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研究計画を書き始めたら行き詰まった!どうすればいい?

皆さん
こんにちは。
心理系大学院受験専門塾 京都コムニタス塾長の井上です。

こちらでも書きましたが、6月後半は、心理系大学院受験をする方々にとっては、受験準備に入らねばならない時期です。
油断していると、あっと言う間に7月に入り、梅雨があけ、猛暑が来て、いろいろ嫌になっているうちに、気づけば願書提出期日になっている、なんてことは、マニアックな、この受験のあるあるです。
ここからは、日々、受験に向けた準備をする必要があり、とりわけ研究計画書作成に時間を要しますので、早めに取りかかる必要があります。

京都コムニタスでは、研究計画作成が本格化しつつあります。毎年のことながら、モチベーションの高い人とこういった時間を過ごせることは指導者としても本当にやりがいを感じます。ここからは毎日研究計画を意識した生活になります。
とはいえ、研究計画は初動で行き詰まり、そこで心が折れてしまう人もすくなくありません。
ここでは、研究計画作成で行き詰まったときの対処法と脱出方法について述べていきます。

研究計画作成は初動で行き詰まる

研究計画書の作成は、大学院受験の最大の難所です。この書類の出来具合は、合否に大きな影響を与えます。
「入試要項を見ると、「研究計画書」って書いてありますが、これは何ですか?」
なんていう問い合わせをいただくこともしばしばです。これは当然と言えば当然で、人生で研究計画を作ることなど、そうそうありません。
しかし、学校側の要求は極めて明確であり、しかも、それなりの品質が問われています。最初は、どうしても何から始めればよいかわからず、時間ばかり過ぎてしまうこともあります。そうならないように少しずつ構想を練っていくことが必要です。

これから研究計画について考える方は研究計画書を書くまでの下準備プロセス というコラムを書きました。文字通り下準備の参考にしていただける内容になっていますのでご参照ください。

ここでも書きましたが、京都コムニタスでは、まず、外せないキーワードを20から30程度持ってきてもらうところから始めます。まずは「何がしたいか」を決めたいところですが、これが明確に定まれば半分できていると言えます。しかし、初動の段階では「どこから手をつければよいのかがわからない」ので、宇宙空間に放り出されたような気持ちになってしまうこともしばしばです。研究計画作成は、この初動で行き詰まることがよくあります。

行き詰まったらどうする?

行き詰まった時、多くの人がどうなるかというと、
「私は、そもそもこれがやりたかったのか?」
「私は研究はあまりしたくなかったのに」
「結局私は何がしたかったのだろう」
「私は、何がしたいのかわからなくなった」

こういった「そもそも論」に陥りがちです。もし、こんな思考が頭を駆け巡ったらまず、私のところに持ってきて欲しいと思っていますが、それはさておき、これを一人で乗り越えるのは難しいものです。

このような時には、ライティングの基本でもありますが、第三者の目で客観的に見てもらい、自分がここまで来たプロセスをよく振り返り、スタートの段階で何を目指したかをチェックし、あらためて、キーワードの選定からやり直してみるとうまくいきます。

時には、スタートと全く違うものになっていることもあります。巡りめぐって、最初に戻る人もいます。それでも構わないのです。
私たち指導者は、そのすべてのプロセスに付き合います。
研究計画に行き詰まったら、「そもそも論」を乗り越え、スタートからのプロセスを振り返り、その時点でのキーワード選定を行い、仕切り直しをしてみると、自分の道が見えます。

結局論文を見つけて読まないと行き詰まる


選ばれたキーワードをみると、一定の傾向を見て取ることができます。例えば、「学校」「中学生」「不登校」と並べば何に興味があるかをかなり限定できます。ある程度絞れば、まず論文を探して読みます。論文を読んで、さらに関心が高まるかどうかをチェックして、もしそうなら、論文を多めに読んで自分の疑問を作っていきます。疑問ができたらあとは研究デザインの設定です。そうは言っても、この疑問を作る作業が難しいので、そう簡単にはいきませんが。
ここで行き詰まります。そのため行き詰まっている人は、時間はかかりますが、論文は最初は多めに探して、「とりあえず読む」ことが必要です。逆に、行き詰まっている人ほど、論文をあまり見ていない、あるいは探せない、あるいは「探したけど見つからない」というケースが多いと言えます。

