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「板上に咲く」原田マハ【読書感想】これしかないと決めた人はいつの時代もすごい

ノンフィクションみたいなフィクションです。
ゴッホにあこがれ、ゴッホに挑み、ゴッホに追いつき、ゴッホをこえて世界の「ムナカタ」になった棟方志功。

「棟方志功ってあのモチモチの木の人やんね?」

というぐらい版画にも棟方志功にも無知な私でしたが、原田マハさんのシンプルでわかりやすい文章で一気に読めました。ちなみに「モチモチの木」は滝平二郎氏の切り絵です。

「ワぁ、ゴッホになるッ!」

1924年、画家への憧れを胸に裸一貫で青森から上京した棟方志功。

しかし、絵を教えてくれる師もおらず、画材を買うお金もなく、弱視のせいでモデルの身体の線を捉えられない棟方は、展覧会に出品するも落選し続ける日々。

そんな彼が辿り着いたのが木版画だった。彼の「板画」は革命の引き金となり、世界を変えていくーー。

幻冬舎

何者でもない私は、何者かである偉大な人をみるとひれ伏したくなります。特に芸術家。彼らの感性は凡人の私の想像を超えてます。

アート小説というジャンルの小説を読んだのは今回初めてでした。物を創って世に出す人のアイデアやひらめきはどのようなきっかけがあるのか。彼らの頭の中の材料が満ちてゆき、それが発火するタイミングやその様子はどんなものなのか、ずっと興味がありました。

それがこの小説にはとてもわかりやすく描写されています。それは芸術家ではない一般人である妻のチヤの目を通して書かれているからだろう。

そして常々思うのが、こういう天才には必ず支えてくれる人がいるのだなあと。棟方には妻のチヤ。ゴッホには弟のテオ。それもまた才能なのでしょう。

棟方が聖画とまであがめたゴッホの「ひまわり」。それになぞらえたチヤの言葉が印象的でした。

「私はひまわりですからね。あの人は太陽。だから、追いかけていく、そういう運命、なんだもの」

美しい。

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