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公認心理師試験は「基礎」が出ると聞きますが、そもそも基礎って何ですか?

こんにちは。
心理系大学院受験専門塾 京都コムニタス塾長の井上です。
「おまえは何ものだ?」という声をいただきましたので、
臨床心理士指定大学院・公認心理師養成大学院受験専門塾 京都コムニタスです|大学院・大学編入専門塾 京都コムニタス (note.com)

こちらをご覧いただければ幸いです。
今回は、公認心理師試験を受験することを希望される方から、そもそも「基礎」って何か?という質問をいただきましたので、それにお答えしていきたいと思います。

基礎とは質より量

テストが終わったあと、学科の出来具合を聞くと、「基礎ができていない」「基礎的なことがわかっていなかった」という反省の弁を聞くことがよくあります。しかし、基礎というのは抽象概念で、とらえ方は多様です。だから、大学入試でも大学院入試でも、どの入試においても「基礎」を出すと言います。基礎が大事という言葉は誰でも知っていますし、否定する人はいないでしょう。では、具体的に基礎固めとはどういった作業かと言われると、ほとんどの人が明確に答えられません。実際は勉強は永遠に基礎固めです。いわゆるバベルの塔のようなもので、上に向かっていこうとすればするほど、基礎をしっかりと大きく作る必要があります。まずは基礎とは量になります。もちろん質も大切ですが、玉石混交であってもまずは量が優先されます。

基礎は「簡単なこと」ではない


私たちは歪んだ大学受験教育を受けて来ていますから、小学生の時から「将来の大学受験」を想定された教育を受けます。しかし、教えている側が、現代の大学の実態、大半の大学生の姿、大学を出たあとの末路を知っているわけで、なんなら、自分が大学生の時に誇れるほど勉強したと言い切れる教師がどのくらいいるのだろう、と思うと、大いに疑問ですし、「どんな分野の基礎が身についたの?」と聞いて、その基礎について朗々と語った人に出会ったことは皆無と言わざるを得ません。
歪んだ大学受験教育につかりすぎると、まず基礎の概念が歪んでしまいます。基礎力があるとは「簡単な問題ができること」と考えている人が多くいます。これについては、私も有罪ですが、教材屋が勝手な基準で決めた基礎問題なるものができたら、基礎固めができたと考えている人が多いようです。そしてその次が応用問題・・と考えがちです。こういう人はよく「子どもが人間の基礎」と言いがちですが、これこそ意味不明です。子どもは基礎を作っていくためスタートラインであり、子ども時代にどう過ごすかは、基礎の形態に影響を与えることは間違いがないと思いますが、子ども自体が人間の基礎であろうはずもありません。

PCで考えるとわかりやすい


基礎のイメージは使える情報の堆積のイメージです。土台(basement)を底辺とし、その上に「情報」の堆積が乗ったピラミッドです。ピラミッドを乗せる台をテーブルと言います。要するにそのピラミッドは永遠に大きくなっていけば良いわけです。ピラミッドを大きくしようと思えば、必然的に土台から大きくなります。土台は最大情報量ということになります。そこから徐々に少なくなり、ピラミッド状になります。その堆積の層から、例えば3段目を指して、それを引き出して使用すること何かに適用する(apply)こと、これを総じて「応用」と言います。応用されるもののことを、今は一般用語になったアプリケーションとかアプリと言います。私たちが子どものころはざくっと「ソフト」と言っていました。今はどちらかというと応用の時代で、むしろ基礎研究の重要性が言われています。臨床心理学は、応用心理学ということになります。『心理職大全』の際のインタビューでも多くの大学の先生が、基礎心理学こそが重要だと言っていました。


心理学を人の健康に応用しようと思えば、大小様々な知識が必要で、ピラミッドの上部、下部どこからでも情報を引っ張ってこれる技能が必要ですし、大きければ大きいほど「引き出し」も増えるわけです。

