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今だから知りたい臨床心理士とは何か?これからどうなるのか?

臨床心理士の価値は落ちていない

こんにちは
心理系大学院受験専門塾京都コムニタスの井上です。

将来、臨床心理士の資格がどうなるのか、という問題については多くの意見があります。しかし、現在40,749 人とされる臨床心理士が築き上げた実績と歴史はそう簡単に色褪せるものではないと、取材を進める中で、強く感じるに至りました。その意味で、臨床心理士になることは大いに意味があります。臨床心理士の資格は公認心理師かできて以来、価値を落とすと思われていましたが、実際はそうはなりませんでした。私も当時、あちらこちらで講演をして、2022年までに臨床心理士は価値を落とすと言いましたが、今はあちらこちらで謝っています。むしろ学部で公認心理師の単位を持っていない社会人から注目されており、資格取得を目指す人は今もたくさんおられます。臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会が指定した大学院を修了することが必要です。
日本臨床心理士資格認定協会によれば、大学院指定制について「臨床心理士は、心の専門家としての一定水準以上の基本的な知識と技能を有することが期待されていること、臨床心理士の教育・訓練システムの整備を図る」
としています。それからすると、一定水準以上の基本的な知識というのは
大学院修了以上で担保されるということになります。

公認心理師と臨床心理士

第5回公認心理師試験の終了でもって、いわゆるGルートがなくなり、今心理職なるための最もオーソドックスなコースは、学部で公認心理師の単位を取った後、臨床心理士指定大学院に進み、両資格を取るという道です。いわゆるAルートで、次回の第7回公認心理師試験より、法律に基づいた新カリキュラム適用の人たちは、大半の人がこの道を辿り、国家が認める心理士の姿になっていきます(善し悪しは置いておきましょう)。
現在、社会人の方で、心理学未経験者で、どうすべきかという問い合わせをたくさんいただいています。心理職になりたいという前提で言えば、選択肢は3つです。
①公認心理師に対応する大学の学部に1回生に入る。
この場合、学部で単位を取り、実習を80時間積み、4年後に大学院受験があります。次に臨床心理士指定大学院に入り、2年後の3月あたりで公認心理師試験を受けて、その半年後の10月で臨床心理士資格試験を受けて、両資格を取るという選択肢です。
②3年次編入をして公認心理師の単位を取って、大学院に行く。
公認心理師の単位に対応する大学の学部に3年次編入をするという選択は、社会人の方にとって、これからとても重要な選択になります。この場合、通学と通信があります。ただし、通学の場合、2年で単位を取りきれると言ってくれる大学はほぼないと言えます。一方、通信の場合、聖徳大学は2年で単位を取れた実例は結構ありますので、仕事をしながら、2年で単位をとれるという可能性がある大学です。京都コムニタスの生徒さんでもそのルートで大学院に合格された方が出ています。
こちら
③公認心理師は取らずに、臨床心理士指定大学院を受験して、臨床心理士のみを目指す。
これからは②か③の選択をする方が最も多くなると予想されます。

心理職で食べていけるか

臨床心理士をはじめとする心理職は、私が知る範囲ですから、当塾出身者が大半ですが、その多くは「食べていけてます」と言います。スクールカウンセラーと大学の相談室で10年食べている人もいます。カウンセリング業務だけで月30万円程度稼いでいる人もいます。大もうけはできないものの、食べてはいけると考えている人が多いのが特徴です。地域性もあり、大学院によっては、全員が常勤職に就くことができると、いう学校もありました。

今指定大学院は過渡期で転換期

『心理職大全』にも書きましたが大学ごとでも、考え方は多様であることがわかります。


中には臨床心理士指定大学院を続ける必要がないと考えている学校が増えつつあるということです。一方で、これを堅持すると言う大学もあります。ただいま検討中という学校もあります。資格認定協会のホームページでは、
    
H30は、受験者が、2,214人 合格者 1,408人です。
R1は2,133人中合格者が 1,337人です。
R2は1,789人中合格者が 1,148人です。
R3は1,804人中合格者が1,179人
R4は1,8101中合格者が1173人

となっていて、最近は横ばいです。語弊をおそれず言えば、ここから臨床心理士の数字がV字回復することはないと見ていますが、逆に言えば、やはり臨床心理士は価値を落としていない証左とも言えます

またこれまで20年以上の積み重ねがある臨床心理士の資格の意味は大きく、現在の資格保持者たちの考え方次第ですが、公認心理師との共存という意味でも、しばらくはむしろ重要な資格と考えられるのではないかと思われます。大学の見解は明確に二つに割れています。臨床心理士指定大学院であり続けて、公認心理師も取れる、という大学と、臨床心理士指定大学院をやめるという大学です。どちらがいいのかは、一概には言えませんが、私個人としては、両資格を取れる人は、前者に進むべきだと考えています。

どんな大学院に行けば良いか?


以上を踏まえた上で、まず考えるべきは、いつ大学や大学院に進むか、です。その時期によって戦略は変わってきます。かりに今ということであれば、公認心理師との兼ね合いが最も難しい時期ですから、臨床心理士の教育が充実しているところ、ということになります。現在高校生でこれから心理職を目指そうという人は、公認心理師のための学部教育を充実させているところということになります。公認心理師の学部教育に力を入れているところは、臨床心理士も併せて力を入れると考えているところ、すなわち大学院教育も力を入れると考えている学校と、臨床心理士養成をやめる、あるいはやめようとしている(そもそも関わっていないも含む)学校とに分かれます。どれが一番いいのかは、現時点ではわかりません。ただ、このカオスの状態で、臨床心理士側からの明確なメッセージがない中、各大学が自分たちで考えなければならない状況が鮮明になっています。こういった時は、むしろ、大学の力と、考え方、誠実さが全面に出ます。これから心理職を目指す方は、よく注視しておく必要があります。