私が必修の授業の中で強調していることは、「読めばわかる」と言えるようになることです。学者はほとんどがそういう人です。しかし、私も経験がありますが、読んでもわからない、あるいは読んで、わかったつもりだったけど、実はわかっていなかったということがあります。もちろん、それでは困りますので、そうはならないように訓練が必要になります。読むときの私なりのコツは、基本的なことですが、メモをとることです。線を引くことはしません。メモは大きめの付箋にすることが多いです。メモは後で確実に見るようにします。漠然と「重要そう」なところではなく、確実に使うという意味で重要なところをメモします。そうすると、徐々に読めるようになってきます。読めるようになったら、ひたすら読みます。読んで、情報が増えたら、また疑問の設定をします。ここで、自分が問いたいことをほぼ確定します。確定できたら、少しずつ文章化していきます。

またよくデザインと言いますが、それは全体像と考えればいいでしょう。ただし、デザインの支えになるのは疑問ですので、自分のテーマに関連する疑問が出るまで読みましょう。論文がたくさん探せるようになってくると、疑問も必然的に増えますが、ここに至らない人が行き詰まっています。


対象の集め方がわからない(そもそも無理)だと方法がわからない

行き詰まる要素には「対象決め」もあります。
仮に「不登校」に関心があり、疑問文ができたとしても、対象は、不登校者本人、経験者、親、先生など多岐にわたります。現実的な話として、不登校者を対象にするというのは様々な面で問題があるので、基本的には難しいでしょう。この対象の選び方や集め方も行き詰まる要因になります。
対象がある程度定まれば、方法を決めていきます。

研究とは方法論であるという人もいるくらい方法の決定は重要です。面接でこの部分にツッコミが入ることも多いと思います。これまでも当塾の生徒さんで、いくつかの学校に研究室訪問や、見学をさせていただいた際に、先生方と面談を重ねた人がいます。この人が受けたアドバイスで「どうやって研究するのかを明確にしておきなさい」というものがありました。今の時代は、どの先生もこの点を重視していると言っていいと思います。理由としては、この部分が、研究計画自体が現実的かどうかをチェックするポイントになっているからです。例えば、極端ですが、「1万人から質問紙をとる」なんて書いたら、当然相手は驚きます。また、倫理的に問題のあるもの(書きにくいので具体例は控えます)、被験者に負担の大きいもの、質問紙のあと、自由記述、さらにそのあと面接といった具合のもの。あるいは、被験者の不安を煽るようなもの。このようなものは避けた方が適切でしょう。今は質問紙調査が多いと思います。またいわゆる質的研究も見直されてきています。


当塾で、研究計画書をうまく作ってきた人の特徴を並べてみると、
①勤勉な人
②論文収集をインターネットだけに頼らない人
③国会図書館によく行く人
④学科の勉強と同等以上に重視している人
⑤何回も私たちのところに持ってきて、少しずつ確実に進める人
⑥キーワードと疑問が明確な人
⑦他人に自分の研究計画の説明ができる人
⑧すすんで独自調査をする人
⑨独自フィールドを持っている人
⑩何らかの発見をしている人
⑪英語の論文に驚かない人
⑫学会によく行く人
⑬ やりたいことが明確な人
⑭自分のテーマをおもしろいと思える人
⑮「深い」「絞る」「大きい」といった言葉の意味がわかる人
⑯情報について敏感な人
⑰本や論文収集にお金を優先的にかけられる人
⑱取材や情報提供の意味がわかる人
⑲多くの人の意見を聞きつつ、振り回されない人
⑳研究意義を設定できる人
このあたりが重要です。


常に「何がしたい」かを考える

指導者なら誰でもが聞く「何がしたい?」の問いに答えられるようになっておくことは、これを読んでくださっている方々にとって、基本であり、かつ難問です。「自分のしたいことくらいわかるだろう」と考える人もいますが、研究レベルで、自分が解き明かしたいことを見つけるのはそんなに簡単なことではありません。