基礎量を増やす


では、どうすれば基礎ができたことになるのかという問いについては、これは永遠のテーマです。研究をしていて、一定の結論にたどり着いたとすると、すぐに次の入り口のドアがたくさん出てきます。時には、振り出しに戻された気持ちにもなります。それと同様に、基礎固めをしていけばいくほど、基礎には限りがないことに気づきます。またどこからどこが基礎であるかのラインを引くことが難しいことにも気づきます。つまり、現在の自分の力量と基礎量は比例するということです。スポーツの一流選手と、同じスポーツをする一般人と比較した場合、こなすことができる練習量が根本的に違うことと似ているかもしれません。スポーツ選手は、一回の結果だけで自分の力量を測ることはありません。結果と練習とのバランスを自分の力量と見なします。
力が上がってくるに従って、練習をたくさんこなせるようになってきます。練習をたくさんこなせるようになってくると、質を考えます。質が見えてくると効率を考えます。効率とは、少ない練習量という意味ではなく、目一杯の量を無駄にしない効果の出る方法に基づいた効率を指します。これで力が少し上がると、またそれが基礎になって、さらなる高みを目指す階段になっていきます。おそらく、この作業は死ぬまで続き、これを向上心と言うのだと思います。

基礎力が高いと合格率は格段に上がる

第7回公認心理師試験に合格するにはどうすればいいか、という質問をすでにして方々からいただいています。具体策の第一段として、やはり「基礎が大切」です。第3回試験以降Eルートの合格率が80%程度であったことを見てもそれは明らかです。自分で基礎ができていると言い切れる人は、すでにかなりのデータベースができていますので、その時点で合格有望です。また、ここまでの公認心理師試験で、「基礎のできている人」は、例えば現在臨床心理士でもあり、D1ルートで合格した人の中にはかなりいると思います。
しかし、このような人たちから、「基礎とは何か」を聞いたとて、圧倒されたり、絶望感を持つことはあっても、モチベーションになることは少ないのではないかと考えられます。また「公認心理師の基礎」はまだ完全に確立したとは言い難く、教材の中に「シリーズ」のとても立派なものもいくつかありますが、これを読破するのは容易ではありません。

受験を手がける者にとって、まず一番大事なのは目標設定です。これは大学院受験でも同じことが言えますが、今の自分を知った上で、少々目標は高く映ったとしても、直近の試験を目標として、そのために戦略をうつことが重要になります。その意味で基礎が大切なのは間違いないのですが、「基礎ができてから」受験するとなると、試験が終わってしまいかねません

第7回試験以降は基礎力の徹底が鍵


公認心理師試験は、第5回試験が終わって景色が一変しました。Gルート受験がなくなり、今年の第6回試験が終わって、第7回からはABルート受験が出てきて、メインルートに切り替わります。社会人がダイレクトで受けることは難しく、心理学未経験者は学部と大学院の6年の教育を受けてAルートで受験をするのが最もスタンダードなルートになっていきます。それ故、今後は、より基礎力の充実を各大学も考えるでしょうし、それこそが公認心理師養成の最も重要なポイントになると考えられます。

余談ですが、私は専門分野の用語を使って、ナチュラルにギャグが言えるようになったら、基礎が出来たと言えると考えています。個人的な意見です。

大学の先生は基礎に対する意識が高い


私は大学で仏教学を教えていますが、教材を作っていると、基礎とは何なのかについて常に考えています。で、ちょっとマニアックですが、例えば仏教の授業をする時に、100人の教師がいたら、ほぼ全員が言うトピックこそが基礎と言えます。仏教なら「四諦八正道」「諸行無常」「縁起」「無我」などなどたくさんありますが、一般の人が見ると「聞いたことあるようなないような」「でも説明できない」ものが多く、概論的な授業だと、ほぼ誰でもが言わざるを得ないようなトピックを知ることが、基礎にアプローチをする第1歩です。

過去問は基礎を知る上では重要情報です

私たちは心理系大学院受験に20年向き合ってきました。そのため「過去問」を大量に見てきたわけですが、基本的に過去問は、受験大学院だけのものを見るならば意味をなしませんが、大学の先生はたいていの場合「基礎」を出すと言うわけですから、できるだけたくさんの過去問を見ると、狙われる率の高いものは、やはり基礎だと断定することができます。
なんだかんだで「オペラント条件付け」はやはり基礎なのでしょう。公認心理師試験でも過去問とブループリントがありますから、それを元手に、試験委員が基礎と考えるものを予測してアプローチをするは大いに意味があるのです。