字には注意が必要だ。数字には2つの側面がある。
1.ファクトとしての数字
2.説得力を上げるための数字

ファクトの数字は判断材料として使うものだ。純然な絶対値であり、意思決定のために使われる。本来の数字の使い方でもある。

注意しないといけないのは、2つ目の数字だ。これは先に結論が出ていて、それを補完するために使われる。結論に正当性を与えるために都合のいい数字を後付けするものだ。その際に都合の悪い数字は、当然出さない。社会人であれば分かってもらえる数字の使い方だと思う。

数字ではなく、人間の恣意性が問題だ。

上記のニュースでは、「説得力を上げるための数字」が使用されている。10万人あたりのICU数を論じるのであれば、10万人あたりの感染者数などもセットにしないと、中立的なファクトは分からない。

話を戻そう。ドイツを比較対象にしていることだ。

私が言いたいのは、「比較対象を成功者のみにしてしまうと、隣の芝は青いワナに陥ってしまう」ということ。自分の状況を客観視することができなくなり、「あの国はできているのに、なんで日本はできないんだ」と批判することになる。

日本政府の対応にメディアや国民から批判の声があがっている。だが日本は世界的に見て、トップクラスに感染者と死亡者が少ない(その理由は専門家にも分かっていないが)。今のところ、感染の抑え込みに成功しているのは間違いない。

これはネガティブな状況下でのポジティブな事象だが、どのメディアもそのことを報じていない。「人々にウケないニュース」だからだ。人々が敏感に反応するのは、不安や不満というネガティブなニュースだ。だからマスコミはネガティブな情報を発信して批判する。人々も「政府は何をやっているんだ」と批判し、ストレスを転嫁していないだろうか。

批判するのは簡単だ。批判したくなる気持ちも分かる。

しかし私は「批判するなら、代案を出すのがセット」だと思っている。代案なき批判は、ただの悪口でありストレスの捌け口にしかならないのではないか。そこにプラスの生産性はあるんだろうか。

今の状況は誰にも予測できなかった。

未知の状況では試行錯誤で政策を展開するしかない。絶対的な正解など存在しない。「試行錯誤」とは模索の連続だ。試行すれば、必ず錯誤(失敗)が生まれる。しかし、それは必要経費だ。

失敗を許容するおおらかさを持てるようになりたいし、多くの人に持ってもらいたい。批判者で終わることなく、代案者となって試行錯誤して生きていこう。

#コラム #新型コロナ #メディア #ニュース #批判


宇宙旅行が夢の一つなので、サポート代は将来の宇宙旅行用に積み立てます。それを記事にするのも面白そうですねー。