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リモートが進むと自分と異なる意見はノイズになってしまうかも

オンラインでワークショップをする機会が増えています。思ったより、インタラクティブに進めることができると評判になっています。zoomに「ブレークアウトルーム」と呼ばれる機能があり、参加メンバーをその場でグループに分けてディスカッションすることができるのです。参加者として経験してみて「オンラインのワークショップもありだな」と思いました。そこで、自らもホストとしてブレークアウトルームを試したところ、大いに戸惑いました。その理由は、その場が急に静かになったからです。zoomでのブレークアウトルームは、別々のバーチャルな会議室にグループごとに分かれるので、ホストは、メイン会議室に一人残されて、シーン…となるわけです。

リアルの教室だと机の島があって、そこで各グループがディスカッションをしています。だから全体が聞こえます。どこのグループが盛り上がっているか、進んでいないところはどこかが直観的に分かります。また、グループディスカッション中に教室を歩き回っていると様々な声が耳に入ってきます。そこで、すぐ側に行って、気配を消しながら話を聞いたり、ときにディスカッションに入って話を聴いたりします。そうして得られた気づきをファシリテーターから全体に訊くことで、場をマネジメントして行きます。このように振返ってみると、ファシリテーターのスキルは、「聞く」「聴く」「訊く」という3つの「きく」によって成り立っているのだと改めて気づきました。

音は耳をふさがない限り、どんどん入ってきます。同時に別々の声が届きます。にもかかわらず、わたし達は必要な情報だけを意識せずに「選択して聴く」ことができます。これをカクテルパーティ効果ということがあります。ワイワイとパーティでみんながしゃべっている中で、自分に関係するキーワードが耳に入ってくるとそちらへ注意が向く、あの状況のことを表しています。オンラインでは、同時にしゃべられると誰が声を発しているのか分からないので、これが成立しません。対面以上にオンラインでのコミュニケーションにおいて、「傾聴」したり、「問いかける(訊く)」ことが重要視されるのはこのためだと思います。

そう考えると、オンラインでは雑多な情報を「同時に聞く」機会がないということになります。もう少し広くとらえるとリモートワークもこの状況になる傾向があります。結果として、生産性が高まった、という声も聞きます。主催したオンラインワークショップで参加者から聴いた話ですが「臨機応変型の仕事ができなくなった」というものがありました。その方は、総務の仕事をしていて、オフィスにいると色んなところから種々雑多な依頼が舞い込んでくる。今までは、それに臨機応変に対応することが自分の仕事だった。今は、そうではないので、改めて自ら計画的に優先順位を決めることを求められている、ということでした。なるほど、生産性は高まりそうです。ただ、ここでいう生産性とは何か…ということも考えなくてはなりません。

話をワークショップに戻します。良いセッションには、発見があります。準備した落とし所に向かうだけのセッションは、あまり良いセッションとは言えません。発見がないということは、その場からは学べていないということになります。自分の考えとは異なる声が聞こえてきて、見直しをせまられる。そのことで発見が起こるのです。そう考えると、ファシリテーターには、見直しせざるを得ない状況にすることが求められます。そうしないと、わたし達は、無意識に都合の良い情報を選択するのです。これは、もちろんファシリテーター自身も同じです。「聴く」「訊く」だけでなく、ニュートラルに「聞く」ことも求められます。とはいえ、意識して「聞く」は難しい。ある意味、意識して無意識になれ、というようなことだからです。となると物理的に雑多な情報が耳に入ってくる状況をデザインすることが必要になってきます。

このような、一見非効率に見えることに価値が隠れているかもしれません。巣ごもりで断捨離が進んでいますが、大切なことをノイズと決めつけていないか、気をつけたいと思います。


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