隣に住んでた話
もう2月も折り返しですね。五十路過ぎると本当に光陰矢の如しです。
今月、総理大臣の秘書官が「見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ」と、性的少数者への差別発言で更迭されましたね。
オフレコを前提とした取材での発言だったこと、高卒で公務員として働きながら受験に挑戦し奨学金で大学に行った苦労人であることなど、酌むべき事情を考慮しても是認せざるを得ずですかね。もしかしたら何かトラウマがあったのかもしれませんけども、五十路の社会人が一方的過ぎる拒絶感情を口にすると大概人格疑われますよね。
自分は結構あっちこっち引っ越したので、隣に住んだ経験があります。
熊髭系のカップルでした。
「たかしー!傘忘れてるよ! 行ってらっしゃ~い」
と仲良さげでした。
春秋のちょうどいい気温の時期は窓開けてるので営みの声も聞こえました。具体的な表現は控えますが、声のおもてなし半端ないねぇ…と最初は感心しまくりでした。
片方の男性が暗いうち出勤する職業の方で(たぶん)起き抜けの力を利用してなさるようで、たまに早朝覚醒しました。でも年3くらいでしたかね。パターン一緒なので初回以降は気づいても睡眠続行できましたし。
そんなあるとき、気付いたら一方の男性の自転車がいつもの場所から消えてました。当人の姿も見なくなり、代わりの自転車もやって来ません。
もう一方はその後もお住まいでした。でもその頃を境に、毎夕漂っていた美味しそうな料理の匂いと調理音がパッタリなくなりました。
数か月後、仕事から戻ると「お隣引っ越したよ。県外ナンバーの車で若い人が来て、一緒に最後の荷物積んでった」と夫が言いました。
地元に戻ったか、新しいお相手と新居に移ったか、それとも知り合いに手伝ってもらっての単身引っ越しでしょうか?
あれからもう7年。
住んでた建物は老朽化で壊され、二人がどんな顔だったかも忘れました。
ただ、彼らのイニシャル入り自転車が寄り添って並んでた内廊下の景色は、ときどきやけにはっきりと蘇ります。
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