がまくんとかえるくんができるまで アーノルド・ローベルの全仕事【読書感想】そして三木卓さんの翻訳がすばらしい!
想像していた人と全然ちがう!
アーノルド・ローベルはやさしい人だけど、頭がイッててぶっ飛んでいる自由人なんだろうなと思っていた。
ふくろうくんやきりぎりすくんを読んだ人ならわかると思うが、シュールすぎてまっすぐすぎて、もう哲学。天才。
彼の感性・感度そのものでいっきにお話をつくっているのだろうと思っていたのだ。
でも実はその反対だった。
納得いくまでおはなしを練り直したり、何度も音読で推敲していたり、えほんを仕上げるまでに修正や変更をかさねたりして、ページ割りなど緻密に作業を繰り返していたそうだ。
彼自身はおはなしを考えるよりも絵を描くほうが得意だったようで、依頼された挿絵も実に多く手がけけている。
ローベルの絵だとすぐわかるものもあれば、これがローベル?と思うものもあったりして、その才能の幅の広さにまたびっくりする。
下絵スケッチと実際の絵本の挿絵のビフォア・アフター写真もたくさん紹介されているのだが、どれを見ても「スケッチの方がよかったよな」というのが一枚もない完璧さだ。
そして三木卓さんの翻訳がほんとにうまいのだ。
"strange bumps" を
"こんもりくん"
すばらしすぎませんか?
どうしたらこんなピッタリの訳し方ができるのだろう。
他にも翻訳の工夫や練り方など、なるほどなあと唸るような話も知ることができたのは面白かった。
良き父親で良き夫だったローベル。晩年は同性愛者であることをカミングアウトし、離婚して家を出た。
その時期と、のちに「個人的な作品」と語った「ふくろうくん」の出版が重なっている。
「ふくろうくん」のお話の中に、涙でお茶をいれたり、お月さまと友達になる…という切ないお話がある。
ローベルの心を反映しているのかもしれない。文体がドライなので余計に切ない。
大人にこそ読んでほしいお話である。
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