私がネタを引き出しやすいのは、社会人経験のある人です。社会人の方は、すでにフィールドを持っている方が多く、そこさえ明確にすれば意外にスムーズに書けます。しかし、学生で、確たる専門フィールドを持っていない場合、「何がしたい」かを繰り返し聞かれるとつらいと言う人もたくさんいます。研究計画が進まない人は、局面ごとに「何がしたい?」を考えるようにしましょう。
例えば、仮の話ですが、コラージュ療法の研究がしたいとしましょう。その次に「コラージュの何がしたい?」となります。そうすると「コラージュを高齢者に適用してみたい」となります。そうすると「どんな高齢者?」となります。そうすると、「認知症高齢者にコラージュ療法を適用したい」となります。そうすると「なぜ認知症?」「どうやって適用する?」「認知症高齢者に適用して、それでどうしたい?」といった具合に、少々これがしたいということが見つかっても、次々と疑問の連鎖で深く切り込んでいくことになり、なかなか一筋縄ではいきません。この疑問の連鎖にすべて答えた時に本当のやりたいことが見えてくるのです。

何度でも外せないキーワードを探す


「何がしたい」が不明確な場合、私が塾生にまず指示を出すのは、「外せないキーワード」を二十個以上リストアップしてくることです。これは初動だけではなく、研究計画作成中盤でも実施していますそれを見れば、ある程度その人の「何がしたい」を予測し、変化があっても、それに対応することができます。

疑問の確認


疑問文こそが研究の花です。研究をするに当たって、この疑問の設定は非常に重要です。何の疑問もなければ研究は始められないとも言えますし、疑問のわかないものを題材にするのは避けた方がいいでしょう。この疑問の設定ができてはじめて興味があると言えるのです。子どもの頃から私たちは興味を持つ→観察をする→疑問を持つといった一連の流れは、何となくできるようになっているのですが、大人になると、あまりこの作業をしなくなります。特に、インターネット時代の現代は、この作業がむしろ苦手になっていると感じることの方が増えました。疑問を設定することは簡単ではありません。また疑問と言っても、yes,noで答えられる疑問ではなく、何らかの疑問詞をつけた疑問文である必要があります。疑問詞の種類によって問いたい内容が変わりますし、疑問詞をつけることで具体的になりますし、「絞る」こともできてきます。疑問詞をつけた疑問文は一つではなくて、できるだけたくさん作ってもらいます。その中から徐々に自分の問いたいことを修正しつつさらに絞り混みます。この作業が最も慎重にすべきところであり、最も時間がかかるところでもあります。


どんどん情報収集


疑問が設定できたら、次は論文及びその他情報集めの作業に移ります。情報収集の基本は文献探しです。先行研究を適切に押さえられているかどうかは研究計画書における重要な評価ポイントです。やはり、先行研究が踏まえられていないと、先人のアイディアと重なってしまうこともありますし、すでに明らかにされていることが、理解できていないならば勉強不足ということにもなります。また、目指すテーマ(例えばコロナ)がどこまでがわかっていて、どこからがわからないのか、というラインを引けることも重要です。審査する側としては、先行研究の出し具合を見れば、その人がどのくらいの力量を持っているかがある程度わかります。従って、先行研究収集にはかなり力を入れる必要があるのです。まずは集める作業から始まるわけですが、今はインターネットでかなり見つけることが可能です。基本的なサイトとしてはCiNii、google scholar 、国会図書館あたりがあります。その他、各、大学図書館のホームページには情報収集ツールが惜しみなく出ていますので利用しましょう。また一方で、インターネットでダウンロードできる論文以外にも、むしろ重要なものがありますので、足を使って論文を取りに行く作業も必要です。

やっとこさ文章化


文章を作る際に重要なことは、少し多めに書くことです。例えば、1000字の字数制限があるとすれば、だいたい三倍の3000字くらいで書いてもらいます。それを削っていく作業になります。ここはなんとかがんばっていただく必要があるのです。字数が足りないものを増やす作業は結構難しいうえに内容がどうしても薄くなります。結局余計な言葉がかさんで、また削らざるを得なくなります。最初から多いものを削る作業は、この業界にいる者なら誰でも経験しているはずなので、それほど難しい作業ではありません。実際に書き始めると、あとは構成、誤字脱字のチェックをしつつ、読み手に読みやすく、かつ説得力のある内容に組み立てていきます。ここまで来れば、後は各大学が提示する枠にはめて整えるだけと言ってよい作業になります。これが最後の難所ですが、これは数時間あればできますので、一気に終わらせましょう。

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